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6話「王都へ出発」



「いい? 絶対に変なとこに行っちゃだめよ? エルドア君の側から離れない事。分かった?」

()()()()お母様。では行ってきます!」


 数日後、エルドアから行く準備が整ったと聞いたので、私は王都行きを母に直談判した。

 内緒で行くという手もあったのだけどバレた際のリスクがあまりに高いし、仮に王都行きを止められたとしても、それから内緒で行くプランを実行してもいいので、まずは直談判したのだ。


 その際にはどう出てきても説得させる材料は用意したつもりだったけど、母は、あらあら……うふふとなんだか意味深な笑みを浮かべるだけで、深くは追求せず許可してくれた。


 ちなみに、母が許可してくれたのならそれはイコール父も賛成という事にこのクロイツ家ではなるのである。

 なんだか不服そうだったけど、母が許可を出した以上は従うって感じだった。

 ごめんねお父様。


「この命に代えてもお嬢様はお守りいたします」


 屋敷のエントランスでエルドアが神妙な表情を浮かべ、母にかしずいた。母は大げさねえとか言いつつも、普段家では見せない顔付きでエルドアへと声を掛けた。


「貴方の訓練と普段の態度は見ているし、信頼しているわ。あたしって噂より自分の直感を信じるタイプなの」

「あ、ありがとうございます!」


 褒められて嬉しいのかエルドアの声が少しうわずっている。母リディアへの憧れは未だ健在なようだ。

 ちぇっ、ちょっと面白くないな。


「ただし……ルーチェに傷が一つでも付いたら……分かっているわね?」

「はっ! その際にはこの首、差し出します」

「よろしい。それじゃあ、気を付けていってらっしゃい」


 割と本気で首を差し出しそうなエルドアと私は、無事王都に向かう事になった。私は貴族の娘とバレないように、地味なワンピースのような形状の服を着ていた。エルドアもいつもの麻の服だ。


 屋敷の前止めてあった馬車に乗り込む。エルドアがエスコートしてくれたおかげで難なく乗れたのだけど、なんだかむずかゆい感覚に襲われる。前世の記憶があるせいか、妙にこっぱずかしい。


「ふぅぅ……なあ、俺もしかして早まったか?」


 緊張していたのか、馬車の扉が閉まるとエルドアが深く息を吐き、対面に座る私へとそう声を掛けてきた。


「今更じゃない? 大丈夫大丈夫、ああお母様は言っているけど本気じゃないわ」

「……お前はリディアさんの本性を知らないからそんな事を言えるんだよ……あの目は本気だ」

「そうなの? まあ何とかなるなる」

「はあ……今更嘆いても仕方ないか」


 馬車の窓から外を覗く。


 クロイツ家は王都から馬車で3時間ほどの場所に、小さいながらも領地を持っている。

 本来王都付近の領地は大貴族達の物なのだが、王宮魔術師という特殊な地位ゆえの待遇らしい。


 この辺りについてはゲームではあまり触れられなかったので、父が暇な時にあれこれ聞いたのだ。


 なにせ、情報は命だ。知らない=死に繋がる私はどんな情報が自分の助けになるか分からない。ならば、知れる限りの事は知っておくべきだ。


 窓の外にはのどかな田園風景が広がっている。ゲーム内で何度も見た光景なのに……なぜだろうひどく感動する。


 さらさらと風で揺れる麦畑。汗を拭きながらブドウ畑で作業するお爺さん。

 なだらかな丘で牛や羊がのんびりと草を食み、街道脇の集落では子供達が笑い合って遊んでいる。


 リンゴの木の上から意地悪そうな男の子がこちらを物珍しそうに見つめていた。


「平和を切り抜いたら、きっとこんな絵になるんだろうなあ」

「……そうだな。ここだけを切り抜けば、だが」


 私の独り言にエルドアが答えた。その声には、憂いが込められている。


「言われなくても分かっているわよ。平和なのは王都近郊だけ。そこから外に出れば……」


 この世界は、ゲームと同じで決して平和とは言い難い。このミールディア王国は大陸の北部に位置していた。大陸の北に広がるディール海に面しており、ぐるりとドルディア山脈で囲まれたこの国は、その立地を活かして1000年近くも独立を守り続けた古強国だ。


 この大陸では戦争は絶えない。弱小国は大国に飲まれ、そして膨れ上がった大国は反乱や内乱で再び分裂する。


 この国もそうだ。貴族の腐敗、王族の求心力の低下、魔物や蛮族の跋扈。問題は山積みだ。まあ全部私が叩き壊す予定だけどね……そうしないと死んじゃうし。


「……今の私にはまだ関係ないけど」

「そうだな。そういうのは……俺ら大人の仕事だ。ルーチェは自分の事だけ考えていればいい。」


 エルドアの言う通り今は国の心配よりも明日の我が身だ!


【特に知らなくても問題ない設定やアレコレ】

ルーチェさんのいるこの国は、王都周りは比較的平和ですが、国境付近にいけば行くほどサツバツした感じになっていき、国境を越えると急に戦国時代ばりに切った張ったのブラッディーな世界になっています。

ミールディアが比較的平和なのも地政学的に有利な土地であるからです。国を囲む山脈にはもう絶滅したはずの竜が住んでいると言われ、攻めづらく守りやすいのだとか。



【同じ世界の違う大陸ではこんな事が起きてます!】


なろうで同時連載中の異世界転移ハイファンタジー作品、

【サキュバス村の色魔王 〜煩悩まみれの俺、性欲を魔力へと変える力とスキル【賢者タイム】で無双してたら魔王扱いされたのでちょっと異世界征服してくる〜】

https://ncode.syosetu.com/n1445ge

良ければ是非読んで見てください♪

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