学園食堂にて(2)
むむむ??王太子様御一行は、普段、別室でご飯を食べているのではなかったか??
ちょっと好奇心に負けて、そろりそろりとそちらを見てみた。すると、王太子様もその側近様も、こちらを見ているではないか。あ、いや、隣のケイトを見ているのか??
ケイトに目線を移すと、にやにやとしたケイトがいるだけだった。そのままサラに視線を移すと、サラも似たような顔をしている。
なぜだ、一体なんなんだ。私はもう右を向くことが出来ないではないか。なんで見られてるんだ。こんな高貴な人たちに。
「やあ、こんにちは。君がレイラ嬢かい??」
私は、声がした方にギギギっという感じに顔を向けた。するとそこには、王太子様の側近、メトカーフ様がいた。
私の口の中は今、最後の一口!!と、大量の焼きそばを詰め込んだ状態である。なので、とりあえず口を手で塞いだ格好のまま、顔を見て頷いておく。
頷いたのに、メトカーフ様は去っていかない。にこにこしながらそこに立っている。なぜだ。私に何か用があるのか??
私はとりあえず、懸命に口の中の焼きそばを片付けた。それからお箸も一度置き、お茶を一口。
そうしていても、まだメトカーフ様はそこに立っている。一体何なんだ??
「……あの、メトカーフ様??何か御用がお有りでしょうか??」
あ、顔が良い。こりゃあイケメンだわ。確か、お父様が騎士団長を務めていて、本人も強いとかなんとか言われてたっけな。でも、この人から出ている噂が、確か、ね……
そんなことを考えていると、するっと手を取られ、手の甲に口付けの真似事をされた。
「レイラ嬢、お食事中のところすみませんね。ふふ、可愛らしい人がいたので、声をかけたまでですよ。」
効果音がつきそうなくらいのウインクをかましながらそう言われた。
うん、顔が良いわ。そしてファンサも申し分ない。うんうん、この人はアイドルに向いてるね!!女好きらしいしね!!みんなにキャーキャー言われるのにも慣れてそうだね!!
まあ、自分が関わりたいタイプではない。遠くからイケメンですね、顔が良いですね、と思っているだけで十分な人である。そしてこれは社交辞令。返事を返すとどう転ぶか分からない。だから私は笑顔プラス無言で頷いておいた。
頷いたのに、なぜか手を離してもらえない。なんなんだこのイケメン。イケメンだから許すぞ。でも困った。困ったことに違いはない。
私はさらっと視線をケイトに移す。すると、ケイトの顔が営業スマイルに変化していた。サラの方も伺ってみる。すると、サラの顔もまた、営業スマイルに変化していた。そしてその顔で、メトカーフ様を見ている。
む、私には分かるぞ。これは、よく私にしてくる笑顔の圧だ。メトカーフ様に圧をかけているぞ、この淑女2人!!大丈夫なのか!?一応王太子様の側近ですよ!?格上ですよ!??
わ、分かったぞ。私が、私が焼きそば食べたいので、手を離してください、って言えば、解決するんだな!!そうなんだな!!ちょっと、いや、大分気まずいんだけどな、それ言うの!!だって、もう食べ終わっちゃってるからな!!
私が言うしかないか、と決意し、口を開こうとした時。私の手がメトカーフ様から解放された。いや、解放された、というより、どこからかすぐ側まで来ていたギルバート様に、はたき落とされていた。
そしてそのまま、私の手は、ギルバート様に握られ、こう言われた。
「レイラ、オリヴァーの手ははたき落としても問題ない。」
「え?あの、ギルバート様、いくらなんでもそれは、その……」
そしてギルバート様、あなたどこからいらっしゃいましたか??
「大丈夫だ、問題ない。」
「あの、……メトカーフ様にとって問題がなくてもですね、私にとって問題が発生しそうと言いますか、メトカーフ様に憧れている人にとって問題があると言いますか、……その、メトカーフ様以外の人から苦情が来そうと言いますか……」
そうだ、一般市民がアイドルの手をぶんっと振り払ったりしたら、ファンに潰されるであろう。せっかくの機会を!!メトカーフ様になんて事を!!みたいな……
ただ単に私の妄想力が高いだけかな、そうだと良いんだけどな……
「っは、ははっ、もうダメだ、」
ん??
「なるほどな、はははっ、これはたしかに面白い。」
はい?王太子様??なんでお腹抱えて笑ってるんですか??私、面白くもなんともないですよ??平凡の中の平凡、面白みも特にない、一般生徒ですよ!!
「っふは、」
あれ??ギルバート様??なんで笑ってるんですか??
なんだか、隣からも笑っている気配がするし、サラも笑ってそうだ。ついでに言うと、王太子様の側近、サリヴァン様も、当の本人のメトカーフ様も笑っているようだし、え??なんで??
「ギルバートが気に入るのも分かるな。」
「ええ、そうですね。」
王太子様とメトカーフ様はにやにやしながらそんなことを言う。サリヴァン様も頷いている。
「……」
ギルバート様は無表情、無言である。んん??なんか、若干王太子様とメトカーフ様を睨んでいるような……
「レイラ嬢、さっきはごめんね??」
「いえ、別に大丈夫、です??」
メトカーフ様に軽く謝られた。うん、悪いことをしている自覚はあったようだ。
ベネット・オルティス(17歳)
オルティス王家の第一王子であり、王太子。ふわふわした濃紺の髪に、金の瞳。婚約者はアリス・ノルベルト。
オリヴァー・メトカーフ(16歳)
メトカーフ侯爵家の嫡男。王太子の側近の1人。綺麗な緑の髪に、ヘーゼルの瞳。
ディラン・サリヴァン(16歳)
サリヴァン公爵家嫡男。王太子の側近の1人。キャラメル色の髪に、ルビーの様な瞳。




