剣技・魔法大会(6)
驚き振り返ってみれば、そこにはず〜っと避け続けていたギルバート様がいた。
待って、大会をやっている間は王太子様の護衛も兼ねて、離れられないんじゃなかったのか!??だから大会にも出場しなかったのでしょう!!!一体、何故ここに!??
私は気まずくて、目が合う前に視線を逸らしてしまう。その上、真っ赤になってるかもしれない。
だって!!あの時のギルバート様の甘い声とか!!かわいい、って言われたとか!!キスされたとか!!ぐりぐりとか、ぐりぐりとか!!
そんなの気まずいに決まってる!!しかも、向こうは私のこと、別に好きでも何でも無いでしょうし!!ただ単に、魔力が合うだけの人でしょうし!!
き、嫌われてはいないと思ってるけど……
私はず〜っと地面を見ているのにもかかわらず、ギルバート様は私の前から動く気配が無い。それどころか、私の手を取った。
どうしたんですか、どうされたんですか!!私、さらに思い出しちゃうからやめてくださいませな!!
「………レイラ、久しぶり。」
くっ、良い声なんだ、これが!!
観念して顔を上げれば、そこには無表情なのに悲しげな瞳をしたギルバート様がいて……
「っ、……ギルバート様、お久しぶりです。」
ねえ、なんでそんな瞳をするの。ダメだよ、これ以上、期待、させないで??
「ん。……今日、楽しめてる?」
「はい!!それはもちろん!!あっ、……」
そう言えば、席を融通してくれたとか何とかサラが言ってたな。もしそうだったら、お礼だけはきちんとしなければ。
「………レイラ?」
「……あの、今日のこの席、ギルバート様が用意してくださった、ってサラが言ってたんですけど、本当ですか??」
「…ん、そうだよ。」
「ギルバート様、私、お礼の品とかは要らないって言ったのに……」
「んーん、俺がやりたかったからやっただけ。レイラが楽しめたなら良い。」
ぎゃっ!!なんだその、そのその、ときめき発言はぁ!!!
「……でも、レイラ、……」
なんだろう、??
「……ギルバート様??」
尋ねれば、綺麗な瞳が私の瞳を真っ直ぐに覗いてくる。
「……レイラ、俺のこと、嫌いになっちゃった?」
「へっ!??」
な、何でそうなったぁ!!って、あ、私が避けまくってたからじゃん!!それは嫌!!も、もしかして、それで悲しそうにしてたの!??サラの言ってた通りじゃないか!!くっ、それは私の不覚の致すところ!!と言うか、嫌ってるとか、ギルバート様に思われたくない!!!真逆だし!!!好きだし!!
「そ、そんな、私が嫌いになんてなるわけないじゃ無いですか!!私、ギルバート様のこと大好きですよ!!」
「ん、…」
私がそう答えれば、ギルバート様は片手で口元を覆って、そっぽを向いてしまった。
そして、じわじわと耳の先が赤みを帯び、こちらを向いた顔も赤くなっていた。
え、………ま、まさか!!
「ギ、ギルバート様、お酒の入ってるお菓子でも食べましたか!???顔が赤いですよ!!」
またなのか!!しかもここでなのか!!まじでか!!前回より人多いぞ!!もはや学園の人全員いるぞ!!
私はとりあえず自分が座っていた場所にギルバート様を座らせた。
「………レイラ、酔ってないから大丈夫。」
「でも、ギルバート様、顔赤いですよ??もしかして、お熱があるんじゃ……」
そう思った私は少し屈んで手を伸ばし、ギルバート様のおでこに触れた。
すると、自然とギルバート様の瞳を至近距離から覗くことになった。
あ、目が離せないし熱とかちょっと分かんない、な、あ???
「ひゃっ、!」
最初に取られていた手を引かれ、予期していなかった私はギルバート様の方に足がもつれ、ギルバート様の胸板に顔面から着地した。慌てて体を起こそうとするも、ギルバート様により阻止され、そのまま膝の上に横向きに乗せられた。
「ギ、ギルバート様!!?やっぱり酔ってま、んっ!!」
人差し指で唇を押さえられた。
ねえ、やっぱり絶対酔ってますよね!!
「……酔ってない。」
嘘だ、と言いたくても押さえられてて喋れない。喋ろうとしたらギルバート様の指を食べちゃいそうで、喋れない!!
しかも膝から降りられない。何故って、私の手を掴んでいたはずの手が、私のお腹をがっつりホールドしているからだ!!
なんだこれ!!なんなんなんなん!!!
「ね、レイラ。俺、赤いの?」
私が大混乱の渦の中にいると、ギルバート様はそんなことを聞いてくる。
この間ほどでは無いが、ギルバート様はほんのりと赤く染まっている。な、なんていうか、色気が、その……
見るな危険、だ!!そして私の方が絶対赤い!!!
私は、とりあえずそのことを伝えなければと思った。しかしながら、喋るとギルバート様の指を食べることになりそうなので、こっくりと頷いた。
ちらっとギルバート様を伺うと、ほわっと解けるような笑みを私に向けてきた。
くっ!!かわいい!!かわいい上に、かっこいい!!好き!!でも色気もくるから見るな危険!!!
私がそんなことを思っていると、ギルバート様は唇にあった手を私の頬に移動した。そしてそのまま撫でたかと思うと、
「にゃっ!!」
手とは反対の頬にキスしてきた。
もう、私の心はキャパオーバー。無理だ、酔ってるにしても、辛すぎる!!過剰供給が過ぎるってば!!心臓が!!!
「レイラ、俺は酔ってない。それを前提で聞いてね、レイラ。」
「ひゃ、ひゃい!!」
耳元でそう良い声で囁かれると、抵抗できない!!ついでに顔も見れない!!
私は顔を両手で覆い、ギルバート様と反対方向を向いた。しかし、それはギルバート様の手によって妨げられ、頬に手を当てられ、顔を固定させられ、目を合わせられる。
「俺も、レイラのこと大好き。」
「ひゃ!!?」
な、な、な、な、!!!?
「ふ、レイラ、かわいい。」
そのままおでこにキスされる。
「ギ、ギルバート様??あの、今、なん、て??」
思わずギルバート様の顔を仰ぎ見る。
「ん、俺はレイラのことが大好き。レイラがかわいいって言った。」
えーっと、ギルバート様は、私のことが好きで、私がかわいい、って、素敵過ぎる笑顔、甘〜い瞳で私を見て、言っ、た、…………
は!??
へ!??
はいいいいいぃ!???




