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彼の猫と私  作者: Beyer
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4. 王都セントアールズ

 「ミナ、オシロ!ディz」

 「やめなさい!マロン!それ以上言わないの!」


 「ようこそ、アールズ王国首都セントアールズへ。私たちは歓迎します!ミナさん」


 王都へついたミナは、王都へ入る門の前で先ほどまで案内をしてくれていた、第3騎士団全員から歓迎を受ける。


 その洗練された歓迎の動きは通行人の目を引き、立ち止まるものも居たほどだ。

 

 そして彼らの背後にはまるで御伽話の世界の様な街並み。カラフルで、雑多な様でとても清潔感があって。マロンが言いたくなる気持ちもわかるがそれ以上だ。それもそうだろう、だって夢とは言えそこには人々の暮らしがあるのだから。


 「セントアールズの街並みはお気に召していただけましたか?ミナ=カナサキ殿」


 感銘を受けていた私にウルカさんは声をかけてくれる。


 「ええウルカさん勿論ですわ!ニホン公国の首都トウキョウも素晴らしい景色が売りでしたが、それ以上の美しさ。思わず足が弾んでしまいます!」


 「それはありがたいお言葉です。では早速この美しい国の王と御拝謁をお願いいたします」


 「え、すぐに王様と会う事になるの?お忙しいのでは無いでしょうか?」


 「確かに王はご多忙の身ではございますが、ことがこと故、王もすぐに対応してくださるでしょうし、」

 

 少し言葉をつまらせ、ウルカは照れ臭そうに言う。


 「ミナ殿のお話を聞いていて、今すぐ王に御目通りして頂いて、それがなんとか良き未来へと進んで貰えればと願う。私のわがまま故の行動です。ご迷惑でしたでしょうか?」


 「いえ、寧ろありがたい限りですわ。私は公爵令嬢とは言え、この国では名前も知れぬ国の公爵令嬢。さらに亡命とあってはもっと酷い扱いを受けても当然なのです。こんな厚待遇は夢にも思いませんでしたわ!」


 まあ夢なんでしょうけど。


 「イマ、ミナヨケイナコトカンガエテタ」

 「うるさいわよマロン」


 「失礼ですが、ミナ殿、ひょっとして使い魔と意思疎通を行う事が可能なので?」


 え、この夢で動物が話すことは普通では無いの?

 

 「ええ、このマロンとは話す事ができますが・・・」


 「なんと!ミナ殿は神獣と神の巫女なのですね!道理で、目も離せぬ神聖さがあるわけだ!これは尚のこと、今すぐ王に御拝謁願わねばなりませぬ!もはや天明なのでは!!!」


 ええ、全部都合のいい様に進んでいってしまってる。まあこれも夢なのだから当然なのだろうか。


 「あと10分ほどでセントアールズ城へ到着予定ですので、しばらくお待ちください」


 「ええ、わかったわ」


 ミナが乗る馬はゆっくりと中心にあるセントアールズ城へと歩を進めていた。


 途中、少し素行の悪そうな格好をした人間が集まる大きな建物が目に入る。


 「ウルカさん、あれはどう言う建物なんですか?」


 ウルカは少しびっくりした様子を見せつつも、納得した表情で説明を始める。


 「ああ、あれは冒険者ギルドです。モンスターの討伐や、商隊の護衛などを生業にする冒険者が、仕事を受けたり、逆に冒険者に仕事を依頼する場所となっております」


 ああ、よくあるゲームのやつね。ユウタがやってたわ、ナルガがなんとか良く言ってたかしら。


 「ミナ、ソレイジョウハダメ」


 自分の身体を舐めながらマロンはこれ以上具体的なことを話すのを止めるのであった。


 「じゃ、じゃあ、その人喰いスライムとやらも冒険者に依頼すればよろしいのでは無くて?」


 ミナはふと感じた疑問をウルカにぶつけてみる。


 「それはそうなのですが、グラゾーラはAランクモンスターで、冒険者に依頼する際はAランク任務となり、かなり依頼料が高額なんです」


 「王国の予算からは出せないのかしら?」


 これまたミナが感じた疑問をウルカにぶつける。


 「確かに王国の予算で出すことは可能です、しかしながら今回のグラゾーラの件はまだ噂レベルの話でして、今回私たちが向かったのはその噂の裏どりと言う側面が強くあります」


 なるほど、噂の確認にわざわざAランク冒険者に依頼するほどでは無いと言う話か。


 「ですが、その任務を放棄してまで私の護衛を務めていただいても大丈夫なのかしら?」


 そう、最初ウルカと会った時は、護衛を1人つけて王都へ向かうと言う話だったが、どういうわけか今は第3騎士団全員が私についてきており、かなり物々しい様相をしている。


 「いえ、あくまで噂ですので、その調査の優先度よりも、ミナ=カナサキニホン公国公爵令嬢殿のご案内の方が優先度が高いと判断しただけの事でございます故」


 まあそうか、噂よりも他国の大物を優先するか、でもまあそんな国ないんだけどね。


 「ミナ、ワルイコトシチャッタネ」


 マロンが小声で私に話しかけてくる。


 「夢なのに何でこんな罪悪感を感じるのかしらね?」


 そうしているうちにとうとうセントアールズ城の城門の前に到着する。


 近衛兵だろうか?王国騎士団よりもさらにパキッとした鎧を纏った集団が先に入ろうとしていて、後ろからやってきた私達を見つけて話しかけようとしてきた。


 「やあやあ、第3噂調査団の皆さんこんにちは」


 カブトを外してやってきたのは金髪のスラッとしたイケメンだ。


 「あれ?ウルカ隊長、確かグラゾーラの偵察に行くんじゃなかったっけぇ?、そのお馬さんの上に乗ってる可愛らしい女性がかの人喰いスライムグラゾーラなのかなぁ?」


 憎らしい笑みと共に私を舐め回すように見る、けどあれ?なんかこの人・・・


 「おい!セイン!この方は他国に公爵令嬢だぞ!失礼がないようにするんだ!」


 ウルカが、セインと呼んだその男を嗜めると、セインは汗をかきながらウルカに近づきウルカと小声で話し出す。


 「え、公爵令嬢?おいウルカ!何で先に行ってくれないんだ!ウルカの妹かなんかだと思って滅茶苦茶失礼なことをしてしまったじゃないか!」


 「俺の妹だったら失礼なことをしていい事になると思ってるんだなセイン、お前の気持ちはようくわかった!」

 

 「いや、それは冗談だってば。どうしたらいい、ウルカ」


 「とりあえず謝っておけ!幸いミナ殿は寛大なお方だから謝っておけば許してくれる!たぶん・・・」


 「多分ってなんだよお!!」


 いや、段々声が大きくなって全部聞こえるんですけど。


 セインは先ほどまでのやりとりが全くなかったかの様な風を装って、ミナに向き直り、膝をついて挨拶を始めた」


 「お初にお目にかかります公爵令嬢。私、近衛第一中隊長を務めております。セイン=ウィンター伯爵でございます」


 あまりの変わり様に驚くミナ。フォローを入れる様にウルカは説明を挟む。


 「ミナ殿、彼は私の幼なじみで、つい調子に乗ってしまいがちな奴なのですが、悪い奴じゃありません。先程は失礼いたしました。」


 ああ、道理で仲が良さそうなわけ。


 「別に構わないですよ。セインさん、ウルカさん。改めまして私、ニホン公国ミナ=カナサキ公爵令嬢ですわ。以降お見知り置きを」


 「寛大な処置、ありがとうございます」


 それからウルカ率いる第3騎士団とセイン率いる第1近衛中隊に囲まれながら、私たちは城へと足を踏み入れたのだった。


 「ナンカ、サマニナッテキテルネ」


 セインの頭の上でちょこんと座るマロンはそう呟いていた。



果たしてこれは本当に夢なのでしょうか?(小並感)

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