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元魔法少女、戦う2

「ちょっとー、ヒカリン起きないんですけど〜? まさか殺しちゃったんじゃないですよねえ?」

「死ぬほどのショックではないと説明されていたが、どうかね。私はボタンを押しただけでこの装置を作ったわけではないからな」


 バチバチと両頬を叩かれる感触で意識が戻る。その途端に首に走る激痛と痺れの残る手足に思わず呻いた。


「あっ、よかった〜起きた起きたぁ。大丈夫〜?」


 意識が途切れる前と、体勢が逆転している。

 私は金属のパネルで埋め尽くされた床に横たわっていて、プリンセスキューティが馬乗りになっていた。私の胸倉を掴み、笑いながら頬を抓っている。


「死んじゃったらどうしようかと思ったぁ。顔色悪いよ〜? 飴食べる?」


 プリンセスキューティはまだ痛みで意識がハッキリしていない私の口をこじ開け、勝手に飴を突っ込んだ。エネルギー切れを防ぐために、菓子類は魔法少女の必需品である。甘ったるい砂糖の味と辛いほどのミントフレーバーが、少しずつ頭の回転を助けてくれる。

 この飴玉、やたらと大きいな。効率重視のプリンセスキューティらしいサイズである。


「う……っ」

「動かない方がいいよぉ? またお仕置きされちゃうから」


 飴が喉に詰まらないよう舌で動かしながら、目を動かす。すると近くに悪趣味なスーツを着た足が見えた。私の様子を見に来たのか、福黒がここまで降りてきたようだ。


 その手には小さなリモコンのようなものが握られている。どうやらあれを使って、制御チップを何かしら操作したようだ。

 私の視線を知ってか、福黒は見せびらかすようにそのリモコンを振った。


「私が君たちのような化物相手に何も対策を取らないと思ったのかね。その首に埋め込んだ機械の目的は能力を制御することではない。意識を奪うことによって反抗を防ぐためのものだ」

「……くそやろう……」

「まだそんなことが言えるとは、痛みが足りなかったのかね」

「ぐっ……」


 こちらに見せるように、リモコンにあるツマミを福黒が回す。すると首筋の痛みがより激しくなった。歯を食いしばるのに微妙に飴玉が邪魔をしている。


「ちょっとちょっと!! 福黒さんやめてよー! プリンセスウィッチと遊ぶのはあたしに任せてくれるって約束でしょ!」

「ああ、済まない。態度が反抗的だったんでつい、な」

「もー、早くボリューム下げて! これからがいいとこなんだから!」


 どうせならもう少し痛みが激しくなって能力が暴走したほうが形勢逆転には良かった気がするけれど、プリンセスキューティに阻止されてしまった。さっさとしてと急かされた福黒がボリュームを下げて、強張っていた体の力が抜ける。寝そべりそうになった私を、プリンセスキューティが胸倉を掴むことによって防いでいた。


「もーホント勝手なんだからぁ……ちょっと、しっかりしてよね。これからがいいとこだって言ってるでしょ?」

「ムリ……」

「そうやって諦めるとこ良くないと思うよ〜? ほら、ちゃんと見て。あっちから王子様がやって来るよぉ?」


 私の上体を引き起こしたプリンセスキューティが、ご丁寧に顔をドアの方へと向けてくれた。部屋の端、今いる場所より高い位置にあるドアが開かれる。

 私が入ってきたドアからやってきたのは、武装した灰色の集団だった。


 ドクターシノブの部下じゃない。

 そう気付いた瞬間に動き出そうとして、プリンセスキューティに阻まれる。残る痛みと馬乗りで胸倉を掴むプリンセスキューティの他に、足元は能力で動かないように押さえつけられていた。


 迂闊だった。意識が途切れた途端に、私の力も消えていた。

 彼らを守っていた防護壁が崩れ、そこを狙われたのだろう。いくら有能だからとはいっても、ドクターシノブたちも数十人の魔法少女を守りながら3人で立ち回るのは難しかったようだ。


「随分ボロボロみたいだけど〜、ちゃんと生きてるから安心してね?」


 灰色の武装した人物2人に引きずられるようにして階段を降りてきたのは、あちこちに傷を作ったドクターシノブだった。






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