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決勝戦! 新vs未来

 ピピーッ


 ホイッスルの音と共に決勝戦が始まった。それは同時に僕と相川未来の戦いでもある。

 決勝戦最初のサーブは相手チームからであった。

 そしてその相手チーム最初のサーバーは、相川未来だった。

 相川未来がボールを高く上げ、ジャンプする。それはまるでサーブのお手本のようなきれいなフォームだった。不覚にもかっこいいと思ってしまった。

 相川未来がそのきれいなフォームのまま、腕をしならせながらボールを僕らのコートに叩き込んだ。そのきれいなフォームから繰り出されたサーブは誰も反応することができなかった。気づいたときには、相手チームに得点が入っていた。

 相手チームに得点が入ったため、またしても相川未来のサーブである。だが、幸運にも相川未来のサーブはネットに少し当たったことにより、威力が弱まっていたので何とかレシーブを上げることができ、トスも繋がり、仲間がサーブを決めてくれた。

 そしてその後は、どちらのチームも引かない拮抗した戦いが続き、双方一セットづつ取り迎えた最終セット、先にマッチポイントを握ったのは僕たちのチームだった。さらに、この大事な局面でのサーバーは僕である。

 僕はボールを高く上げようとしたその時だった。手の汗でボールが滑ってしまい、サーブを打ちはしたが、ネットにかかってしまったのである。

 集中だと自分に言い聞かせ、自分のポジションについたが、相手チームがサービスエースを決め、今度は相手チームがマッチポイントを握った。

 そして相手チームがサーブを打ち、僕らの仲間がレシーブを上げ、僕の頭上にトスが上がる。完璧なトスだった。僕はスパイクを打つために跳ぼうとしたとき、ちょうど足を少し滑らしてしまい、思うようなスパイクが打てず、相手チームにブロックされてしまった。


 ピピーッ


「ゲームセット!」


 審判の声が会場に広がる。

 そう、僕は負けてしまったのだ。

 相手チームに。

 相川未来に。

 僕は、うつむきながら客席へと戻った。


「お疲れ! ちょーかっこよかった!」


 そう声をかけてくれたのは、莉夜だった。

 僕はその瞬間、我慢していた涙が一気にあふれ出てきた。

 それを見た莉夜は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに僕の手をつかみ、誰もいないところに連れて行ってくれた。

 そして、誰もいない場所に着くと、僕は余計に涙が止まらなくなってしまった。

 それを見た莉夜は、僕に優しく声をかける。


「本当にかっこよかったよ、今日コート上にいた誰よりも輝いて見えたよ」

「でも……負けちゃったら意味ないじゃん」

「そんなことないよ、試合の勝ち負けよりも内容が大事だと思うよ、でも新がそんなに悔しがるのって珍しいよね」

「だって、莉夜にかっこいいところ見せたかった……」


 僕はつい本音を漏らしてしまった。

 莉夜は驚いているようだったが、すぐに一言だけこう言った。


「さっきも言ったけど、もう一回だけ言わせてね、新は今日コート上にいた誰よりもかっこよくて、輝いて見えたよ!」


 それを聞いた僕は、急に安心した。

 なんで僕は相川未来に勝つことばかり考えていたんだろう。莉夜がここまで言ってくれるんだ。相川未来に勝つことばかり考えなくてよかったんだ。

 僕が落ち着くと、僕と莉夜は会場に戻った。

 僕たちが会場に着いたときには、もう表彰式も終わっており、みんな片付けを始めていた。僕らも慌てて片付けに取り掛かった。

 片付けを終え、終礼をして僕と莉夜は帰路についた。

 帰り道、僕らは今日のことを話しながら歩いていた。


「いやあ、今日は楽しかったね! 新はどうだった?」

「うん! 楽しかったよ! でもさっきは本当に情けないとこ見せてごめんね」

「大丈夫だよ! 気にしないで! 新が楽しめたようで何よりだよ」

「ほかの行事も楽しみになってきたよ~」

「だよね! 次は文化祭だったと思うよ! 楽しみだね~」


 僕らがそんなことを話しているうちにシェアハウスに着いた。

 

「ただいま~」


 僕らがシェアハウスの中に入ると食卓にはとても豪勢な料理が並べられていたのだ。


「お! おかえり~」


 シェアハウスの住人はみんな、食べる準備が整っているようだ。

 僕と莉夜は急いで部屋に荷物を置き、食べる準備を整えた。

 みんなが席に着くとりっちゃんが一言こう言った。


「りよっちと新君! お疲れ様~!」


 僕は驚きを隠せなかった。


「え? この豪勢な料理って、僕たちのために作ってくれたんですか?」

「もちろんよ! いっぱいあるから、たくさん食べてね!」

「うん!ありがとうございます!」


 そして僕らは夕食を食べ始めた。

 僕と莉夜はみんなに今日のことをたくさん話した。

 サービスエースを決めたこと。

 仲間がすごいプレーをしたこと。

 決勝戦まで行ったこと。

 僕が試合後に泣いてしまったこと以外はすべて話した。


 みんなの顔を見ていると、みんな自分のことのように喜んだり、笑ったり、悔しそうにしたりしてくれる。僕は、周りの人たちに恵まれてると思った。

 僕の話すことをこんな風に聞いてくれる彼らのことをもっと知りたいと思った。


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