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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる
4/51

整理します(1)


 どうやら寝ている間に、授業はすべて終わっていたようだ。外はもうすっかり夕焼け色になっている。いやぁ、私、よく寝たらしい。


 とりあえず、授業はもうとっくに終わっているようなので、寮へ帰ることにする。寮は、このオルティス貴族学園のすぐ隣に併設されている建物だ。


 今見るとすごい豪華だな、これ。前世で言うところの高級ホテル、みたいだよね。エントランスにはシャンデリアがあって、質の良さそうなソファが置かれている。床にはフカフカのカーペット。うん、これぞゴージャス。金持ちになった気分だわ。あ、私、十分お金持ちのお嬢様だった…


 そんな建物なのだが、なにせ学園から近い。とっても近い。だからとても安全なのだ。貴族のお坊ちゃん、お嬢ちゃんが通うには最高の環境と言えるだろう。


 一応このゴージャスな寮があるけれど、自分の家から通っている人の方が多い。ただ、みんな馬車で学園まで来るので、朝はそれはそれは道が混雑する。


 私はギリギリまで寝ていたいタイプなので、家は近いけど寮に入ることを決めた。


 馬車で並ぶとか面倒だし。お父様とお兄様に構われすぎて面倒だし…


 学生寮に入る、と家族に伝えたら、父と兄にそれはそれは心配され、私付きの侍女であるアルマを連れて行きなさい、と言われ、2人でこの寮にやってきた。


 アルマは代々スピネット家に仕えている家系の娘で、私からすると、とても頼りになるお姉さん、といった感じだ。いつも優しいし、私が失敗した時には励ましてくれたり、フォローしてくれたりする。うん、これ以上ないほど心強いです。


 ちなみに母は、いいわねぇ、青春ねぇ、懐かしいわ〜と言って、止めることもなかった。割と推奨派だった。貴族にしては珍しい人、と言えると思う…



 私が寮に戻るとアルマが出迎えてくれて、本当に大丈夫なのか、と何回も確認された。とても心配をかけたらしい。申し訳ない。しかしながら、あれは私のせいではないんだ。いや、私のせいなんだけど、不可抗力だから許してくれ……


 私をとても心配しただろうアルマに、今日は早めにお休みしましょう、と言われ、あれよあれよという間に風呂の準備をされ、軽めの夕食を出され、ベットに詰め込まれた。


 そんなわけで、私は今、部屋に1人だ。アルマの部屋は私の隣室だけど、今は夕食を取りに食堂へ行っているはずだ。


 さあ、今がチャンスだ。いろいろ試してみよう。


 まず、私は前世の記憶を思い出した。だから、なにかできるようになってることとかあるんじゃないかなぁって思うんだよね。転生特典、きっとある!!


 まず、1番可能性がありそうな魔力量なんだけど……


 魔力量を測るのは専用の機械がないとダメだからわかんないな。増えてる感じもしないし………


 それじゃあ、剣が使えるようになったとか??運動神経がめちゃくちゃ良くなったとか??あ、ステータスが見えるとか??


「ステータス!!」


 …なにも起こらないんですか…………


 じゃ、じゃあ運動神経の方を試してみよう。よし、3回転ジャンプ、決めてやるぜ!!


「えいっ!」


 あれ??ぜんっぜん1回転半くらいしかしてなくない??もう一丁!!


「えいやっ!」


 うーん、だめだなぁ。いや、もう一回だ!!……


 何回か試してみた。


「はあ、はあ、はあ…」


 うん、疲れただけだなこれ。


「なによもう……」


 てことは、やっぱり剣を使えるようになってもない、運動神経も上がってない、ついでに体力にも変化なし、と。


 あ、妖精の愛し子になったとか??それなら、妖精を呼んでみるか。


 いや、でもな…


 妖精はやめておいた方がいいかな…


 小さい頃から、妖精は私に対して変な態度を取るんだよね。なんでなのかはわからないから、対策のしようも無い。


 妖精たちは、私から1メートルくらい距離を取る。そうやって距離は取るくせに、ちょいちょい私のことを見ている。葉っぱとか花の影に隠れて。


 それで、こっちを見ていたくせに目が合うと、慌てて隠れるんだよね。


 いや、もう目があっちゃってるからから隠れてもあんまり意味ないんだけどな…ってよく思ったっけ。


 それで、その子たちを気にしてるとキリがないから、気にしないことにした。もし居たとしても、あ、いたんだ、って言うレベル。


 なぜか見てくるけど近づいてはこない。特に害も無い、手のひらに乗るくらいの小さな動物たちなんて、ほっとくしかないよね……


 捕まえようとしたこともあったんだけど、やはり相手は妖精。


 この世界の妖精たちは、ミニチュアの馬とか、鹿とか、猫とか、犬とか、狼とか、色々な動物の姿をしている。そして、みんな共通して背中に虹色の羽が生えている。そんな可愛らしいサイズに見た目をしているくせに、魔法を自在に使うことができる。しかも、小さいからすばしっこい。妖精たち、とってもハイスペックなのだ……


 だから捕まえるのは早々に諦めた。


 私が妖精を追っかけ回していたら、父と兄に止められたっていうこともあるんだけどね。


 本来、彼らはこちらに対して特に何もしてこない。ただ存在しているだけで国が豊かになる、と言われている者たちなのだ。


 そんな素晴らしい存在を、幼い私が追っかけ回して捕まえようとしていたのだ。そりゃあ、止めるよね……


 それで、無視するっていう戦法をとったわけなんだけど、今でもたまに、こちらをじーっと見てくる子たちがいる。そんな風に変な行動をしている妖精がすぐ近くにいるというのに、人々はその妖精だけ見えないかのような反応をするのだ。実際、私以外の人には見えていないのだろう。


 私が指をさして、父や兄、母に訴えたことももちろんあった。けれど3人とも、そんなとこに妖精さんはいないよ、としか言わなかったのだ。私には確かに見えるのに。


 それでは、すべての妖精たちが3人には見えないのか、というとそうでもなかった。私に対して変な行動をしていない妖精たちは見えるようなのだ。


 つまり、私に対して変な行動をとる妖精たちは見えない。それ以外は見える、ということだ。


 私の家族に妖精の愛し子はいないので、妖精の愛し子に対して彼らがどのような行動を取るのかはわからない。けれど、私に対してやっているように、距離をとって、こちらをじーっと見てくる、なんてことはしないだろう。


 通常、妖精の愛し子だった場合、困った時に魔法で助けてくれたり、祝福をかけてくれたりするそうだ。


 間違っても、じーっと見てくるへんてこ妖精たちが集まってくる、とかは無いだろう。


 ほんと、なぜに私はあんな態度を取られるんだ……


 え、まさか……


 まさか、妖精に変な態度を取られるのが転生特典なの!?え!?それ特典じゃなくない??


 えぇ……


「やっぱり、私に特典なんて無いのね……」


 いや、分かってはいた。分かってはいたんだ。


 だって、髪の毛の色と瞳の色以外は至って平凡。特技もこれといったものは無く、魔力量も普通。魔法の技量も、同年代の子たちと同じくらい。勉強は上の下くらいだけど、みんなやればできるだろうし、運動神経は普通。


 うん、やっぱり至って普通の人間だ、私は。


 あ、妖精たちには変な態度を取られるけど、変な態度を取っている妖精は他の人たちには見えていないみたいだし……


 うん、私、この世界でも至って普通の女の子なんだわ。前世と同じ。平凡の中の平凡を行く女!!


 それで、なんら問題はない。せっかく異世界転生したのに…という気持ちがなくは無いけど、こちとら前世から平凡の中の平凡を行く女。どれだけ平凡であったとしても、私の夢は叶えられる。だって、私の夢は……



アルマ・ホールデン(20歳)

 スピネット伯爵家に代々仕えている、ホールデン家の娘。レイラ付きの侍女をしている。


妖精たち

 いるだけで国を豊かにすると言われている存在。さまざまな動物の姿をしており、虹色の羽をもつ。手のひらサイズ。魔法が大得意。森の中に多く生息している。基本、誰でも見ることができる。妖精の気に入った者たちに対しては力を貸すことがある。

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