魔法少女、覚醒する4
プリンセスキューティの怒りを宥めながら、私たちは一旦コンピューター室へと戻った。
計画書を全て抹消するためである。
「データが本当に全て消去できるかはわからんが、とりあえずここの端末全てとサーバールームは破壊しておくべきだろうな」
「福黒の良心を信じましょう」
当然ではあるけれど、そこには暗号解読に成功したドクターシノブを強襲した部隊が残っていたので、私とプリンセスキューティでちゃちゃっと片付ける。
トップである福黒の降伏を伝えた時点で連携が崩れていた上に、3分の1程度はすでにドクターシノブによって倒されていたため、ほとんど力を使うことなく制圧することができた。
ドクターシノブは流石に抜け目なく、解読作業を自分のリストウォッチを通して行っていたらしい。そのためコンピューターそのものには解読したデータは残っていない。リストウォッチも部隊に取り上げられたものの、ドクターシノブ本人がロックを解除しなければ作動しないオンリーワンな仕様である。そのためおそらく解読後のデータについては取得されていないのではないかということだった。
「我がSジェネラル内部で使っている電子機器は全て独自規格で作ってある。ケーブルすら繋げずに残念だったな!!」
倒れた武装集団の前でフハハハと高笑いしているドクターシノブは置いておいて、とりあえずこの部屋にある全てのコンピューターを破壊することにした。電源を抜いてその辺にあるワーキングチェアを使い、物理的にしっかり潰していく地味な作業だ。
先程まで一緒にいた研究員の男性は侵入してきた部隊に手荒に扱われたらしく、拘束されたまま転がされていた。その意趣返しなのか、私たちにやや協力的な態度になり、サーバールームについても教えてくれた。
「サーバールームは施設の左右にそれぞれ設置されている。かなり頑丈な部屋に置かれているらしいが……君たちであれば問題はなさそうだ」
「こいつらのリーダーが吐いてくれた情報とも同じだし、2箇所あるのは間違いないみたいね」
最後まで抗っていた部隊のリーダーを連れて一旦福黒の元へと戻っていたプリンセスキューティも、研究員情報に頷く。その手に引き摺られているリーダーは、行く前とは違ってブルブル震えて大人しくしていた。何をしたのかはあまり想像したくない。プリンセスキューティは武闘派ではあるものの精神攻撃もズバ抜けて優秀だからである。
頑なに耳を塞いでいる彼の精神は置いておいて、今破壊すべきはデータだ。情報によると双方のサーバールームには少し距離がある。
「二手に分かれて壊しに行こうか」
「名案だな。私とプリンセスウィッチで遠い方のサーバーを破壊する。プリンセスキューティは近い方を破壊したのちここから脱出するがいい」
「は? あたしがヒカリンと行くんだけど? あんたが独りで遠い方行けば?」
「何だと?! プリンセスウィッチは現在暫定的に私の部下でもあるんだぞ!!」
ドクターシノブとプリンセスキューティがいきなりどうてもいいことにこだわりだした。
「私がひとりで遠い方に行くから2人が一緒に近くのやつを片付けたら」
「貴様ァ何を下らないことを!!」
「なぁんで私がこんなのと一緒に行かなきゃ行けないのよッ!!」
言うとどちらからも文句が飛んできそうだから黙っておくけれど、この2人意外に気が合うのではないだろうか。
ここで結論を待っている間にどちらもひとりで破壊できそうな気がするので、2人を置いてとりあえず近い方のサーバールームを探すことにした。
研究員の男性から借りたタブレットに地図を表示させながらドアを開ける。
その瞬間、強い力を感じて咄嗟に防護壁を展開した。




