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11話

 友達の友達と話すというのは非常に気まずいものがある。まずなれなれしくするという選択肢はないだろう。かといって二人が話しているのを遠い目で眺めているというのもどうだろうか。個人的な意見になるがこの友達の友達というのは普通以上に仲良くなるのが難しい存在だと思っている。


 もちろん例外もある。それは紹介する側、もしくはされる側のコミュニケーション能力の高さだ。ここが高ければおそらく普通よりも簡単に友達というのは成立するだろう。

 しかし、ここが低い場合、うまく紹介できずただただ気まずい空間となる。俺はそう思っている。

 

 人間関係というのはめんどくさいったらありゃしない。


「荒木さん、だよね? 私同じクラスの御手洗だけど」


「あっうん。もちろん知ってるよ」


「陽太から友達ができたって聞いてたんだ。私とも友達になってくれる?」


「ほっ本当に! もちろん。すっごくうれしいよ」


 今、俺は二人の一歩後ろを歩いている。というのも案の定というか、社交的である咲綾の強みを存分に見せられた感じだ。そのためこの状況に、紹介する側である俺の存在は必要ないらしい。これは喜ばしいことなのか、悲しいことなのか、俺にはわからない。


「どうして荒木さんは陽太と友達に?」


「えっと、なんか陽太が私と友達になりたいとか言ってきたから。あははは」


 聞こえてますよ荒木さん。いつ俺がそんなことを言ったのでしょうか? 俺の記憶が正しければあなたが強引に友達という輪の中に引き入れてきたような気がします。


 そもそも友達というのはどうなったら友達なんだ? あなたと私は友達ね、と言ったら友達なんだろうか? だとしたら荒木が俺にやったことはあながち間違いではない? なんだかよくわからなくなってきたぞ。


「へえ、そうなの陽太?」


「んっああ、まあそんな感じ」


 咲綾が振り向いて聞いてくると同時に、荒木のやつビクッとなって青ざめた顔でちらっとこちらを見てきた。しょうがない、ここはまあそういうことにしておいてやろう。

 というか、あいつ一気に生気が抜けたような顔してるけど大丈夫か?


「ふーん、珍しいこともあるもんだね。陽太がそんなことするなんて」


「俺もそろそろ友達を作りたいと思ってさ。そしたら荒木のやつも友達がいないっていうからちょうどいいみたいな」


「ちょっと、荒木さんを陽太と一緒にしたらかわいそうでしょ」


 咲綾はムッとしたような顔でこちらを見てくる。怒った顔も非常にかわいいです。


「いや、それが本当なんだよ」

 

「そっそうなんだよ、御手洗さん。私、陽太以外に友達いなくて、あっ今は御手洗さんも友達になってくれたから二人に増えたよ」


「…そうなんだ」


 そう言うとさっきとは打って変わってどこか暗い表情になるのを見逃さなかった。あくまで俺の勘違いじゃなければ、けっして荒木がかわいそうだと思ったわけじゃないだろう。なんとなくそんな気がした。


「いっつも二人だけどさ、たまにはこの三人で歩いているのも、また新鮮でいいな」


「そうだね、こうやって美少女二人連れてるなんて両手に花だよ」


「自分で言うか。咲綾はまだしも、荒木は中学生…いや小学生にしか見えないんじゃないか?」


「ちょっと、私がそんな子供に見えるっていうの!」


 なぜだか嫌な予感がした俺は空気を変えようと、並んで歩く二人に少し近寄り、あまり言わないようなことを言ってみる。うまく荒木がのっかってきたのは考えがあってのことなのか。いやおそらく何も考えてはいないな。


 自分の何気ない一言が、誰かの些細な助けになっているなんてことはよくあるのかもしれない。自分では気づけないところで誰かが感謝をしてる。もしかしたらそんなことがきっかけで恋愛に発展したりするのかも。なんてな。


「陽太と御手洗さんは幼馴染なんだよね? そんな長い付き合いだと喧嘩とかいっぱいした?」


 自分から話を振ってくるあたり、荒木も少しはこの関係になれたのだろう。見た感じ無理してるようには見えない。


「喧嘩かあ、あんまり覚えてないな」


「私は覚えてるよ。小学生のころ雷が怖いって泣いてる陽太をからかったら、珍しく怒ったなあ」


「へえ、陽太雷怖かったんだ」


「そんなことあったか?」


「あったよ。多分、あの時なんだろうな。陽太が自分を男なんだと意識したのは」


 懐かしそうに思い出を語る咲綾の横顔は、やっぱり可愛くこんな可愛い子が俺のことを考えてくれている、なんてついつい現実なのか不安になってしまう。


「いいなあ。なんかすっごく羨ましい。私には友達との思い出なんかないよ」


 荒木は悲しげに苦笑を漏らす。


「別にこれから作っていけばいいだろ」


「そうだね。陽太も友達になってくれたんだもんね! だから私嬉しいよ。陽太が友達になってくれたの」


 その言葉を聞いた時、咲綾の体が少し震えた。


「…そうやってちょっと顔が良いからって男に取り入ろうとするから友達ができないんじゃない?」


「えっ?みっ御手洗さん?」


「…なんで陽太なの? あなたは元から顔が良いし、もっとしっかり努力すれば友達だってできるでしょ!」


「…咲綾?」


 嫌な勘というのはなぜよく当たるのか。

 最初は聞き間違いかと思ったその言葉を発した後、見たこともない剣幕で荒木に詰め寄る咲綾、一瞬何を見ているのかわからなかった。すぐさま冷静になり彼女に声をかけると一瞬の間の後、やってしまったという顔でこちらを見た。


 




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