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魔法少女、ピンチになる1

「とりあえず話はここ出てからということで……」


 といって納得した人間は別にいなかったので、私は胴体にラブキューミラクルを付けたままサーバールームを探しに行くことにした。流石にドクターシノブは離れてくれたのでやや歩きやすいものの、何故か普通に私の右手を握っている。逆の手はプリンセスキューティが握っていた。

 どこの幼稚園だ。


 ドクターシノブの部下が応援に駆けつけたため、他の魔法少女たちはその誘導に従って地上へと脱出することになった。そのままSジェネラルの息がかかった病院で異常がないか検査をする予定で、データの取り扱いについては細心の注意を払うとドクターシノブが約束していた。

 突然現れた謎の人物ドクターシノブに不審な顔を向けていた魔法少女たちも、プリンセスキューティの指示によってとりあえずは従うことにしたようだ。


「私は貴様こそすぐに病院へ行くべきだと思うがな」

「プリンセスウィッチ先輩様もどこか怪我してるんですか!?!!」

「別に軽傷だし、あと敬称は重ねると日本語としておかしいから気を付けて」


 ドクターシノブが取り出した高カロリービスケットをみんなで分けて食べつつ施設内を歩く。一見スマートなスーツ姿だというのに、ドクターシノブは驚くほど物を隠し持っている。スーツ業界でも活躍できること間違いなしである。


「ちょっとラブキューミラクル、あんたプリンセスウィッチから離れなさいよ」

「すいませんもうちょっとだけ……先輩なんかいい匂いしますね?!」

「汗と換気口と床の匂いだと思うよ」

「おいラブキューミラクル貴様……数々の狼藉、許せん。私が成敗してやる」

「待てお前たち!! 誰の許可を得て……」


 研究所の奥へ進むにつれて、たまに警備員が出てくる。しかし特に必要のない戦闘態勢になっている3人のおかげで順調に制圧が進み、特に苦労することはなかった。途中にある研究室は一応覗いて確認しておく。研究員は大人しくしているように指示し、人数や場所のデータをドクターシノブが部下へと送信していた。


「ここが右翼側にあるサーバールームのようだな」

「ちゃっちゃと壊して外出よう〜あたしお寿司がいいなぁ」

「ゴチになりますプリンセスキューティ先輩!!」

「あたしにも様を付けろやデコスケ後輩」


 私の好きなネタを聞き出そうと健気に見上げてくるラブキューミラクルに適当に答えつつ、サーバールームのドアに手をあてる。大きくて分厚いドアの向こうは、魔法少女たちがいた研究室のように広い空間が広がっているようだ。

 力を込めてドアを開けようとした私をドクターシノブが制する。


「待て、電子ロックの解錠は私がやろう。貴様はそこで少しでも体力を回復しておけ」

「じゃあお言葉に甘えて」

「早くしてよね〜」

「プリンセスウィッチ先輩様って和食派ですか? それとも中華?」

「外野は黙っていろッ!!」


 魔法少女2人からはあしらわれているが、ドクターシノブもそこらの一般人よりは格段に強いはずである。電子機器に対しては自分で作り出すほど詳しいし、さっきは武装した福黒の部下に囚われていたけれど一人にしては中々の反撃をしていたようである。顔も整ってはいるので普通なら女性を数十人も助ければ最低で1ダースほどが恋に落ちそうなものだが、魔法少女相手だとそうもいかないらしかった。


「なんだ、その同情したような目は」

「いえ、頑張ってください」

「何かはわからんがとりあえず変な憐憫はやめろ」


 制御盤の隣に平たい機械を貼り付けて操作しているドクターシノブを見ていると、こめかみをヒクリと動かしながら怒られた。


「まあいい、解錠完了したぞ。ここはプリンセスキューティとラブキューミラクルに任せて、我々は左翼側のサーバールームを……」

「ウィッチ!!」


 プリンセスキューティが叫ぶ。大きな力を感じて、私はラブキューミラクルを抱え込んでドクターシノブの腕を引っ張った。強い力からかろうじて2人を守る。

 なんかさっきと似たようなパターンだな、と一瞬思った。そういう星めぐりの日なのかもしれない。


 しかし、残念ながらこの力は先程とは比べ物にならない。

 大きな力は熱となり、炎となって私たちの周囲を取り巻いていた。






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