新入生歓迎球技大会開幕!
莉夜さんと、いや、莉夜の誤解が解けてから約1週間が経った。
今日は、僕らの通う夢ヶ崎高校の新入生歓迎球技大会が開催される。
僕は莉夜にかっこいいところを見せるために今までに無いほど張り切っている。だが、先程から莉夜の姿が見当たらないのだ。今日は学年ごとに登校時間が異なっていたので、今朝は莉夜と一緒に家を出た訳では無いのだ。
僕が莉夜を探しながら辺りを見回していると突然後ろから
「わあっ!」
と誰かが驚かそうとしてきたのである。
僕は思わず、
「ひゃいっ!」
と、なんとも情けない声を出してしまった。
後ろを振り返るとそこにいたのは莉夜だった。そして、もう一人、僕が見たくも無い顔の男が一緒にいた。そう、相川未来もいたのである。
「後輩くん、今日はお互い頑張ろうな」
そう声をかけてきたのは、なんと、相川未来の方だった。僕は、やっぱりこの間は、聞き間違えたのかなどと考えたが、すぐにそうでは無いと気づいた。彼は「お互い頑張ろうな」などと言いつつ、僕の事を睨みつけていたのだ。
その顔を見た僕は、無意識に睨み返していたのである。
「新、どうしたの? そんな怖い顔しちゃって」
僕は莉夜の声で、自分の眉間に力が入っていたことに気がついた。
「あ、いや、なんでもないよ。莉夜は、体調悪かったりしない? 大丈夫?」
「うん! 大丈夫! 私は元気もりもりだよー!」
莉夜は、いつにも増して元気があるようだった。僕はそんな莉夜も可愛いなぁと思いながら彼女を眺めていた。だが、莉夜の隣から僕に対して憎悪のような視線を感じる。相川未来は、まだ僕の事を睨みつけていたのである。呆れて、ため息をつこうとした時、ちょうど学校のチャイムが鳴った。
「あ! もう行かなきゃ! 新、じゃあまたあとでね!」
「う、うん!」
そう言うと莉夜と相川未来は、2年生の集まっている所へ向かっていたのだが、相川未来はまたしても去り際に小さな声で一言だけ言ってきた。
「何、莉夜ちゃんの事呼び捨てにしてんだよ」
えぇ、本人から許可もらってるんですけど。
僕は少しの間、呆気にとられていた。
「おい、何ぼーっとしてんだ、早く行くぞ」
「新って、よくぼーっとしてるわよね」
そう言うのは、苺と健だった。
そして、僕は苺と健に連れられ、1年生の集まっている場所へ小走りで向かった。
そして、約30分後、ついに新入生歓迎球技大会の一回戦が始まろうとしていた。ちなみに、新入生歓迎球技大会では、赤組1から赤組8、青組1から青組8に別れて、試合を行う。僕は青組1に振り分けられた。つまり、僕らのチームの第一試合は、今回の新入生歓迎球技大会の第一試合でもあるのだ。
ピピーッ
ホイッスルの音と共に第一試合が始まった。
最初は僕のサーブからだった。
僕はボールを上に投げ、ジャンプし、思いっきり腕を振り切った。僕の打ったサーブは、綺麗に敵のコートの人が居ないところに落ちた。
「おぉ〜!」
会場中のほとんどの人が同じような声を漏らしていた。
すぐに莉夜が見ていたか確認しようと周りを見渡すが、人が多すぎてどこにいるのか全然分からなかった。莉夜にはあとから聞けばいいかと思い、僕は試合を続けた。
そして、約15分後、僕達のチームは相手チームをストレートで下し、2回戦進出を決めた。
ストレートで勝ちはしたが、試合中はコート上に動き回っていたため、喉が渇いた。僕は冷水機の水を飲みに向かった。すると、そこにはまたしても相川未来がいたのだ。僕は鉢合わせたくなかったので、バレないようにすぐに引き返して、苺と健のもとに行った。
苺と健たちは、まだ試合が始まってないらしく、大量の汗をかいて、暑そうにしている僕とは違い、むしろクーラーにあたりすぎて寒そうにしているほどだった。
苺と健は、誰かの応援をしているようだった。彼らの視線の先を見てみるとそこには莉夜がいた。
僕が莉夜に視線を向けた時、ちょうど莉夜がサーブを打とうとしていた。そして、莉夜はボールを投げ、思いっきりボールを叩く、そして同時に胸が揺れる。
すごいな、莉夜の胸、じゃなくてサーブ!
そんな事を考えているとサーブを打ち終えた莉夜がこっちの方に手を振っていた。僕たち三人は、莉夜に手を振り返した。すると彼女は、天使のような笑顔を向けてきた。僕はドキッとしてしまった。
そうこうしてるうちに他のコートの試合が終わり、苺と健もコートへと向かって行った。
その数分後、莉夜たちのチームも試合が終わった。残念ながら、試合には負けてしまったが、莉夜は少し悔しそうな顔をしながらこっちへと向かって来る。
「あぁ、負けちゃったよ〜」
「お疲れ様、でも惜しかったじゃん! 莉夜、すごい活躍してたし、かっこよかったよ!」
「本当? 私、活躍してた?」
「うん! ちょーかっこよかったです!」
「ありがとっ」
莉夜を褒めると、彼女は悔しそうな表情から一変、とても嬉しそうな表情に変わった。
そんな会話をしているうちに僕達のチームも試合が始まる時間になった。
そして、僕らのチームは二回戦も難なく勝利し、僕らはその後も勝ち進んでいき、なんと、決勝まで残ったのである。
だが、決勝戦の相手チームには、相川未来がいるのだった……