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元魔法少女は振り返らない  作者: 夏野 夜子
本編

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20/92

爆破事件、連続する5

「結構あっさり見つかりましたね」

「まあ、素早く設置するなら時間も場所も限られるからな」


 関係者入り口からビルの内部へと入り込み、設備関係で重要そうな場所を巡るとちょいちょい爆発物が置いてあった。ダンボールで偽装しているものもあれば、棚の中にそのまま置かれているものもある。探し出して、刺激しないよう触れて大きさを測る。どれも中々の大きさだ。


「そのリストウォッチすごく便利ですね。昔使ってたやつより高感度だし捜索範囲も広いし」

「そうだろう。特殊防衛省が開発したものを私が更に改良させたものだからな」

「危険物探査機、どうやってゲットしたんですか? 政府内部にもスパイが」

「いや、普通に魔法少女が落としたのを回収した」


 めちゃくちゃ高い機械なので、なくすと自腹だと脅されるアイテムのひとつなのに。さすがは悪の秘密結社である。

 周囲の物質の成分を解析し、危険な構成のものを判断する危険物探査機は高性能だったものの、ちょいちょい誤作動なんかもあった。爆発物などは見落とさないために判断基準が緩いので、結局あちこち探し回ることも多かったのである。

 しかも組成物で判断しているためタンパク質系はさらに弱い。凶暴な野良犬と可愛い飼い犬の違いなども判定出来ない。魔法少女として仕事を始めたばかりの頃、施錠された建物内部に冷凍された死体アリと判定されてみんなでビビりながら探した結果、冷凍マグロだったこともあった。凍った魚を囲んでみんなで爆笑したものである。


「分解して調べるとなんだか回りくどい解析をする仕様になっていたので、この私が一から組み上げてしまったがな。そもそも我が社のレーザー技術は群を抜いた有能さで……」

「はい、次」


 ペラペラ喋っているドクターシノブのリストウォッチを勝手に操作し、設計図に爆発物の目印を付けてからさらに進む。今頃はスーパー特売タイムが始まっている頃だろうか。上手く買い物ができているのかかなり心配である。素早くレジに並ぶと先着で次回から使える何でも50円引きシール帳が貰えるので、出来たらそれも貰ってほしいのだけれど。


「一階はこれで全部のようだな」

「思ってたより多かったですね」

「かなり多い。今までとは違う、明らかにビル内部の人間を殺す目的で仕掛けられているようだ」

地下したに行きますか? それとも上階うえから降りますか? 二手に別れてもいいですね」

「別れるのは危険だ。まて、今広域簡易探査を……地下の方が多いようだな」


 別行動が嫌なのは、爆発物にビビッているからなのだろうか。この距離なら離れても多分守ってあげられるのに、不安なのかもしれない。能力があるととっさに身を守ってしまうので今まで命の危険を感じたことはないのだけれど、一般の人は大変だ。


 狭い階段で地下へと降りる。探査機の反応と見取り図を照らし合わせると、この階でも一般人が入れる場所ではなく、ガス管や電力室などに爆発物が設置されているようだ。一階ほど多いわけではないけれど、20メートル四方に最低ひとつは設置されている。すべてを回収しようと思うと、台車が複数台必要になるだろう。


「一階のやつだけでも、ビルを倒壊することが出来そうですけど」

「両隣のビルにまで致命的な損壊を与えることが出来るだろうな。コストの面から考えるとかなり効率が悪い」


 テロ活動をコスト面から考えるあたり、普通と視点が違う。


「搬入するにしてもリスクが高い。5年前から建造物安全法が施行されただろう。施行後に竣工された6階建て以上のビルには、持ち込み物を検査するためのレーザーカメラ設備が義務付けられている。ダミー会社がレーザー関係でかなり儲けたが、おかげで危険物の持ち込みがかなり難しくなったはずだ」

「ダメじゃん」


 悪の組織増加で安全性を上げるために作られた法律なのに、秘密結社の利益を上げてしまっている。

 しかしドクターシノブによると、技術にプライドを持っているのできちんと基準をクリアした良質なレーザカメラを卸しているらしい。悪の秘密結社のくせに、仕事には真面目である。


「危険物の持ち込みが制限されたら、自分の首も絞めることになってませんか?」

「そもそも爆破テロなどかなり時代錯誤な活動といえる。駄々をこねて我が儘を通そうという幼児と同じではないか。そういった先の見えない行動しかできない悪の組織はむしろ潰れたほうがいいだろう。制限されるなら、制限にひっかからない技術を追い求めてこそ真の秘密結社だ」


 よくわからないしどうでもいいけれど、ドクターシノブが障害があるほど燃えるタイプだということはわかった。レーザーに小細工をして既存の武器を持ち込むより、正々堂々とレーザーカメラがあるところを通り抜けられる武器を考えたほうが楽しいのだろう。知恵の輪とか好きそうである。


「この部屋にあるのが最も大きな爆発物のようだな」


 探査機が示したのは、小さな警備室だった。9つほどのモニターが点けられ、デスクの上には食べかけのインスタントラーメンが置かれている。そのデスクの下にあるダンボールの中に、これまでに見つけてきた爆発物の2倍ほどの大きさのものが置かれていた。抱えられるサイズではあるが、重量を考えると一般女性ではおそらく運搬は難しいくらいのものだ。


 よく見る有名企業のロゴが書かれているダンボールの蓋を完全に開けて全容を確かめると、爆発物の上にコードが繋がれた小型の機械が置かれている。小さな時計のようなそれは、ご丁寧にも残り時間をカウントダウンしているようだ。


「今までのはリモコン式のようでしたけど、これだけ時限式ですね」

「残り時間およそ5分か。やはり思考予測マシンはかなりの精度を誇っているな」


 走って逃げないと危険な状況なのにドヤ顔で嬉しがっている辺り、ドクターシノブもまともではない。

 カウントダウンをしている機械は、画面の上側に黒いコードが一本、下側には黄、赤、青、緑の細いコードがそれぞれ接続され、それがクラフト紙で包まれた爆発物へと繋がっているようだ。顔を近づけると、僅かにチッチッと小さな電子音が秒数が減るのに合わせて聞こえていた。


「これって昔の映画とかで見る、どれかを切ると止まるっていうのですかね」

「限りなく怪しいな。そもそもあれは映画向け演出というか、本当に爆発させたいのであればどれを切っても爆発させるようにするだろう。普通は」


 テロリストの普通を語られても。

 机の下からダンボールを引っ張り出して、電灯の下でドクターシノブと爆発物を観察する。


「待て、これは……!!」


 ドクターシノブがカウントダウンをする画面をまじまじと観察した後、いきなり立ち上がって私の腕を引っ張り上げた。意外に力強いその手に引っ張られて私は小さな警備室から連れられ、曲がり角を曲がったところでいきなり抱きしめられた。のしかかられるようにして一緒にしゃがみ込む。


「あれの画面はダミーだ! 爆発するぞ!」






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