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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる
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学園へ(ケイトside)

 学園へ(3)、(4)のレイラとフォーサイス様が廊下で会うシーンの、ケイト視点です。


 今日の授業はこれで終わりね。さてと、サラとレイラについて話し合わなくっちゃ。


 そう考えていると、サラの方から話しかけてきた。


「ねえケイト、今日のレイラ、あまりにもおかしいわ。」


 やっぱり、サラもレイラが心配だったみたいね。


「そうねぇ。ぜんっぜん人の言うこと聞いてないものね。まるで魂をどこかに飛ばしているみたい。」


「やっぱりそう思うわよね。でも、全然話してくれないし……」


「そうねぇ……」


 レイラは、基本的に隠し事をしない。いや、しないというより、できない。なぜなら、今日の行動みたいに、すぐに顔に出てしまうから。


 仕方がないから、普段は私が聞き出してあげている。なんでかって言うと、私の前で隠し事してますって顔をされるのは嫌だから。それだけよ。


 今回のはたぶん、教室じゃ言えないようなことだと思うのよね。普段はすぐに口に出すもの。友達兼いとこ、なめんじゃないわよ。


 私はサラに提案する。


「それじゃ、カフェサロンにでも誘って、聞き出してみましょうか。」


「それは名案だわ!!早速誘いましょ!」


 そう言うと、サラは早速レイラに話しかけに行く。私はそれについて行く。


「ねえレイラ、元気になったのなら、学園内のカフェサロンにでも行かない??」


「ケイト、サラ、ありがとう。だけど私、今日は保健室に行かないといけなくて。」


 サラは笑顔になって口を開く。私ももちろん表情を笑顔にする。


「あら、そうなの??もしかして、本当は具合が悪いのに来たんじゃ無いでしょうね??」


「そ、それは違うわサラ!!本当に具合は大丈夫よ!!ただ、保健室の先生と少しお話しがあるだけなの。」


 うん、これは嘘じゃないわ。本当のようね。

 

「そう??具合が悪くないのなら良いのだけど……それじゃあ、残念だけど、また今度一緒にいきましょ。」


 サラは、そう言って器用にウインクをした。


「ええ、もちろん!!」


 保健室の先生、ねぇ。ふーん。風の噂で聞いたことがあるんだけど、それって、シンディ・オルティス様のことじゃなかったかしら??現国王の双子の妹。この学園で優秀な人材を王宮の要職に引っ張っていくって噂の。


 そんな人にお呼ばれしているのなら、仕方がないわね。なんでこの子が呼ばれるのかは不思議なのだけれど。今日のところは諦めましょう。


「それじゃあ、一階まで一緒に行きましょ。」


 私がそう言うと、レイラは急いで荷物をまとめ始めた。


 私とサラは目を見合わせ、どちらともなくため息をついたのだった。


 サラと雑談しながらレイラの準備を待っていると、突然廊下がざわざわし始めた。


「ねえサラ、向こう、なんか騒がしくない??」


「ええ、そうね。王太子殿下でも通られたのかしら??でも、一年の教室の前を通ったりはしないわよね。」


「アリス様がいるのかしら??でも、ここまで騒がしくはならないわよね。」


「誰がいるのか、気になるところね。」


 2人でそんなことを雑談しているうちに、レイラの準備が終わったようだ。


「お待たせケイト、サラ!」


「それじゃ、帰りましょうか。」


 そのまま3人、話しながら廊下へ出る。するとそこには、人々に囲まれた美しい人がいた。私とサラは、これは騒がしくもなるわね、と納得する。


「あら、珍しいわねぇ。なんか賑やかだと思ったら。ねえサラ、レイラ。」


 私の言葉に、サラが答える。


「ほんとね。あそこにいるの、高魔力保持者の、フォーサイス様じゃない??」 


 黒髪の美形だから、すぐに分かったわ。


「ふぁ!?」


 私とサラは、自然とレイラを見る。レイラは、そろそろと視線をフォーサイス様に向けたかと思うと、いきなりぐるりと反対方向に回転した。


 私とサラは目を見合わせる。


(この反応は、確実に何かある。)


 2人してそう思っていると、人垣が割れ、綺麗な男がこちらへ向かってくるではないか。目線の先には、反対方向を向いているレイラがいる。


 私とサラは少しだけレイラから離れ、こそこそと内緒話を開始する。


(ねえケイト、レイラの意識が飛んでいた原因、これなんじゃないかしら??)


(サラ、私もそう思うわ。)


 だって、明らかにフォーサイス様を見た時の行動がおかしかったもの。


 私たちが見守る中、そのままこちらへ歩いてきた男は、レイラの目の前に回り込み、口を開いた。

 

「レイラ、行こう。」


「へ??」


 男の声を聞いた女生徒たちがバタバタと倒れた。気持ちはわかるわ。ものすごく良い声してるものね。


 私とサラ??そんなので倒れるわけがないじゃない。ましてや私の名前を呼ばれたわけじゃないもの。


 でも、これは興奮せずにはいられないわ!!


(聞いた、サラ!?フォーサイス様が喋ったわ!!)


(ええ、もちろん!!しかも、レイラ、って言ったわよ!!)


 フォーサイス様が喋るなんて、すごくレアだわ。授業で当てられた時くらいしか口を開かないことで有名な人なのに…


 私はサラにコソコソと話しかける。


(レイラってば、大物を引っ掛けてきたわね。)


(そうね……あの子、すごいわね……)


 レイラがちらっとこちらを見たが、私は生暖かい視線を返しておいた。


「レイラ、行こう。」


「いや、あのフォーサイスさ、」


 そうして見守っていると、フォーサイス様はさっさとレイラの荷物を持ち、空いた手を取り歩き去った。


 私は、そんなレイラのことをすごい形相で睨んでいる女生徒を見つけた。


 あの子のことは、ちょっと気を付けておいた方が良さそうね。


 その他の生徒たちは、フォーサイス様の声を聞いてやられたらしい。ま、すごく良い声だったものね。しかもレアもの。あの子、あの声に名前を呼ばれても倒れないなんて。いとことして、色んな意味で感心しちゃうわ。


「「はぁ……」」


 2人がいなくなった場所で、私たちはため息をつく。


「まさか、あの子が恋に悩んでいたなんて、ね。」


「ほんとね……」


「それにしても、あんな大物、どこで釣り上げてきたんだか……」


「ねえサラ、そういえば、あの子がおかしくなったのって、今朝からよね??」


「ええ。あら??つまり、今朝、あの方に声をかけられたのかしら!!」


「そう言うことになるのかしら!!それにしたって、不思議ねぇ。」


「ほんとそうねぇ。どこで知り合ったのかしら。しかも、今朝、でしょう??」


「謎だわ……」


「とりあえず、明日、聞いてみましょうか。」


「そうね。明日、人気のない場所で聞き出してみましょう。」


 私たちはさまざまな推測を話しながら帰って行ったのだった。


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