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3話「第1攻略対象?エルドア」


 翌日。

 

「はあ……くそ……なんで俺が剣なんて教えなきゃいけないんだ……」


 庭にて、私の前に死ぬほどやる気無い剣術の家庭教師——エルドア・ゼンギルが木剣で肩を叩きながら、何かを探すようにキョロキョロしていた。


 青い髪をだらしなく伸ばしており、せっかくの整った顔も、やる気のない表情と無精髭のせいで台無しだ。

 確か今19歳ぐらいだったかな? 背は高く、筋肉質ではないが引き締まった身体をしている。

 来ている服はまるで下町の兄ちゃんみたいな麻の服で、とてもじゃないが貴族には見えない。


 彼は、ミールディア王国の古い貴族達、通称『偉大なる谷の12氏族』の一つであるゼンギル家の次男なのだが、とにかく良い噂を一つも聞かない。


 魔法学院もギリギリで卒業し、その後は働きもせず親の金で遊び回り、平民の娘を襲っては父であるゼンギル卿にもみ消しをさせているそうだ。

 唯一出来ると言われている剣術で、家庭教師をさせようとゼンギル卿は努力しているそうだが、どこの貴族も嫌がった。


 そこで、白羽の矢を立ったのが私の父だった。


 王宮魔術師という高い地位にありながら、血筋が『偉大なる谷の12氏族』から遠いせいで父は、ゼンギル卿には逆らえない。


 おそらく父も迷っていたのだろう。しかし私が提案したのでようやく決心がついたみたいだ。


 まあ……これから私が起こす事で、更に父の立場を悪くするのだけど……後々挽回するので今は許して欲しい。

 

 さてと。まずはこのドラ息子を挑発しますか。


「それで、貴方……やる気あるんですか? ないんですか?」

「あ? 有るわけないだろ……俺はこんな事してる場合じゃないんだ……くそ……」

「貴族の子息とは思えない口調ですね。こんな小娘にまで威圧しないと自分を保てないのですか?」


 私の挑発に分かりやすく乗ってくれるエルドア君。

 苛立った様子で、木剣でぱしぱしと肩を叩いている。

 

 あー単純な奴って好き。

 

「あーあー、分かった。よし、今から訓練する。かかってこい」

「良いんですか? 本気でいきますよ」

「調子に乗るなよ」


 剣を構えすらしないエルドアに向けて私は剣を構えた。母に教えてもらった構えをすると、頭の中でパチリとスイッチが入った。

 

 この先幾度となく使う剣術。身体の動かし方も剣の振り方も()()()()()()()


 「っ!」


 私は無言で踏み込んで木剣を大上段から振り下ろした。

 その動きにエルドアも——そして私も驚いた。


 いや、動きは知っているけど実際に動かせるかどうかは別な訳で。

 ゲームだと何度やってもこの時点では上手く身体を動かせなかったのに、なぜかイメージ通りに動けた。


 エルドアが慌てたように木剣を動かしその一撃を受けた。


 カンという軽い音が響く。エルドアはそのまま器用に私の木剣をいなすと、そのまま私の頭を軽く木剣で叩いた。


「……今の踏み込みはまあまあだな」


 ……あれ? この展開は今までなかったぞ?

 ゲームなら、負けイベントでボコボコにされるはずだったんだが……。

 まずい。


「そうか……リディアさんに剣術を教えて貰ってたんだな、お前」


 エルドアの表情が変わった。


「……お母様の事、知っているの?」

「当たり前だろ! 王都の剣士ならみんな知っている! “死閃のリディア”って言えば知らない奴はモグリだ」


 エルドアが急に目をキラキラさせて私の母リディアの事を語り始めた。


「とにかく、槍さばきも凄いんだがなんと言ってもやはり剣だな。美しいとはまさにあの人の為の言葉で、とくにベヒーモス退治の話が——」

「あのお……」


 夢中になって語るエルドアは完全に夢見る乙女の表情を浮かべていた。


 こいつゲームではこんなキャラじゃなかったよ?

 というか……ちょっと待って! これじゃあ、投獄イベントが起きないよ!


「……そっか、そうだな。うん。リディアさんの娘だ、きっと筋が良いんだろう。よし、俺の知る限りを教えてやる!」


 急に表情を引き締めたエルドアが私に向かって笑顔で頷いた。


 私は不覚にも——その表情に少しだけキュンとしてしまったのであった。


【特に知らなくても問題ない設定やアレコレ】

この国では学院を卒業した貴族の子女に社会経験を積ませる為に何かしらの職を経験させるという貴族のしきたりがあります。その中で最もメジャーかつ良くされるのが、同じ貴族階級の子女の家庭教師です。これは、違う貴族との交流や結束を固める為に使われる事も多く、基本的に大貴族同士で家庭教師を送り合う事が多いとか。

ゼンギル家とクロイツ家ではかなり階級差(ゼンギル家の方が遙かに上)があるので、今回は例外中の例外です。

理由は本文にある通りです。




【同じ世界の違う大陸ではこんな事が起きてます!】


なろうで同時連載中の異世界転移ハイファンタジー作品、

【サキュバス村の色魔王 〜煩悩まみれの俺、性欲を魔力へと変える力とスキル【賢者タイム】で無双してたら魔王扱いされたのでちょっと異世界征服してくる〜】

https://ncode.syosetu.com/n1445ge

良ければ是非読んで見てください♪

同時進行なので作中でリンクする可能性も?

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