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4話「タフ&リアル」

ジャンル別日間ランキング51位になりました!

応援ありがとうございます!

これからも頑張りますので今後も引き続き応援お願いします!


 それから、エルドアは毎日真面目に私に剣術を初歩から教えてくれた。


「そう。いいぞ。いいか、人ってのは必ず何か行動する前に予兆がある。足の動き、手の動き、呼吸、目線。それを見逃すな。相手が攻撃してくる、と分かりさえすれば——」


 エルドアは器用に喋りながら、私の剣を避けて、


「——避けるも受けるも自在だ」


 ポンと私の頭を木剣ではたいた。

 エルドアは、母と違い教えるのがめちゃくちゃ上手かった。理論だった考えで分かりやすい。この人ひょっとして実は有能では?


 そっか。予兆に気付きさえすれば避けるも受けるも自在か……まるで今の私の為の言葉のようだ。胸に刻んでおこう。


「むー。でも動きながら見るの難しい!」

「ははは、いきなり出来たら俺はお役御免だ。ルーチェは基本の動きは出来ている。ふむ……観察力を上げる訓練を重点的にはじめるか……いや、まずは身体作りか……」


 ブツブツと今後のメニューを考え始めるエルドア。


 しかしどうしてこうなった。そもそも、エルドアを家庭教師にしたのは剣術の腕を上げる為ではない。


 本来のゲームでの流れはこうだ。


 エルドアとの初対面でわざと挑発する。すると、戦闘が開始される。当然勝てないのだけど、予め母から股間を狙えという助言を受けていると、エルドアの股間を強打できるようになる。


 これを行うと、エルドアが泡を吹いて気絶。結果男性機能を失ってしまう。当然、血筋が一つ途絶えた事を知ったゼンギル卿が大激怒し、私を処刑しようとする。


 しかし父の尽力で処刑は無くなり、めでたく王都地下牢獄に投獄される。


 の! はずでしたが!


「参ったなあ……このままじゃ賢者イベント起きないし、攻略対象のライトとも出会えない……」


 これは非常にまずい。右手をもがれた状態でボクシング挑むレベルで不利な状況だ。


「なんだブツブツと」


 訝しげな様子でこちらを見てくるエルドア。相変わらず、安そうな麻の服だが、本人曰く、汚れてもいいし、身体を動かしやすいので機能的なのだそうだ。確かにその通りだった。


「エルドア……先生」

「なんだ急に。別に先生なんざいらん。好きに呼べ」

「じゃあエルちゃん」

「おい。俺への敬意の乱高下についていけんぞ」


 この人、話してみると案外面白い。


 なんとなくもう休憩かなと思い、私は母が用意してくれた器に入った水を飲むと、それをエルドアへと渡した。


「……」


 エルドアが受け取った器と私との間を視線で往復させる。

 あれ、水飲みすぎたかな? 十分に量は残しておいたはずだけど。


「……お前、変な奴だな」


 頭をポリポリと掻いて、エルドアが水を飲んだ。


「失礼な。変じゃありません」

「いや、変だ。貴族の娘とはとても思えない。が、嫌いじゃない」


 そう言ってエルドアが笑った。その笑顔だけは少年みたいで……。


 ああもう! そういうのずるい!


「それで? さっき何を言いかけた」


 庭にあるベンチに座って、汗を拭く。隣に静かに腰掛けたエルドアがそう問いかけてきた。

 この人、無頼漢っぽいけど、案外所作は綺麗だし静かなんだよね。


「あー。えっとエルちゃん……じゃなかったエルドア先生は王都に行った事は?」

「ん? ああ……俺の噂についてか。なんだクロイツ師から聞き出せとでも言われたのか?」


 やれやれといった感じでエルドアがため息をついた。そうじゃないんだけど、まあそこも気になってはいた。

 ちなみに、クロイツ師とは父の事だ。


 父は王宮魔術師なので、卿ではなく師と呼ばれるそうだ。


「違うけど、それもついでに聞く」

「ついでかよ。まあどうせろくでもない噂ばっかだろうが、全部でたらめだ」


 エルドアはため息をついて、空を仰ぐ。その横顔に少しドキッとする。

 いかんいかん、こんなところでドキドキしている場合ではないぞ私。


 このゲーム、(ルーチュ)に限っては恋に走るとろくな事が起きない。


 勿論これはゲームじゃない。私はタフに、リアルに生きるのだ。恋をしている暇はない!

 のだけど……そうのたまう私に、タフさもリアリティも一切なかった。


【特に知らなくても問題ない設定やアレコレ】

ゲームにおけるルーチェのルートは、攻略対象と仲が良くなるほど死亡フラグが増える仕様でした。なので、向こうに惚れさせつつもこちらからは踏み込まないという高度なバランス感覚がないと詰みます。ゲームだと慣れれば真顔でスルーできるイベントでも実際に起きると中々難しいようですね(本文のルーチェさんの反応を見る限り)



【同じ世界の違う大陸ではこんな事が起きてます!】


なろうで同時連載中の異世界転移ハイファンタジー作品、

【サキュバス村の色魔王 〜煩悩まみれの俺、性欲を魔力へと変える力とスキル【賢者タイム】で無双してたら魔王扱いされたのでちょっと異世界征服してくる〜】

https://ncode.syosetu.com/n1445ge

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― 新着の感想 ―
[良い点] 死亡フラグでがんじがらめなところがこの後どうなるかの期待感を持たせている。 [気になる点] 現実はゲームより奇なり。 [一言] 色魔王と出会うイベントがあるということか!
2020/04/21 19:10 退会済み
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