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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる
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事情説明会(2)


「レイラ、おかえり!!待ってたよ、さあ、お兄様のところへおいで!!」


 両腕を広げて待っている兄。


「お帰りなさいませ、お嬢様。」


「……お兄様……いるとは思ってましたけど、……って、おいでって言っておきながら自分から私を撫でに来てるじゃないですか……」


 両腕を広げてこちらに歩いてくる兄。うん、この兄、これでも外では人気のある男なのだ。まったく、本当に残念な男だ。


「レイラ、細かいことは気にしなくて良いんだよ!!さあ、お兄様とお茶しようじゃないか!」


 これだけお兄様になでなでされている私を見ても、アルマはまったく動じていない。さすがアルマ、素晴らしい侍女である。


「…では、お兄様にも事情を説明しましょう。」


 とりあえずお兄様を引っ剥がし、席につき、昨日の事の顛末を説明した。


「……そう、か。聖女。ふむ。おじ様と父上は知っていたのだろうな。俺にも説明しておいてくれれば良いものを。」


「そうなのですかね??」


「そうだろう。でなければ、髪色をここまで断固として隠させたりはしないだろうし。言われてみれば、だな。はぁ、俺もまだまだだ。それに、そもそも黒髪を隠せ、と言い始めたのは父上だっただろう?」


「……そう言われると、そうだったような??」


 正直覚えていない……


「母上も賛成していたように思うしな。母上は自由な人だが、あれで意外としっかりしている方だ。きっと、聖女の話も知っていたに違いない。」


「そうですね。」


 母は自由奔放な人だけれど、それだけではない。とてもしっかり、うーん、しっかり、というよりちゃっかり??していて、なんだかんだやることはやってるタイプの人だ。それに、家族を大切に思っている人でもある。


「辺境は山々に囲まれている分、魔物の数が多い。きっと、辺境の地に住まう者たちは、代々の聖女に世話になってきているのだろう。」


「確かにそうかもしれないですね。……」


 そう言われれば、確かにそうだ。魔物が1番出る場所は辺境なのだ。魔物を殲滅できる人材がいたとすれば、真っ先に欲しがるのは辺境だろう。


「ああ。辺境の奴らは強いが、どうしても魔物の被害を受けやすい。殲滅してくれるような人がいたら、真っ先に囲うだろうな。」


 そう、辺境育ちの人たちは総じて強い。理由は簡単。実践の場が多いから。でも、その分被害は多い。


 ケイトも辺境伯の娘であり、辺境に住む人たちのことを大切に思っているから、よく魔物討伐に参加していた。彼女、儚げ美女にしか見えないけれど、実は魔法の大天才なのだ。高魔力保持者ではないけれど、ケイトの魔力量は多い方だ。


 魔力量の多い、少ないがあるのなら、黒髪の高魔力保持者とか関係ないのでは??と思うかもしれないけど、そうもいかない。なぜなら、黒髪の高魔力保持者は、妖精と同じレベルで魔法を使えるからだ。そう、つまりは魔法チートである。普通、ギルバート様のように、ぽんぽん転移なんてできないのである。あれは、黒髪高魔力保持者であり、なおかつ努力をしてきた人だからこそできる代物だ。


 それに対して一般の人たちは、魔力量が多めの人でも、妖精の域にまでは達せられないのだ。転移なんて一生できるようにはならないだろうな。うん、中々に不公平である。まあ、運動神経と同じようなものだから、仕方ないと諦めるしかないのだが……


 とりあえず、辺境は魔物が多いから、殲滅できる存在が現れた、となったら大いに助かることだろう。うん、聖女様様になるに違いない。


「だからこそ、辺境には文献が残っていたのかもしれないな。そして、それを繋ぐ役目を辺境伯が果たしてきた、のか?それにしても、5000年に一度、か。その周期は少し気になるところだな。」


 兄、頭は良いのである。私はそんなこと分からなかったよ……つくづく自分の頭が平凡なのが悲しく思う。


「なあレイラ、ケイトに叔父上に連絡を取ってもらうよう頼んだんだよな??」


「ええ、ケイトにお願いしました。」


 ギルバート様にお願いされたからなんだけどね!


「ふむ。それなら近いうちに叔父上から連絡が来るだろう。それまで、とりあえず俺の方でも少し調べてみよう。ああ、父上と母上のところにも行った方が良さそうだな。」


「そうですね。ちょうど明後日は休みですし、一度家に帰りましょうか。」


「そうだな。それがいいだろう。俺もその時は行くから、一緒に行こうな!!それから、また何かあったら、お兄様に相談するんだぞ?」


「ふふ、はい。ありがとうございます。」


 なんだかんだいい兄なのだ、この人は。会うたびに撫でくりまわすのはやめて欲しいけど。


「ではな、レイラ。ゆっくり休めよ。」


 そう言っておでこにキスを落とされる。


「はい、お兄様も。」


 私も兄のほっぺたにキスを送る。


 うーん、そろそろこれ、やめるべきかな。まあおいおいで、ね。


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