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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる
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事情説明会(4)


「レイラ、行こうか。」


「はい、お兄様。」


 兄にエスコートされて馬車を降り、使用人たちに迎え入れられて家の中へ入る。


 前世を思い出すと、やはり我が家も豪邸だなと思う。だって、どんだけ広いって、ハリウッドの別荘ぐらい広いように思えるのだ。しかも使用人付き。今世の私、マジモンのお嬢である。


 さて、そろそろ母と父のいる場所に到着する。さてさて、本当に思考回路を切り替えねば。


 さっきからずっと、兄は私を心配しているのだ。これ以上心配をかけたくはないし、今のところ命の危機にもあっていない。大丈夫だから。うん。私よ、黒髪がバレなければ良いのだ。大丈夫、大丈夫だ。


 部屋の中に入ると、既に父と母が座ってお茶していた。


「おお、レイラ、リアム、お帰りなさい。」


「お帰りなさい、2人とも。」


 そう言いながら腕を広げ、私の方へ歩いてくるこの人は、私の父である。ちなみに、母は優雅にお茶を飲んでいる。完全スルーだ。いつものことだけれど。


 父は、来年40になるとは思えないほどのイケメンで、サラサラの銀髪に、兄によく似た青い瞳、王子様な外面をしている。


 イケメンではある、イケメンではあるのだが、娘からすると、構われすぎてうざいという部類に入っている。いくらイケメンでも、うざいものはうざいのだ。


 でも、久しぶりだから仕方がない。今日は大人しくハグしてやろう。


「お父様、ただいま帰りました。お久しぶりです。」


「レイラ、また綺麗になってしまったのではないか??まったく、悪い虫たちを追い払うのが大変だよ。」


「………」


 思わず半眼になったのは許してほしい。


「こほん、あなた?」


「ベラ!!こ、これは違くてだな、そんな、追い払おうとなんてしてないから、大丈夫だぞ??な?」


 父よ、すべて白状しているぞ。相変わらず、母の前では隠し事ができないらしい。外では有能文官として働いているくせに。


 ちなみに、母は恋愛結婚推奨派である。私のことを、『学園で頑張ってお相手見つけておいで』と言って送り出した人である。なので、父がお相手を追い払おうとすることを良しとしないのである。


「母上、父上、そろそろ始めますよ。」


 兄が一声。


「うむ、そうだな。ベラ、頼む。」


「はい。」


 そう言うと、父に頼まれた母は、連絡の魔具をデジェネレス辺境伯、母の弟であるリッカルドおじ様に繋ぐ。


 数十秒経つと、砂嵐のような音が消え、声が届くようになる。


「リッカルド、聞こえますか??」


「姉上ですね??聞こえますよ。」


「そう。それでは、この前話した通り、分かった限りのことを報告なさい。」


「はい。」


 さすが母とおじ様、まさかのいきなり本題に入るらしい。挨拶すらおざなりだし、前置き的なものも無い。


「まず、聖女は大体5000年に1人、現れる。そして、聖女は魔物を殲滅する力を持っている。」


「ええ、そこまでは私たちも知っているわ。続きは??他に、分かったことがあったのでしょう??」


「はい、あったと言えばあったのですが……」


「リッカルド?歯切れが悪いわね。」


「い、言いますから!!何もしないでくださいよ!!」


「あなたが話すなら何もやらないわよ〜。」


 お母様、とっても楽しそうである。そしておじ様、かわいそうである……


「おっほん、これは、確定ではないのですけれど、やはり、5000年、と言う周期で、辺境では魔物が急増しています。これが全国の範囲なのか、と聞かれるとわからないところですけど。」


「そう。やっぱりね。」


「はい。それから、前代の聖女なのですが、その……」


「あら??リッカルド??」


「姉上!!話しますから!!話しますから、私の話を信じてくださいよ。」


「あら、どんな話なのかしら?」


 お母様、とっても楽しそうで何よりである。おじ様はかわいそうだけど。


「ふぅ〜っ」


 おじ様の長いため息が聞こえる。かわいそうである。


「……前代の聖女は、この世界の人間ではなく、異世界から来た人間であったそうです。しかも、その方とその時の当主が結婚したとか……」


 え??


 えぇ??


 はい??


「……リッカルド、もう一度言ってちょうだい?」


「ふぅ〜っ、いきますよ。前代の、聖女は、この世界の、人間ではなく、異世界から来た、方だった、そうです。しかも、その方は、私たちの、祖先に、当たります。」


 うそ、でしょ??


 そんなことって、ある??


 え?


「……そう。そんなことって、あるのかしら??……」


 無い、とは言い切れない。だって、私がここにいるから。私には、異世界に生きていた記憶があるから。


「遺されていた文献を隈なく探して読んでみたら、そんなことが書き記されていました。それが、わざわざここに遺してあったのです。それに、この世界の言語とは思えない、初めて見る言葉で記された、手記のようなものも見つけました。それらのことを踏まえると、きっと、今お話ししたことは、すべて、本当のことなのでしょう。」


「そう……」


 待って、異世界の人だった、って、もしかして、それって、日本人、なの??日本という、こことは全く別の、平和な国で生きていた、生きている人が、この世界に来てしまう可能性がある、ということなの??


 それじゃあ、その人の家族はどうなるの??恋人は??友達は??夢は??生活は??


 日本人で無かったとしても、この世界で聖女様となった人は、どれだけ辛かったことだろう。どれだけ、故郷に想いを馳せたことだろう。


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