恋バナ【後編】
「みんな僕たちがいない間、何話してたの?」
僕は三人がなんの話をしていたのか気になり三人に聞く。
すると、莉夜が恥ずかしそうにしながら、
「……恋バナ」
と答えた。
ま、まじか……。嫌な予感しかしない。みんなで恋バナをしているということは即ち、僕にも例の質問が振られるのではないだろうか。
そして、その数秒後──僕の予感は的中した。
「それで新は好きな人とかいるの?」
苺はいつも以上に目を輝かせながら、その質問をして来るのだった。
さすがに莉夜がいるところで「僕の好きな人は莉夜です!」なんて言えるわけがない。それはもう告白になっちゃうからな。今はまだその時じゃない。
「えぇ、好きな人? さすがにまだ言えないなぁ」
「お! じゃあ、いるってことよね!」
やってしまった。
これでみんなには僕に好きな人がいるってことがバレてしまった。
「う、うん……。」
「誰なのかは教えてくれそうにもないから、どんな人かだけ教えてくれる?」
「それくらいなら──うん、いいよ」
「やった! それでどんな人なの?」
「優しくて、可愛くて、たまに嫉妬させて来る人……かな」
「ふふっ、ぞっこんじゃないの~。でもたまに嫉妬させられてるんだ?」
「まあね」
よく見てみると、健も目を輝かせながら話を聞いていたのだ。
いや! お前もかよ!
健はこの手の話に無関心だと思っていたんだけどな……。
それでもやっぱり、苺が一番興味ありそうだな。
「それでその子は同級生?」
「いや、一つ上だよ」
莉夜の肩が少しビクッと震えた。
それを見たりっちゃんは一人で声を出さないように我慢しながらも爆笑していた。
「最後にもう一つだけ……いい?」
「まだあるの? まぁ、いいけど」
「なんでその子を好きになったの?」
「なんでっていうか、一目惚れなんだよね」
すると、りっちゃんと苺が騒ぎ出す。
「きゃー、一目惚れだって!」
「いいだろ? 好きになっちゃったんだから」
「うん、いいと思うよ!」
ん? ちょっと待って、なんでりっちゃんまできゃーきゃー騒いでるの? りっちゃんは俺の好きな人知ってるだろ。 まぁ、一目惚れってのは初めて言ったからこうなる……のか?
まぁ、いいや。
「はい、これで僕の恋バナは終わり!」
「えぇ、もう終わり?」
「逆にこれ以上、何を話せと?」
「……好きな子の名前」
「言えるかぁ!」
その後も僕たちは色んな話題の話をした。が、りっちゃんだけは自分の恋バナを話していなかった……。
そして、お菓子が全部なくなるころにはもう、外は暗くなっていた。
「あ、もうこんな時間。私たちはもう帰りますね」
「私が送っていくよ!」
莉夜はそう言うと、苺たちと玄関へと降りて行った。
「新君も一緒に行かないの?」
りっちゃんは僕に一緒に行くよう促す。
僕は慌てて莉夜たちの後を追った。玄関に着いたとき、莉夜たちはまだ靴を履いている最中だった。
「莉夜、外ももう暗いし、僕も一緒に行くよ」
「大丈夫、新はゆっくり休んでて」
「あ、うん」
そう言うと、莉夜は苺たちを送りに出て行ってしまった。
「あーあ、残念」
りっちゃんが慰めてくれるかのように僕の肩を軽くたたく。
「あ! そうだ! りよっちが今いないんだし、私たちで今日の晩御飯つくろっ!」
りっちゃんは意識的か無意識かはわからないが、彼女の提案は僕が先ほどまで感じていた寂しさのようなものを一瞬で吹き飛ばしてくれた。
そして僕たちは、キッチンへと向かった。
「じゃあ、なに作る?」
「んー、そうだなあ、新君は何食べたい?」
「んー、無難にカレーライスかな」
「オッケー! じゃあ、カレーライスにしよ!」
そしてりっちゃんは、キッチンの引き出しからエプロンを二つ取り出した。青色のエプロンを僕に渡した。
「青色のエプロンでいいよね?」
「うん!」
りっちゃんはもう一つのピンク色の花柄のエプロンを着る。
そして僕らは、料理の準備を始めた。
「新君、冷蔵庫からジャガイモと人参、あと玉ねぎ取ってもらえる?」
「オッケーです!」
僕は冷蔵庫を開け、りっちゃんに言われた通りにジャガイモ、人参、玉ねぎを取り出す。
「りっちゃん、野菜持ってきたよ」
「じゃあ、野菜を食べやすい大きさに切り分けてくれる?」
「オッケー!」
僕は、ジャガイモと人参を切り分ける。そして、玉ねぎも切り始めたが、目に染みて涙が出そうだ。
「新君、玉ねぎの汁が目に染みたの?」
「うん……」
「じゃあ、顔洗っといで」
「ありがとうございます」
僕は、顔を洗い終わると、再び料理の続きをし、僕とりっちゃんはカレーライスを作り終えた。
「やったー! 美味しそうにできたね!」
カレーライスを作り終えてから、間もなくして莉夜が帰ってきた。
「ただいまー! 外は土砂降りだったよ~」
僕とりっちゃんが玄関の方に行くと、そこにはびしょ濡れの莉夜がいた。
そして、土砂降りの雨のせいで莉夜の着ている服が透露わになっていたけて、ピンク色のブラがあらわになっていた。
「ちょっ! り、莉夜!」
「新、どうしたのそんなに慌てて」
僕はゆっくりと莉夜の胸元を指さした。
莉夜はブラが透けてしまっていることに気づき、
「きゃっ! 見ちゃダメーーーーー!」
顔を真っ赤にしてお風呂場へと駆け込んでいった。
「新君、ラッキースケベってやつだったね」
りっちゃんが僕の後ろでニヤニヤしながらそう言った。
だがりっちゃんはすぐに話を変えた。
「じゃあ、りよっちがお風呂から出るまでに残りの料理も作っちゃお!」
「他にも何か作るの?」
「もちろん! カレーライスだけだとなんか味気ないからね」
そして僕たちは再びキッチンへと向かった──。
次回はシェアハウスの日常を書きます!
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