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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる
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剣技・魔法大会(3)


 そんな感じで残りの試合、ケイトは相手の力量よりギリギリ上くらいの炎で燃やすか、場外に出すかして、難なく準決勝まで進んだ。


 うん、ケイトってば、エリザベスさん以外の人にはめちゃくちゃ手加減してるね。まあ、エリザベスさんは希望して出たタイプだもんね。単位取るために出てた訳じゃなかったもんね。容赦する必要なかったもんね……


 ちなみにお兄様だが、剣技・魔法部門でこちらも難なく準決勝まで残っていた。


 お兄様が剣を一振りすれば、相手は場外へ飛んでいく。そんな感じ。


 うーん、なんだかこれを見てると、後方支援の私でも、準決勝まで残れたかも、とか思ってしまうのだけれど……


 怖いなって思ってたけど、意外と大丈夫だったし、来年は出ようかな。


 あと残っている人の中で、私の知っている人は……


 なんと、私たちのクラスメイト、アイザック・ヘイズ様が剣技部門で残っていた。普通にすごいと思う。ヘイズ様とは、挨拶くらいしか交わしたことがないけど、私の隣の席の男の子、ルーベン・パリッシュ様とよく話している。だから、よく目に入る。


「ねえサラ、クラスメイトのヘイズ様が残ってるよ。」


「あら、本当ね。さすがヘイズ家、と言ったところかしら。」


「んん??サラ、どう言うこと??」


「レイラ、知らない??ヘイズ子爵家は代々優秀な強い騎士を輩出している家系で、男児は幼い頃から鍛錬に励むそうよ。ただ、その弊害か、少し脳き……」


「……なるほど、脳きn」


「んんっ、まあ、腕っ節が強い人が多いのよ。」


「……なるほど。」


「あぁ、ついでに教えておくけど、レイラの隣の席のパリッシュ様の家。パリッシュ子爵家は、代々国立図書館の司書長を務めているわよ。代々本好きの人たちばかりで、できる限り図書館に引きこもっていようとする、という話で有名よ。」


「へぇ〜。たしかにパリッシュ様、ずっと本読んでるものね。」


「それから、今話した2人、いとこ同士よ。」


「えっ!!そうなの??」


「そうよ。2人とも、よく教室内で一緒にいるじゃない。」


「たしかに仲良いなぁって思ってたけど、それは知らなかった!!」


「はぁ、あなたの将来が心配だわ……」


 サラにそんなことを教わりながら、私とサラはお昼を食べた。心の中で、貴族でもお弁当は食べるんだなぁ、懐かしいなぁ、とか。お弁当をよく食べてたことは分かるのに、お弁当の中身がなんだったのかは、思い出せないなぁ、とか。私って、何が好きだったんだろうなぁ、とか。


 ちょっとだけ、そんなことを思いながら。


 それにしてもサラ、ほんとにいろんな情報を知っている。すごすぎる。私は興味のない情報は片っ端から抜けていくタイプなので、サラみたいにはなれないな……


「あら?」


「どうしたのサラ??」


 プログラムをめくっていたサラが突然険しい顔になる。


「レイラ、いくらケイトでも、次は危ういわ。」


「え?」


 あのケイトが??


「相手がエヴァ・パルトロウ様なのよ。」


「えーっと、それは……」


 誰だろうな……パルトロウ、って、聞いたことある家名な気はするんだけど……


「………レイラ、分からないのね??」


「うっ、はい。……」


「もう。仕方ないわね。レイラ、いい??パルトロウ様は、現在の魔導士団のトップを務める高魔力保持者、ナイル・パルトロウ様の末娘で、魔法の才能に溢れる方よ。しかもこの学園の5年生、つまり最終学年ってこと。」


「はぁー、つまり、パルトロウ様はめちゃくちゃ強いのね。魔導士団の団長様に習っていらっしゃるから。」


「そう言うことよ。さて、どうなるかしらね。」


 そうしてお昼の時間が終われば、お兄様や、ケイトの出番だ。


 ヘイズ様とは挨拶くらいしかしたことないけど、クラスメイトとして応援しよう。


「レイラ、そろそろケイトの番よ。」


「うん。あっ、ケイトが入場してきたよ!」


「ほんとだわ!!」


「なんか、2人とも綺麗だなぁ。めちゃくちゃ強いとは思えないんだけど。」


 パルトロウ様もケイトに負けず劣らず、緑の髪に翡翠の瞳の、それはそれは美しい人だった。


 そんな綺麗な2人が、会場の真ん中に揃う。そして、初めの合図が出された瞬間。


 ケイトは炎を、パルトロウ様は氷を。


 炎に氷がぶつかって、虹色に光る。


 とっても綺麗だ。なんて幻想的なんだろう。


 美しい2人の勝負に、観客は皆、見惚れ、歓声が上がった。


 そうしていると草木が地面から芽生え、パルトロウ様を捕らえようとする。しかしパルトロウ様はそれを避けつつ氷で固める。そしてそのままケイトの足元まで氷で固めようとする。そこを避けるケイト。


 そして、ケイトが一撃必殺の雷魔法を放とうとした、その時だった。


 ケイトの背後に蔦が生え、それがケイトを追いかける。ケイトは凍った地面に足を取られ、蔦に捕らえられてしまったのだ。そしてそのまま、蔦が素早くケイトを縛り上げ、放り投げた。


 そして、ケイトがすたっと着地した場所は、場外。


「勝負、あったわね。」


「うん。ケイトもパルトロウ様も、すごく綺麗だった……」


「ふふ、そうね。ケイトが戻ってきたら、たくさん労ってあげましょ?」


「うん、そうだね。」


 それにしても準決勝、今までよりレベル、高すぎませんか??来年は出よう、とか思ってたけど、冗談じゃない。やめよう、私には無理だ。


 そう心に決めたのだった。


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