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夢月莉夜という少女

「ほら、りよっち」


 花宮梨音が自己紹介をするよう促す。


夢月莉夜(ゆめつきりよ)。夢ヶ崎高校の二年生です」


 夢月莉夜は、僕の目の前に来た時から軽くうつむいたままだ。

 それに対して僕は夢で出会ったはずの少女が目の前にいることにあっけにとられていた。

 何も言わない僕に新城優一は


「新君も自己紹介しなきゃ!」


 と僕の肩を軽くたたいた。


「あ、はい。僕は神橋新。僕も夢ヶ崎高校に通うことになりました。よろしくお願いします」


 すると先ほどまでずっと下を向いていた夢月莉夜は僕の名前を聞いた途端、目を大きく見開いて数秒間僕のことを見つめると、急に涙を流し始めた。

 僕は慌てて声をかけようとしたが、すぐに二階へと戻っていった。


 その日、僕は大家の塩川郷音久からこのシェアハウス内でのルール等を聞き、そのあとみんなで食卓を囲んだ。だがそこに夢月莉夜はいなかった。

 その夜、僕は一人ベランダで考えていた。

 こんなことってある? 夢で会ったはずの少女と現実でも会えるなんて……

 そんなことを考えていると、

 ガラッ

 ベランダのドアが開く音がし、後ろを振り向いてみると

 そこには、夢月莉夜がいたのだ。

 

「新くん……だよね?」

「う、うん。そうだよ。」

 

 すると夢月莉夜はとても嬉しそうに


「よかったぁ!」


 だが僕は一つ疑問に感じたことがある。

 なぜ彼女は僕が神橋新だと知るとこんなに嬉しそうに喜んでいるのか。

 僕と彼女は、会うのは今日が初めてなはずなのに……

 確かに僕は彼女に会ったことがある。会ったことはあるがそれは夢の中での話であって現実の話ではない。

 だが、今このことを聞くべきではないだろうと思い、彼女に別の質問をした。


「今日、初めて会った時、なんで僕の顔を見た途端に泣いてどっか行っちゃったの?」


 すると彼女は、


「そりゃあ、嬉しかったからだよ! だって、新君と夢で……じゃなくて新しい住人が増えたから嬉しかったんだよ!」


 彼女は一瞬、言葉を濁らせた。

 夢で? 僕が彼女の言いかけた言葉にひっかかり、色々考えようとしたが、彼女は間髪入れずに別の話をし始めた。


「新君はなんでここに来たの?」


 間髪入れずに彼女が質問をしてきたので僕は夢のことを聞き返すことができなかった。


「僕の前住んでたところがかなり田舎なところだったから、高校入学を機に上京してきたんだよ」

「そっかぁ。学校、私と同じなんだよね?」

「あ、うん、同じだよ」

「だったら、もしわからないこととか、聞きたいことが会ったらいつでも私に聞いてね! 私の部屋は二階の一番奥の部屋だからね!」

「うん。ありがとう、夢月さん」

「莉夜でいいよ」

「じゃあ、ありがとう、莉夜さん」


 こんな他愛もない話を終えると、彼女は笑顔で部屋へと戻っていった。


「じゃあ、おやすみ! また明日ね!」

 

 そして僕も自分の部屋に戻り、横になった。

 僕は部屋の天井を見ながら、莉夜さんが言いかけた言葉を思い出していた。

 僕と夢で? その言葉の続きが気になったが、考えても仕方ないと思い、眠りについた。

 

 そして翌朝、僕はスマホのアラームの音と共に目が覚めた。

 洗面所に行き、歯を磨き、顔を洗って、学校に行く準備をする。

 そして、すべての準備が終わったら、リビングへと向かう。

 リビングに着くと、そこにはすでにおいしそうな料理と住人のみんなが待っていた。


「神橋君、座って! 座って! 朝ごはん出来てるよー!」


 花宮梨音の明るい声に促されて僕は食卓についた。


「それじゃあ、みんな手を合わせて」


「いただきます」


 僕にとってはこのシェアハウスでの初めての朝ごはんだ。

 そこには、鮭の塩焼き、白米、味噌汁といった和風の食事が並んでいた。

 僕は鮭の塩焼きを口に運ぶ。ただの鮭の塩焼きのはずなのに驚くほど美味しかった。


「この朝ごはんってだれが作ったんですか? とても美味しいです!」


 すると大家の塩川郷音久が


「その朝ごはんはね、莉夜ちゃんが作ってるんだよ~。このシェアハウスでは、毎朝、莉夜ちゃんが作ってるんだよ」


 莉夜さんの方を向くと、笑顔でこちらを見ていた。


「莉夜さん、料理が得意なんですね! 毎朝、こんな美味しい料理が食べられるなんて僕は本当に幸せ者です!」


 莉夜さんは照れながら、


「新君は大げさだな~。でもありがとうね!」


 と、にっこりと笑った。

 朝ごはんを食べ終わり、時計を見るとすでに七時三十分になっていた。僕は、慌てて自分の食器を洗い、カバンを持ち、シェアハウスを出た。


「行ってきます!」


 すると、シェアハウスを出てすぐに後ろから声が聞こえた。


「新君、ちょっと待って。一緒に行こう」


 そこには、少し息を切らした莉夜さんがいた。

 そういえば、莉夜さんも同じ高校だったの忘れてた。

 そして僕らは少し駆け足で学校へと向かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 現在、互いに驚いており、自分だけだろうって感じですが まあ夢で何度も会ってるって言われても相手が困るでしょうからね どんな人間模様替が描かれるのやら
[良い点] 安定に面白くて次も読もうと思った
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