1.彼の猫と私
あれから1週間が経過した。
1週間が経過したらしいと言った表現の方が適切かもしれない。
私は未だにユウタが死んだという現実と向き合えないでいる。
長めの出張の時と同じ気持ちで毎日を過ごしていた。
そのせいで、友人からも本当は好きじゃなかったんじゃないかとか、挙げ句の果てには私がユウタを殺したなんて噂話も流れているらしい。
もしも私がユウタを殺していたのなら、きっと今とは違い殺した場所で、永遠に泣き続けていただろう。だって愛していたから。
お葬式にも行けなかった。正しくは行かなかった。ユウタのご両親も是非そばに居てやって欲しいと言われたけど、そんな気持ちにはなれなかった。
だって今でも私の中でユウタは生きているのだから。
ううん、わかってる。心の奥底ではユウタが死んでしまったことなんて、分かっているんだ。
分かっているから行けない、もう一度彼の死をこの目で認識してしまったら。もしも遺体を目にしたら、泣いている彼のご両親を見てしまったら。
私はきっと壊れてしまう。だから今はどんなに冷たいと言われようとも、彼殺しの噂を立てられようとも、彼の遺体の前には行けない。
きっと私は私自身を殺してしまうことになるから。それはユウタが一番悲しがるから。
「ニャオォ」
「ああ、ご飯の時間ね、準備するから待ってなさいバカマロン」
ユウタが居なくなって、私は彼の猫と1匹と1人きりになってしまった。
私はこの猫が嫌い、ユウタの気持ちを少しでも奪っていったから。ひょっとしたらこの猫がユウタを殺したんじゃないかとすら思えてくる。
だけど、この猫を捨てたり、暴力を振るったりはしない。だってユウタの猫だから。私の猫じゃない、この憎らしい雄猫は私の一番愛したユウタの飼い猫だから。
彼がいつか戻ってきた時に嫌われないようにしっかり世話をする。
だけど何故かこの日は私のあげた餌を食べてくれない。
「ニャオォ」
「何よ、トイレの掃除はさっきしたわよ」
「ニャオォ」
「水だってご飯と一緒に出したじゃない」
「ニャオォ」
「なんなのよ!おやつだってさっき食べたし猫じゃらしでちゃんと遊んであげたでしょ?何が不満なのよ!!」
良い加減にしてよ!
ただでさえ少し気が触れたら心が張り裂けそうなのに!
このクソ猫は!なんでこう神経を逆撫でするの?
そんなに私のことが嫌いなの!?
マロンは通じないことが分かったのか、ミナのすぐそばまで寄っていき、ジッと皆の目を見つめながら口を開いた」
「ココ、クウカン、サケテル、ニゲテ」
「ハァ?何言ってるの!ってなんで喋ってるのよ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ、、
家全体、町全体に地響きが鳴り出し、ミナの視界がまるで太陽をそのままめで見たような眩しさに突き刺され、思わず目を瞑りその場にしゃがみ込んでしまう。
「ミナ、ニゲテ、アブナイヨ」
「ムリよ!!なんで喋ってるのよバカマロン!」
マロンは絶え間なくミナに警告をしているが眩しすぎて、とてもじゃ無いが移動できる状況になかった。
瞬間、ミナとマロンはこの世界から消えた。
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「続いてのニュースです。今日〇〇県〇〇市の中心部を震源とした震度4の地震が発生しました。過去この場所で直下型地震が起きた事例はなく、現在専門の調査チームが震源の調査に当たっています。この地震による津波の心配はありません。また、現場付近の住宅で奇妙な光が放出されていたとの報告が多数あり、現在調査中です」
移動回?でした。
基本的にこの小説、明るい系にしようと思ってるんですけど、なんか暗いですよね笑