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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる


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お疲れさんの夜会(1)


 私が寮に帰ると、笑顔でアルマに迎え入れられた。いつもよりソフトな、それでいていつも通りな笑顔で迎えてくれたのは、私が朝、泣いていたからだろう。


 アルマには心配をかけてばかりだな。アルマだけじゃないか。お母様もお父様も、お兄様もケイトもサラも、そして、ギルバート様も。


 帰ってきた私が、いつも通りに戻っているとアルマには分かったのだろう。さすがアルマだ。


 そんな訳で、容赦なくアルマにお風呂に入れられ、お菓子を食べようとしたらダメだと叱られ、コルセットを装着させられそうになって逃げ、捕まり、頑張ってコルセットなしを主張したら少し、ほんっと〜うに少しだけ緩くしてくれたりと、そこまでの攻防だけでとても疲れた。


 しかし、コルセットを締められてからが本番であった!!


 だって、ギルバート様から送られてきていたドレスが、それはそれは素敵なものだったから!!


 黒色の丸首、Aラインのドレス。これがもう、私の趣味にどんぴしゃで。


 腕の部分は綺麗な黒のレース、同じようなレースがスカート部分にも重ねられていて、そのスカートの裾の方には金、淡いピンク、淡い紫で刺繍がされている。そして、後ろ側で結ぶ、黒に金、淡いピンク、淡い紫で刺繍のなされたリボン。


 こんなの素敵すぎる!!届いた日からこれを着るの、すごく楽しみにしてた!!


 その場で、何が起こるのだとしても。


 かわいくて綺麗なドレスに、罪は無いからね。


 それをアルマに着せてもらい、髪の毛を、桜がモチーフであろう淡いピンク色の簪でまとめてもらった。


 この簪は幼い頃、母に貰ったものなのだが、その頃から、私はずっとこの簪が好きだった。母が私にこれをくれた理由も、あまりにもキラキラとした瞳で、私がこれをじーっと見つめていたからだという。


 実はこの世界、梅はあるけど桜はない。


『この世界に存在しない花をモチーフにしたものなのに、お嬢様、すごく気に入っていますよね。』と、アルマによく言われたものだ。


 今考えると、それは何か、前世の記憶が潜在的に働いていたのかもしれないな、と感じる。


 そこから分かる真実。


 きっと、この世界に来てしまった日本人が、過去、存在していたのだ、ということ。


 それを思うと、なんとも言いがたい気持ちになる。


 でも、今はもう、その人は存在していないのだから、どうしようもないだろう。私は1人、この気持ちを持て余すだけ。私が1人、この世界に存在しているように。




 いやいや、それにしても、今日のギルバート様!!


 あれ!!


 あれ!!!!


 あの甘い瞳で、私を見つめて。ふわっと解けた笑みを見せて。素敵な声が、私の名を呼んで。私に大好きだと告げて。私の頬を撫でて、キスをして。おでこにもキスを落として。愛しくて仕方がないといった風に頭を撫でられて、髪を梳かれて。


 私の脳みそで処理し切れないんですけど!!!


 ねえ!!!


 ねえ、……


 私は、ずっと。


 ずっとずっと、あなたを初めて見たあの時から、あなたに惹かれていた。


 だけど、私はあなたに恋してはならない、と。そう、私の本能が訴えかけていた。


 あの人に恋してしまえば、何かが壊れる、崩れる。


 そんな予感が、していたから。


 それが何なのか。


 私には、まだ分からない。


 だけど、感覚として私にあるこれは、一体。


 この、漠然とした、不安。恐怖。怒り。羞恥。悲しみ。


 そして、狂おしいほどに愛おしいという、この気持ちは。




 コンコン、と扉を叩く音がする。


「お嬢様、フォーサイス様がいらっしゃいました。」


 ぎゃあ!!!今はとりあえずドキドキで死にそうだよ!!


「い、今行きます。」


 そう言って、扉を開ければ、そこにはギルバート様がいた。


 うわぁ、かっこいい。相変わらず素敵だなぁ。


 ギルバート様の服装はこれぞ魔導士!!と言ったものだった。全身を覆う質の良さそうな黒いローブに、金の留め金。そしてそのローブには、金や淡い紫色で刺繍がされていた。


「ギルバート様、こんばんは。本日はよろしくお願いいたします。」


「………」


 こっくりと頷き、無言無表情のギルバート様。


 え、やっぱり大会の時のあれは幻だったとか!?ある!?そんなことって、ある!??


 そんな風に考えていれば。


「……レイラ、すごく綺麗。俺が贈ったドレス、着てくれてありがとう。」


 そうして、突然ふわっと微笑んだギルバート様。


 くっそぉ、心臓に悪いことこの上ないぞ!!


「……あ、ありがとう、ございます……」


「レイラ、行こう。」


「はい。」


 そう言って差し出された手を、私は微笑みながら、迷いなく取った。


 さあ、夜会会場にギルバート様と入るとか、注目の的となることは必須である!!


 勘を駆使しつつ、やばそうな人たちを避けまくろう!!そして、美味しいお菓子をたくさん食べるのだ!!


 うん??いや、ちょっと待て私。んん??あれれ??


 そ、そういえば、今日のあれやこれやをやらかしたのってさ、もはや学園の人全員いますけど、って言うような場所じゃありませんでしたっけ??


 あれ??あ、もうすでにやらかしてるんじゃない??


 食堂以上にやらかしてない??


 あれ??でも、あの時の記憶、ギルバート様とお兄様とグランディエ様が破壊した会場のことしか覚えてないんだよね………


 でも、そうなっちゃうのも仕方ないよね!!ギルバート様の告白が衝撃すぎたんだってば!!これは、断じて私のせいではありません!!はい!!


 あ、そういえば私、ギルバート様のこと好きです、って、伝えてなくないか??


 あれま??見てたら分かるわ、的なやつなのかな??


 いやいや、それは良くない。話さないと伝わらないことなんて、この世に山ほど存在するんだから。よし、あとで隙を見て私も告白しよう。


 だって、私がギルバート様を好きなことは、何が起ころうとも変えようのないものなのだから。


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