表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/13

8話「第2攻略対象?オーツ・ビルゼン」


「着いたぞ」


 王都に入って、私とエルドアが降りた先は小さいながらも立派な作りの宿屋の前だった。


 そこは王都貴族区の南端に位置する場所だった。


 王都はほぼ真円の形をしているのだけど、中央に王城が有り、それを囲む城壁を隔てた先に貴族区はあった。更に貴族区の外側に広がる平民区は壁で分けられており、それぞれの壁の行き来には許可証やら何やらがいるのだ。


 最も範囲が広いのは平民区で、王都の面積の実に6割を占める。貴族区に住んでいるのは血筋が良いとされる貴族達のみだ。ちなみにゼンギル卿の家、つまりエルドアの実家もこの区画にあるらしい。


「おいおい、珍しく馬車で来たと思ったら彼女連れとは、隅に置けないねえ」

「斬るぞお前」


 エルドアが降りた途端そんな声が掛かった。見ると、宿屋の主人らしき青年がからかうようにエルドアを拳で突いていた。

 少しぽっちゃりとした体型に仕立ての良い服、愛想の良い笑顔。金色の髪に緑色の目。典型的なミールディア貴族だ。 


「お初にお目にかかります。クロイツ家のルーチェと申します。どうぞよろしくお願いいたしますね」


 私はそう言って、習った淑女の礼をした。めんどくさいけどそういう事をしないといけないのが貴族の決まりだ。あーめんどくさ。


「っ! く、クロイツ家のお嬢様!? おいお前、例の噂マジだったのか!?」

「おい、お前それは良いからさっさと名乗り返せ。失礼だろうが」

「おっとそうだった。僕は、ビルゼン家のオーツ。商業に手を出している木っ端貴族さ」


 エルドアに言われて、優雅に礼を仕返したそのぽっちゃり君——オーツ・ビルゼンが真面目に名乗ってくれた。

 なるほど、どこかで見た顔だと思ったら……あのメリル・ビルゼンの親族か。


「よろしくお願いしますねオーツ様。メリル様はお元気ですか?」

「僕の事はオーツと呼んでくれって構わないよ。ん? 妹の事かい? 同い年だったかそう言えば、どこかで会ったのかい?」


 メリル・ビルゼン。ゲームに出てくるヒロインの一人で後に私が入学するこの王都にある王立竜魔法学院エンドラスにて、首席争いをする事になる女だ。抜群に良い頭と容量の良さで華麗に立ち回り、何度辛酸を舐めさせられた事か。しかし兄については表舞台には出て来なかったけど……。んーやはりゲームとは違ってきている?


「ええ。メリル様は覚えていないでしょうけど——そりゃあもう()()()()()()()()()

「ふむ、あの引きこもりに知り合いがいるとは珍しい。まあいいや、それでルーチェ姫はなぜまたこんな貴族区の端の端へ?」

「その先は俺が説明する。さっさといつものとこに案内しろ」

「お前に言われるとやる気がなくなるなあ」

「よろしくお願いしますねオーツ様」

「お任せあれ」


 コロコロと表情と声色を変えるオーツに笑いながら私達はその宿屋の中へと案内された。立派なエントランスにピカピカに磨かれた床。質が良く、嫌みにならない程度に装飾の施された調度品類を見ていると、ここのオーナーのセンスが分かる。前世では巨大商社に勤めていたせいで、色んな商品について見る目は結構ある方だ。


 オーツがエントランスの奥にいる従業員らしき者に目配せすると、カウンターの横にある扉を開けてくれた。


 扉の奥は階段になっており、下へと続いていた。

 私達は会話をしながら降りる。


「ルーチェ姫、この先は()()()()()()となります」

「持ち出し無用?」

「ここで見聞きした事は、忘れろって事だ」

「なるほど。良い場所ですね」


 内緒話するにはもってこいの場所だ。

 

第二攻略対象?登場!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 攻略対象=フラグを折らなければならないというのが可哀想w [気になる点] 揺蕩う爺様に早く会いたいんじゃ。 [一言] 色魔王も王道展開になり、こちらも女王ルートにどうしたら行くのか気になっ…
2020/04/23 18:29 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ