ー私はとても幸せですー
『』の言葉は外国の言葉です。
ルナはツンと唇を尖らせてクッションを抱きしめた。
本当はわかってる。
こうやって子どもっぽく膨れて困らせるから教えてくれなかったんだって。
でも、お見合いだなんて大事なことちゃんと教えてほしかった。
その裏にどんなものが隠されていてもちゃんと教えてほしかった。
私だってリヒトのママだもの。子どもの将来のことくらい一緒に考えさせてほしかった。
そう思うのはワガママなのかしら。
釣り上げられていたはずの眉がふにゃりと下がる。
チラリと顔をあげた先には無人の執務机。
そこに向かっていたはずのノクトはいつまでも拗ねているルナに呆れて出て行ってしまった。
それもまたルナを悲しい気持ちにさせる。
涙だけは零さないようにクッションに顔を押し付けて浮かんでくる不安な気持ちを打ち消す作業に没頭すした。
どのくらいそうしていたのか不意に甘い香りが広がってつられるように顔をあげると困り顔のノクトが自分を見下ろしていた。
「ルナ、」
「……おこってるのよ。わたし」
「あぁ。悪かった」
何もかもお見通しだとでも言いたそうな瞳に映る顔は酷く情けなくて子どもっぽい。
今回だって本当はノクトは悪くないのに。困らせてるのは自分なのに。
落ちてくる声は柔らかい。抱き寄せられる腕は温かい。向けられる心はルナを優しく包みこんでくれる。
勝手に怒って、勝手に拗ねて、ノクトを困らせているルナにちゃんと向き合ってくれる。
「お前の気持ちを考えずに勝手に進めた。悪かったな」
「……ごめん、なさい。私が、ちゃんとしてないから、言えなかったんでしょ?」
リヒトが寄宿学校に行くと言いだした時も、帰って来た時もわんわん泣いてたくさん困らせた。
セイラとアルバの冷たい視線がグサグサ刺さっても涙は止められなくて。だから、だから、
「そうじゃない。余計な心配をかけたくなかった。俺のワガママだ」
「余計な心配じゃないわ!リヒトは、」
「この話がまとまることはない」
「え?」
「セイラが―――あいつらが、リヒトが誰かのものになるかも知れないとなった時どう動くか見たかった。
ついでに、いつまでもリヒトが自分たちだけを見て甘やかしてもらえると思うなと釘もさしたかった。
でも、お前はどっちのことも心配でたまらなくなるだろう?」
だから、お前の不安そうな顔を見たくない俺の我儘だ。
許しを請うように囁かれた言葉にルナはどうしようもなくなって逞しい胸板に顔を埋めた。
「それでも、教えてほしかった。 私とノクトの大事な子どもたちのことですもの。
心配させてほしい。
貴方があの子たちのパパのように私だってあの子たちのママよ。」
「……悪かった」
「あんまり私を甘やかしちゃダメなんだから」
「それは難しい相談だな。俺はお前を甘やかすのが嫌いじゃない」
「もう……」
『お前という存在が俺の幸福だ』
『私もよ』
「なっ、いつの間に……!?」
「ナイショ。だいたい私が分からない国の言葉でそんなこと言うノクトがズルイの」
「ちっ、」
「えへへ!ねぇ、ノクト。私以外に贈っちゃダメだよ」
この花も、その言葉も。
可愛いわたしたちのおチビちゃんたちにだって。
幼稚な独占欲、そうわかっていても止められないそれを貴方はいつだって笑って受け止めてくれる。
「お前だけだ。愛してる」
熱の籠った瞳と声に促されてルナはそっと目を閉じた。
私はとても幸せです 胸に秘めた愛
(花を贈られるのは好き)
(貴方の心を私に届けてくれるから)
―オマケ―
ジオからニナに連絡が入った。
セイラを無事捕獲したからもうすぐ帰ると。
それを伝えるためにアルバはステラと一緒にノクトの執務室へと向かう。
ついでに拗ねたルナの機嫌をとるのに奮闘している姿を笑ってやろうという下心を秘めて。
ガチャ。
「……」
パタン。
部屋を覗き込んだとたんアルバは無言で素早く扉を閉めた。
「アルバ様……?」
「取り込み中。兄さんの出迎えは俺たちだけでしよう」
「??」
「ついでにしばらく立ち入り禁止の札でも立てとこう。目に毒だ」
不思議そうに目を瞬くステラの手を引きながらアルバは先ほど目にしてしまった光景を脳内から追い出すようにブンブンと首を振った。
このお話をどこに突っ込むか迷ったのですが、あえてココに入れてみました。
本当は21.5話と共にカットしようかと思ったのですが、楽しんで頂けたらなと思って入れてみました!
楽しんで頂けると嬉しいです(*´▽`*)




