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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる
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フォーサイス公爵邸(5)


 あ、そういえば、ケイトとサラに、この聖女うんたらのこと話しても大丈夫かな??聞いておかないとね。


「あの、ギルバート様。」


「ん?」


「あの、今日ここで聞いた、聖女が黒髪黒眼、という話、友達に話しても大丈夫ですか??」


「……その友達、というのは誰だ?」


「今話していたケイトと、サラです。あ、サラはアメル子爵家の娘さんです。」


「……デジェネレス辺境伯の娘には、そのまま辺境伯にまで伝えてもらえると助かるな。もう1人、サラ嬢の方は、あなたが信頼する人なら大丈夫だろう。ただ、口止めはしておくべきだ。むやみやたらに知られるとまずいからな。」


「もちろん、口止めはします。でも、2人とも人の秘密をベラベラと喋るような人ではないので、大丈夫ですね!」


「ん。」


 こっくりと頷くギルバート様。


 ギルバート様からのお許しも出たことだし、明日にでも2人に話そう。うん。ちょっと話したいことが多すぎる。パンクしそうだけど。


「レイラ、寮まで送ろう。」


「ありがとうございます。」


「ん、レイラ、手を。」


「あ、待ってください、荷物を」


「ん、俺が持ったから。手を。」


「え、いつの間に…」


 ほんと、いつの間に持ったんだ……


「……ありがとうございます。」


 そう言いながらギルバート様に手を差し出す。


「レイラ、少し目を瞑っていて。もう遅いから、転移で送る。」


「え"っ、それは申し訳ないから大」


 丈夫ですよ!と言う前に転移された。どう見ても寮の前だよね。まじか、ほんとかこれ??うん、ほんとだな。


 目を閉じてって、瞬く間でもいいんですね……


 思わず目が遠くなるのは仕方のないことだと思うんだ。


「ん、ついた。部屋まで送る。」


「え"っ!そんな、本当に大丈夫ですよ!!ここまで送ってくださってありがとうございます。」


 本当にこれ以上は申し訳ない!!しかも、ギルバート様と一緒にいるところを見られたりしたら!!女子に、女子に殺される!!視線で殺されるよぉ!!


「……」


 まって、そんな目で見ないでギルバート様、本当にぃ……


「……そうだ。レイラ、手紙をわざわざありがとう。リアムからもらった。」


「いえいえ、そんな!こちらこそ、本当にありがとうございました。今日の朝も、すごくびっくりしましたけど、お陰で遅刻せずに済みました。重ね重ね、ありがとうございます。」


 兄はきちんと手紙を渡してくれていたようだ。結局、こうして直接会うことになったから、無駄になった気はしないでもないけれど……


「その手紙に書いてあった。何かあったら、俺の力になると。」


「え?た、確かに書きましたけど……それがどうかしたんですか??」


 ギルバート様に何かあることなんて一生かけても起こり得ないだろうなぁと思って、確かに書いたけど……もちろん力になりたい、って言うのも本当だし。


「ん、レイラにしてもらいたいことがある。」


「え??なんでしょう??」


 普通に想像もつかない。あ、好きな女子の好きな花を聞いてきて、とか??


「俺をレイラの部屋に連れて行って。」


「ひゃい??」


 まって、それは反則でしょう!!うぅ、もう案内するしかないじゃん。なんって反則的な顔をお持ちなの!?そんな、ちょっと、ふわっと笑っただけなのに!!なんて破壊力!!


 そういえば、放課後、一緒にいるところもう見られてる、よね。あ、もう誰に見られたところで変わらないか。ははは、明日から辛いね。女子の視線で殺されるんだね……でも、私にはケイトとサラがいるものね。うん、私はもう考えないさ、うん……


「……では、ご案内します。」


「ん。」


 そのまま寮の中に2人で入り、2階へ上がる。そのまま廊下を歩けば、私の部屋の前につく。


「ん、ついたね。」


「はい。あの、ギルバート様。ここまで送ってくださって、本当にありがとうございました。」


「ん、いいの。俺が好きでしたことだから。ほら、部屋に入って。」


「あの、でも、」


 流石に見送りたいのだけれど……


「俺は転移で帰るから。だから部屋に入って。」


 そう言われたら、入るしかない。


「……分かりました。昨日といい、今日といい、本当にお世話になりました。」


「ん。」


「あ、ギルバート様、おやすみなさい。よい夢を。」


 私がそう伝えると、ギルバート様はふわりと微笑んだ。


 もう、その笑顔にやられない人なんていない!!素晴らしい破壊力!!可愛く見えるとか、何事なの!?


「ん。おやすみ。レイラもよい夢を。」


 私は部屋の中に入り、へなへなとしゃがみ込んだ。


 なんなの、あの殺人的な笑顔は!!ほんとに氷の魔導士なの!?うそよ!


「お嬢様!??どうされたのですか!?」


 入り口でへなへなしている私のもとに、アルマが駆け寄ってきた。


「あ、アルマ……ギルバート様が、笑ったのよ……破壊力…あれは破壊力の塊だわ……」


「お嬢様、具合が悪いわけではないのですね??」


「それは全く違うわ……ただ、ギルバート様が……」


「はあ。それなら、とりあえずお立ちになってくださいな。そしてお風呂に入ってしまいましょう。ほら、さっぱりしましょうね。」


 私はアルマに風呂に入れられ、食事を済ませた。さすがアルマ、私の扱いがとても上手である。


 そして今は、夜のまったりタイム。普段なら学園の宿題や授業の復習をしたり、本を読んだりしているのだけれど。


 今日はもうダメだ。ギルバート様の素敵な笑顔が!!言葉が!!うああぁぁ!!悶えてしまう。ダメだよ、悶えるよこれは。だって、だってだって、うがあぁぁ!!


 うん、寝よう。もう何も手につかない。本を読んでもギルバート様だもの!!


 そうして私は布団に潜り込んだのだった。


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