あの日の真実
「みんな、着いたよ~。起きて~」
りっちゃんの声が車の中に響く。
僕たちがキャンプ場に着いたとき、みんなは爆睡していた。もちろん、助手席に座っていた僕は寝かせてもらえなかったのだが。
車を降りた僕たちは、テントを作る班、昼食を作る班に分かれた。
テントを作る班は、僕、塩川さん、苺。
昼食を作る班は、新城さん、りっちゃん、莉夜である。
僕たち、テントを作る班は早速、車からテントを取り出し、テントを作り始めた。
テントを立てる時に使う鉄の棒のようなものが思いのほか地面に刺さりづらく、苦戦したがそれ以外に関しては何の問題もなくテント作りを終えた。
一方その頃、昼食を作る班は、野菜を切ってカレーライスを作っていた。
最近、よくカレーライスを食べてる気がするのは僕だけだろうか……?
両方の班がすべての作業を終え、僕たちは昼食を食べることにした。
「いただきまーす!」
僕たちは、カレーライスを食べ始める。
カレーライスは、何度食べても飽きないな。
ここ最近で一番食べてるはずなのに、全く食べ飽きることがない。
僕たちは、昼食を食べ終わり、川などで遊んでいるうちに辺りはすっかり暗くなってしまっていた。あたりが暗くなっているのを確認したりっちゃんは、ある提案をする。
「今から、肝試ししない?」
「お! いいね! 肝試ししようか!」
塩川さんがりっちゃんの提案にのり、他の人の意見を聞かず、肝試しを行うこととなった。
正直に言うと、こういう感じのやつは得意じゃない。だが、莉夜の前で怖がっているところを見られるわけにはいかない。
そして僕たちは、二人ずつ肝試しを行うことにした。
塩川さんが六本の割り箸くらいのサイズの棒を取り出した。
「それじゃあ、みんな一人一本ずつこの棒を取ってね~。同じ色の棒を引いた人同士がペアになって肝試しを行います」
みんな僕を引いていき、僕の方にも回ってきた。
僕も棒を引く。
僕が引いたのは、赤色の棒だった。
僕は同じ色の棒を引いた人を探す。
苺は青色、塩川さんは緑色、新城さんも緑色、そしてりっちゃんは青色。
ということは……
「新、同じ色だね!」
後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには、莉夜が笑顔で立っていた。
「もしかして、莉夜が同じペア?」
「うん! そうだよ! ちょっと怖いけど頑張ろうね」
そして、僕たちは肝試しを行う準備を始める。
準備が整うと、塩川さんがみんなに道順を教える。
教えるとは言っても、ずっと真っすぐ進んでいくだけらしいけど。
塩川さんが道順を教え終わり、肝試しが始まる。
まずは、塩川さんと新城さんのペアが暗い道を進んでいく。
躊躇せず進んで行く彼らを見て、僕も怖がらずに行こうと決めたのだった。
前のペアが行って五分が経ったら次のペアが肝試しを行うというルールになっている。
塩川さんと新城さんのペアが暗闇に入っていってから五分が経ち、苺とりっちゃんのペアが暗闇に入って行く。
僕たちもあの暗闇に入らないといけないと思うと、少し怖くなってくる。
苺とりっちゃんが暗闇に入って行ってから五分が経ち、僕と莉夜も暗闇へと向かう。
暗闇に入ると、そこには何もないが、少し吹いている風の音が恐怖心を掻き立てる。だが、莉夜の一言でその恐怖心は無くなるのだった。
「ねぇ、手、繋がない?」
「!?」
僕は驚きのあまり、言葉を発するのを忘れ、目を見開くことしかできなかった。
「じゃあ、言い方変えるね。少し怖いから手、繋いでほしい」
僕は手汗を洋服に拭い、莉夜と手を繋いだ。
まさか、肝試しがこんなにも最高なイベントだったとは思いもしなかった。
僕と莉夜は手を繋いだまま、暗闇を進んで行くと、分かれ道があった。
ずっと真っすぐ進むだけと言っていたので恐らく右の方の道に進めばいいのだろう。
「莉夜、右の方の道を進めばいいと思うよ」
莉夜は、にっこりと笑って、僕の手を引きながらこう言った。
「どうせなら、左の方に行ってみよ!」
僕は、この幸せな状況がまだ続くのなら……と思い、僕は莉夜に連れられるがままに左の道へと進んで行った。
そして、左の道に進んでから約五分が経ち、少し先の方が明るくなっていた。僕と莉夜はそのまま明るくなっている方へと向かって行った。
暗闇を抜けると、そこには言葉では説明しきれないほどの絶景が広がっていた。
「莉夜、ここは?」
「私もまさかここにこんな綺麗な夜景が見られる場所があるとは思わなかったよ!」
莉夜は、この絶景が見れると分かっていてここに連れてきたわけではないみたいだ。
今、ここには僕と莉夜の二人しかいない。
今なら、以前から疑問に思っていたことを聞けるかもしれない。
「ねぇ、莉夜。一つ聞きたいことがあるんだけど聞いてもいいかな?」
「うん、いいよ」
「僕と莉夜がシェアハウスで初めて会った日、莉夜は夢で僕と会ったみたいなことを言いかけたよね?」
莉夜は、驚いたような顔をしながらも、軽く頭を縦に振った。
僕は続けて莉夜に問う。
「あれって、どういうことか教えてもらってもいい?」
莉夜は、少し考えた後、僕の質問に答える。
「ありえないと思うかもしれない話だけど、聞いてくれる?」
「うん、もちろん」
そして、莉夜はあの日の真実を話し始めるのだった──