剣技・魔法大会(7)
私の顔は今、ゆでだこ状態だろう。
で、でも、それって、そんなことって、ほんとに、ほんとのほんとに、あるの、かな?
私がずっと、ギルバート様と、初めて話した日から想像しては、避け続けていた、その結末は。
そこまで言われてしまったら。
これで、違う、と、言われてしまったら。
私は、もう……
「………ギルバート、様??あの、ほんとに酔っ、んむっ、!!」
私の唇が再びギルバート様の指によって押さえられた。
「レイラ、次酔ってる、って言ったら、無理矢理、する、よ?」
「にゃ、にゃぃ、」
しかも私の唇をむにむにしながら、耳元でそんなことを囁いてきた。
む、む、む、無理ぃ!!!!過剰供給が過ぎる!!!何するつもりなの!??な、なんだこれ!!なんだこれぇ!!!
うぅ、心臓、破裂しそう。
「ふ、レイラ、かわいい。」
そんなことを言ったギルバート様、またしても私のおでこにキスをして、頭を撫でて、髪の毛を梳いている。
ちょっと待って!!!ギブギブ!!強いよ!!色々オーバーしてるのにそれは強いよ!!
私がひたすら頭の中で暴れ回っていると、ちょうどよく放送が流れた。
「時間となりましたので、これから、決勝戦を始めたいと思います。」
サリヴァン様、神ですか!!!こんなに遠いのに目があった気がするし!!ギルバート様の輝かしさのおかげか!!ぜひ助けてほしいな!!
「ギルバート様!!試合が始まりますので、お、降ろしてくださいませ!!」
「………」
「え?あの、ギルバート様??」
「…………」
え、無言無表情、なのに嫌だと伝わってくるその瞳は一体………
「あら、フォーサイス様。」
「ケイト、サラ!!お帰り!!」
そして助けて!!
思いが伝わったのか、にっこりと美しく微笑んだサラ。
「フォーサイス様、王太子様がお呼びになっていましたよ?今すぐ行かないと、今夜の夜会、自由じゃなくなっちゃうんじゃないかしら??」
「……………」
「ほら、レイラも。今夜、フォーサイス様にエスコートしてもらうの、楽しみにしていましてよ??」
「……」
サ、サラ!!??なんてこというんだ!!た、確かにあのドレスを着るのは楽しみにしてるけども!!ギルバート様と一緒とか、すごくすごく楽しみですけど!!さっきまでは、それよりも恥ずかしさが勝っていたわけだけども!!
「……レイラ、あとで迎えに行く。まってて。」
私が精一杯、頷いたのを確認したギルバート様は、私を一瞬お姫様抱っこして、椅子に置いた。そしてそのまま、去って行った。
くわぁぁぁぁぁ!!乙女の夢が!!叶っているし!!好きって、え??好きって好きって!!しかも、大好きって!!なんでそんな、ふひゃぁぁぁぁ!!
あぁぁぁ〜、この、転げまわりたいこの気持ち。なんで言ったらいいのでしょうね!!というか、なんでこんな場所で、こんな時に、こんな風に!!!
さらっと告白したんだよぉぉぉぉぉ!!!
「ちょっとレイラ。そろそろ落ち着きなさい。」
「え??」
表面上は淑女の皮を被って落ち着いています!!
「心の声が漏れ聞こえてるわよ。」
「え"??」
「ぶつぶつ呟いてたわよ。」
「ぎゃぁ!!」
嘘じゃん!!嘘だよ!!嘘だと言って!!
私は縋るように2人の顔を見たが、ゆっくりと首を振るだけだった。
「レイラ、大丈夫よ。聞いていたのは私とサラだけだから……」
「ケイト……そんな風に肩をぽんぽんされても、言葉にしたものは消えないんだよ!!」
「はいはい。レイラ、そんなことよりも、キートン様は棄権なさったわよ。」
え??
「えー、お伝えいたします。魔法部門決勝戦出場者、リオナ・キートン様が体調不良により棄権したため、魔法部門優勝者はエヴァ・パルトロウ様に決まりました。それでは続いて、〜」
サリヴァン様のそんな放送が入る。
「え?サラ、どうして??」
そして『それよりも』の一言で私の身に起こったことを片付けないでほしかったな!!
「キートン様、あの花を召喚してしまった時、違和感があったのですって。何かが自分の魔法に介入しているような、そんな違和感。それで、パルトロウ様と話し合って、今日は魔法を使うのをやめることにしたそうよ。」
「そんなことが……確かにそれは危ないね。…………違和感……介入……」
なんだろう、嫌な予感がする。今日、これから、何かが起こるような。
そんな予感が。
「…レイラ??どうしたの??」
「ううん、なんでもない。」
「レイラ??」
「あっ、剣技部門の決勝戦、始まるよ!!」
「あらほんと。」
会場に、メトカーフ様とミラー先生の弟君が並び立つ。この2人も絵になる2人だ。
この世界の貴族たち、基本的に美男美女しかいないんだよね。み〜んな綺麗な人、もしくはかっこいい人。
王太子様とか、メトカーフ様とかサリヴァン様とか、もちろんギルバート様はその中でも別格にイケメンだけど。あ、あと、お兄様とグランディエ様も別格な気がするな。ミラー先生の弟君もその部類に入るよね。
なんだろう、強い人たちは別格にかっこいいと言うか、美しいというか……
あぁ、嫌だ。この世界が作られたモノに思えてならなくなる。やめて、いやだ、だから私は、あぁ、………




