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元魔法少女、戦う3

「プリンセスウィッチッ!! しっかりしろ!!」


 なんかドクターシノブが叫んでいると思ったら、また制御チップによって意識を途切れさせられていたようだ。大きな飴玉が危うく喉に詰まりそうになっていて慌てる。


 一度咳き込んで大きく息をすると、ドクターシノブが少し離れた場所でホッと息をついていた。その両腕はガッチリとそれぞれ武装した男に確保され、ついでに首元にはナイフも当てられている。さらに本人は頬や額にアザがあり、鼻血の痕もあった。格闘の際に落としたのか眼鏡もない。

 私としては、ドクターシノブの状態の方が心配である。


「何もしてないのに……」

「敵を擁護するつもりはないが、していたぞ」

「流石にあたしもビックリしたわ〜。一瞬落ちて死ぬかと思った」


 私の上に馬乗りになっていたはずのプリンセスキューティが、私を跨いで立つ姿勢に変わっている。その引き攣った顔が向ける先には、長さ5メートル、幅1メートルほどの大きさで床が裂けていた。金属のパネルが歪みコンクリートが見えるその亀裂の向こうで、福黒が汗をかきながらリモコンを握りしめている。

 あんまり覚えていないが、ドクターシノブがあまりにボロ雑巾にされていたのでついカッとなったようだ。


「そういえばあんたキレるといっちばん怖かったわぁ……もう力使い果たしただろうけど、やめてよね〜それこそエネルギー切れで死んじゃうかもよ?」

「流石にお腹空き過ぎてる。飴もう一個欲しい」

「それ高いから一個で我慢して」

「……お、おい! 今度変な真似したらこれで起きなくなるまで痛めつけてやるからな!」

「だーかーらー福黒さんってばそれはあたしの仕事だっつってんでしょ?」


 恐らくは魔法少女の使う能力に耐えられるよう作ったこの空間に亀裂を入れてしまったことは、福黒の精神を少なからず脅かしたようだ。リモコンを太い手で握りしめ、もう一方の手でしっかりと痛みのボリュームを操作するツマミに手を掛けていた。

 なんとか奪いたいと考えていたけれど、現状だと手ごといくしかないかもしれない。それは流石に過剰防衛が過ぎやしないだろうか。


「くっ……福黒高次郎、悪徳政治家らしい汚い手だな!! 私のプリンセスウィッチを傷付けたら許さんぞ、地の果てまでも追いかけて一族郎党根絶やしにしてくれる」

「ドクターシノブのものではないですけどね」

「何を勘違いしてるのか知らんが、魔法少女は引退しようがしまいが政府が管理しているのだ。そしてこれからは更に効率良く使えることになるだろう……君には礼を言うべきかね」

「まさか貴様、あのファイルを復元させるためにわざと……?!」


 ドクターシノブは例の暗号化された計画についてのファイルを復元できたらしい。そしてそれを狙って襲撃されたようだ。迂闊である。

 そして何故、福黒たちはそんな罠を張れたのだろう。


「待ってください、そもそも何故ドクターシノブがそのファイルを解読できると知ってるんですか? 福黒はドクターシノブを知っていたんですか」

「目上の者に対して呼び捨ては感心せんな」

「すいません、流石に2度も痛めつけられると殺意が湧いちゃうので……」


 正直に言うと、福黒がまた顔を引き攣らせる。何でこの状態で敬ってもらえると思ったのだろうか。意外とポジティブ思考なのかもしれない。


「ちょっと! 安い挑発に乗って気軽にそれ使わないでよね!」


 リモコンを使う前にプリンセスキューティに制された福黒は、しばらくこちらを睨んでから鼻を鳴らした。そして気を取り直したようにスーツの襟を正してまた悪どい顔に戻る。


「知っているかだと? 知っているとも。あの忌々しい研究者夫婦の息子だろう。ちょろちょろと逃げ回っていたかと思えば、日本で悪の組織を立ち上げていたとはな。いつまでも親恋しいようで何よりだ」

「研究者夫婦の息子……」


 ドクターシノブを見ると、否定するでもなく福黒を睨みつけている。

 計画のデータを削除し、研究所の危険性を訴えるファイルをドクターシノブに送ったのは彼の両親だったらしい。






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