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彼の猫と私  作者: Beyer
1/5

プロローグ

最初の方、結構悲しいです。


 『あぁ神様お願いです。たとえ僕の人生が不幸な結末でも、ミナだけは幸せな人生が送れますように。』




ーーーーーーーーーーーーーーー


 「めっちゃ可愛いから!飼ってみようよ!お願いお世話はするから!」


 ペットショップの前でユウタが立ち止まり、一匹の猫にゾッコンになった。

 

 もう。子供じゃないんだからユウタは、そんなこと言ったって飼わないわよ?


 「ねえお願い!なんかこの猫と運命感じるんだ!」


 そんなこと言うような人じゃないのに、疲れてるのかな。

 こうやって甘えてくるユウタも少しは可愛いかも?



 そう言って私が折れる形で2人の部屋にやってきたオス猫、マロン。


 正直私は猫を飼うことにノリ気ではなかった。彼の愛情が少しでも猫に流れてしまう事に妬いてしまうから。


 飼ってからもその気持ちは変わらなかった。


 ユウタがいる時はあんなに甘えん坊で大人しい子でいるのに、私と2人きりになった途端に暴れるわ走り回るわ、色んなものを倒すわ。


 ユウタがいない間に何度捨ててやろうと思ったことか。


 イライラしてマロンをぶん投げてやった事もあるけど、そんな事をするたびにユウタは


 「ミナの方がお姉さんなんだからもっと思いやりを持って接してあげなさい」


 って何よ!私はユウタのペットじゃないし、この猫は弟でもなんでもないわ!邪魔者よ!!


 ああなんで飼ってしまったんだろう。

 こんな事なら無理にでも止めて飼わなければよかったわ。


 マロン!何よその顔、私のユウタを奪ってそんなに嬉しいわけ!?


 なんの顔をしているわけでもないのに見るたびに負けたような気持ちになってすごいムカつく!









 「金崎美奈さんでよろしかったでしょうか。お付き合いされていた相葉祐太さんの件で」


 何にもない平凡であるはずの朝、散歩に行くと言って出かけていたユウタとの別れは唐突だった。


 警官がうちにやってきて、事情を説明してくれる。はじめは冷静に聞けていたんだけど、後半はよく覚えていない。なんでかな。

 

 川に流された子供を助けに行って、

 子供は助けて自分はって何よ。

 貴方はどこかのヒーローだったの?

 なんでそんなドラマみたいな結末なのよ。

 私の好きなユウタは死に方まで格好いいのね。


 新聞にも取り上げられて、すっかり街の英雄になっちゃって、彼女の私も少し誇らしいわ。



 でも、私のことはどうするの?


 ヒーローになってそれで、私を置いて行ったの?


 マロンは?ユウタがお世話をするって言ったから飼ったのに、私が世話をするなんてまっぴらごめんよ。捨ててもいいの?




 遺体安置所のユウタは真っ白で、綺麗だった。そのまま持って帰りたいくらいに、私って本当にユウタの事好きだったんだな。


 もっと長い間一緒にいるはずだったのに。

 この間次の旅行の話をしていたじゃない。

 あの映画が再上映するから一回観に行こうって、今度の日曜に約束していたじゃない。


 2人で住んでいた1LDK、私だけならワンルームでいいわよ。広すぎるわ!


 猫もいるだろって、じゃあワンじゃなくてニャンだねハハハ!ユウタが生きていたらきっとそう言ってたのに、つまんないわよ!

言ってるはずなのに、どうして何も聞こえないのよ。


 ユウタが死んだの?

 もう会えないの?

 寂しくなるわ。

 遺体を見た瞬間涙が止まらないんだもの。

 寂しいわ、ユウタ。私を1人にしないでよ。


 だからマロンもいるから1人じゃない。って?


 違うわ、私がそばにいて欲しかったのは貴方なのよ。


 ユウタ・・・



 


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