事情説明会(1)
悶えて眠れない!!ってなるかなぁ、と少し思っていたのだけれど、そんなことは全く無く…普通にぐっすり寝て、翌朝、普通にアルマに起こされた。
いつも通り寝ぼけながら軽めの朝食を食べ、歯を磨き、学園へ出発する。
「アルマ、行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ。お気をつけてくださいね。」
私は大抵、学園につくのが1番最後だ。あ、遅刻はしていないよ?ふふん、ギリギリを攻めるのが私流なのだ。
1人廊下を歩いているのだけれど、今のところ、女子の殺気のこもった視線を受けてはいない。うん、平和そのものである。きっと、放課後は集中砲火を浴びることになるんだろうなぁ。はあ。めんどくさい。
平和な廊下を抜け、教室に入る。すると途端にサラとケイトに両腕を取られ、捕獲された。
「サラ、ケイト、お、おはよう。」
「「おはよう、レイラ。」」
怖い、なにその笑顔。これは、洗いざらい吐かされるやつだ。わ、わかるんだからな!!話そうと思ってたから良いんだけどさ、怖いからね!!
「……あの、今日の放課後、空いてる??」
「「ええ、もちろん。」」
うわぁ、息ぴったりぃ!
「……では、放課後カフェサロンで。」
「わかったわ。」
「ええ、それなら許しましょう。」
そう言って、私は解放されたのだった……
その日の授業が終わると、サラとレイラに即カフェサロンの個室へご案内された。まったく、2人とも手際がよろしすぎる。お陰で、女子の殺気のこもった視線は受けずに済んだけども。それはとてもよかったけども。
カフェサロンにつき、お茶の準備が全て整うと、待ってました!!とばかりに質問攻めだ。
「ねえ、レイラ。昨日ず〜っと調子がおかしかったのは、フォーサイス様が原因だったのでしょう??」
「レイラってば、あんな大物とどこで知り合ったのよ。それから、極め付けは昨日の放課後よ。ね、サラ。」
「ええ。レイラ、知ってる??フォーサイス様は、氷の魔導士と呼ばれているくらい、無表情で無口。その上氷みたいに冷たい表情をしているはずなのに、それすらアクセントになってしまうような綺麗な顔!!と噂の人なのよ。そんな人が喋って、声を出して、その上あなたの手を引っ張って行ったのよ!!」
「そうよレイラ。あれは、普通ではないわ。前情報と違いすぎるのよ。それに、フォーサイス様には、憧れている人が男女問わずたくさんいるわ。」
「ちょ、ちょっと待って、2人とも。今、ちゃんと説明するから……」
そう断って、なんとか出会い(私は気絶してて覚えてない)から、昨日の聖女がうんたらすんたらの話までを説明した。
あ、もちろんフォーサイス公爵邸へ行かなければならなかったのは、ギルバート様にとって叔母にあたる、シンディー・オルティス殿下に会わなければならなかったから、と説明しておいた。さすがに、保健室の先生が国王の双子の妹だ、って口外したらまずいからね。まあ、2人なら知ってるかもしれないけど。
「なるほどね。あなたを王宮に招かなかったのは、王宮には敵と味方が混在していて、誰を信用していいか分からないから、誰かにバレたらまずいから、と言ったところかしらね。」
「えっ!そんな意味があったの!??」
サラ、凄すぎである。私は特に意味なんて考えずに、学園で話したらまずいものね、ぐらいにしか思っていなかった。
「そう、そんなことになっていたのね……」
「まさか、気を失ったところを助けられて、そこから髪色がばれて、聖女だと思ったら、結局違った、だなんて。」
「そうなんだよね。あ、この事は他言無用でお願いします。」
「「ええ、もちろん。」」
私はサラを騙していたことになるのに、サラはそのまま受け入れてくれた。私がサラに『黙っててごめん。』と謝ると、サラは『髪色なんかであなたが変わるわけじゃないんだもの、別に構わないわ。』と言ってくれた。サラ、ほんとに男前すぎる。
はあ、2人とも得難き者、だよね。絶対に大切にしなきゃ。
「ふふ、ありがとう、2人とも。あ、そうだ。ケイト、ケイトにはおじ様にこのことを伝えて欲しいんだ。」
「そう、わかったわ。」
「ねえレイラ。」
「ん?サラ、どうしたの??」
「あなた、結局、髪色がバレたら狙われる可能性のある身、ってことよね??」
「うん。そうなってる。とっても不本意なことに。」
「それで、フォーサイス様はこちらの味方、と。」
「うん。そうだね。」
「……スピネット伯爵家、デジェネレス辺境伯家、フォーサイス公爵家、それからパリッシュ子爵家、ノルベルト公爵家、……」
「サラ??」
サラは何かぶつぶつと独り言を言い始めた。こういう時は、大抵何かを考えている時だ。サラはとっても頭の切れる美女なのだ。
「レイラ、私もサラも、あなたのことは必ず守るわ。だから、心配しなくて大丈夫よ。」
「ケイト……ありがとう。私もバレないように頑張るから!!」
ケイトの守るはとっても心強い。ケイトは見た目儚げ美女なのに、とっても強いのだ。辺境育ちは伊達じゃない。
「……ふふふ、」
「サラ、どう??」
「ケイト、ふふ、味方になりそうな家、敵になりそうな家、ふふふ、帰ったら精査しなくちゃ。」
「そうねぇ。ふふふ、私は物理の方を守るから、サラは物理以外の、そっちをお願いするわ。」
「ええ、もちろん。」
「「ふふ、ふふふふふ。」」
な、なんか2人して笑ってて怖いんだけど!!なんで、ぴゃってなるような空気を纏ってるんだ……ものすごく心強い友達、のはずなんだけどな……
その後は普通にお喋りをして、お茶を楽しみ、そのまま寮へ帰った。すると、私の部屋にはお兄様がいた。




