レシピの精霊さん笑
お菓子作りって慣れないと難しいですよね。
清々しい朝ですわ。
小鳥もさえずり。朝の光が窓から入り込んできて最高の目覚め。
いつもより早起きして調理場の隅を借りる。
いつもこっそり誰にも言わないでと借りてるから。秘密の共有とは人を親密にするもの料理場の人達とはすっかり仲良しだ。
さてここでひと仕込み。
「はぁ〜」
悲しそうに盛大にため息をつくアリス。
「どうしたんだいアリス様何かお辛いことでも?」
「あら、わたくしったらごめんなさい。嫌なことと言うか無くしたレシピノートの事を思い出して。…今まで書いたレシピは覚えてますがせっかく書き記したノート。戻ってきて欲しいと思うのですが。それを拾った誰かはわたくしのことをレシピの精霊さんと呼びレシピを要求してきますの。」
「ノートを盗った挙句新しいレシピを要求するなんて酷い人が居るんだね。」
「…そうですわね、でもわたくしの作ったレシピが誰かの口に入ることは嬉しいことですわ。…でもずっとレシピを取られていると思ってしまったら悲しくて…。」
「それはそうだよ!そんなやつにはアリス様のお菓子を作る権利なんて無い!そんな図々しいやつもし厨房を借りに来たら追い返すよ!」
「そんな、そこまでしなくても良いんですのよ。その方にも何か事情がお有りになるかもしれませんもの。」
「いいや!それにしても盗作は許せない!」
さすが料理を愛するプロ達で有る。
私にどんなレシピを渡したかを沢山聞いてきて1人の人物にたどり着いたようだ。
「確かマリア様がそんなレシピ使ってたな。」
「あぁ良くそんなにレシピが思いつくねって言ったら彼女レシピの精霊さんが教えてくれるのとか言ってたな。」
「レシピの精霊さんなんて嘘だと思ってたけどまさかホントに精霊さんとやらのレシピを使ってたなんて。まるっきりアリス様の盗作じゃないか!」
「マリア様!まぁそんな!」
「どうしたんだいアリス様!?」
「マリア様と言ったら最近わたくしの婚約者のエドワルド様と仲睦まじく恋人のように、私が何度言ってもエドワルド様から離れてくださいませんし。リアン様オスカー様うちのルークを取り巻きのように周りに置き、わたくし達がいくら注意しようがそれを辞めない、あまり良いご令嬢とは言えない方ですわ。そんな方にレシピを渡していたなんてわたくし…。」
「アリス様もうレシピの精霊さんなんて辞めておしまいなさい。私達も、もうマリア様には厨房を貸さないよ!」
「そんな、それではマリア様がお可哀想ですわ。」
「アリス様はお優しい。でもだからこそ俺達はマリア様に厨房を貸すことは出来ないよ。」
「そんな、皆様わたくし何かのために…。」
ポロポロと泣いてみせた。
調理場の皆とは入学以来の付き合いであのクソ女がレシピノートを拾い使い出すには約2ヶ月。
その位で攻略対象と好感度が上がり出して差し入れを出せるようになる。
その間築かれてきた調理場の皆との絆は深い。
「しかもマリア様は調理場を使うだけ使って片付けもありがとうも言ってくれない。使わせてくださいと勝手に入ってきては使って汚して帰っていく。それに比べてアリス様はいつも調理場を綺麗に使って綺麗にして帰ってくれて俺達と話もしてくれる。俺達はアリス様の味方だよ!」
あらあのバカ女ってばそんな振る舞いをしていたのね。
そう言えばゲーム内では調理場の人なんて出てこなかったし作ってるシーンも顔に粉つけて一生懸命作ってますよってCG出てきたけど、あれ忙しい調理場でやられたらとっても迷惑よね。いい気味だわ。
これでクソ女厨房出禁〜
昨日はリアンとオスカーに効果的アプローチをかけていい感じ効いていたようだわ。
わたしはいつも通りお菓子を作ると調理場を片付けお礼を言い部屋に戻り身支度を整えた。
さて今日は誰にアプローチかけようか?
リアン辺り行っとくか?
そうだ義弟への仕込みもやっとくか!
図書室にやってきた。
テラスに出て仕込みをする。
何度か試したがいい感じ。
おっ!登校してきましたねリアンさん!
リアンが登校してきたのがテラスから見えた。
洗ったハンカチと今朝方作ったクッキー(もちろんクソ女が作った事の無い新作)を持ってリアンの元へと向かった。
「おはようございます。」
「あっ、君は昨日の…。」
「昨日はみっともない姿を見せてしまって申し訳ございませんでした。これ、昨日のハンカチとお詫びに今朝焼いたクッキーです。宜しければ受け取って下さい。」
「あっ、ありがとう。その、大丈夫?」
「大丈夫ですわ。貴方に慰められ元気づけられましたもの。」
はい、この貴方のおかげで元気出たって言う相手を立てるお言葉〜あなたを頼りにしてます感〜
おっリアン嬉しそうですな。ここらでちょっとはにかんどくか!
柔らかに微笑むとリアンは少し顔を赤くする。
「あの君の名前は。」
「あっ、申し遅れました。わたくしアリス・キャリル・リウォンダーと申します。」
淑女の礼を取るとアリス。
それは見惚れる様な所作だった。
「ぼっ、僕はリアン・ノルック。ルクセ教の教皇の息子です。」
「まぁルクセ教の。私も良く礼拝にゆきますわ。だからお顔を見たことがありましたのね。」
「そっ、そうなんだ。あっクッキー美味しそうだね。」
クッキーを取り出し1口食べる。
「…この味。」
おっし!この顔オスカーの間抜け面と一緒だぞ。
「私なんかの手作りで申し訳ありませんが。」
「これは誰に教えて貰ったの?とっても美味しいね。」
「いえ、レシピは私のオリジナルですわ。教わって作ったものではありません。」
「そっそう…。もしかしてレシピの精霊さん?」
「えっ?何故それを?確かにわたくしレシピの精霊さんと呼ばれ顔も知らぬ誰かにレシピを教えておりますが…。まさかノルック様がお菓子作りに使ってくださってましたの?まさか男性の方がお菓子作りをしてるなんて嬉しいですわ。」
「いや、違うよ!知り合いが似た味のお菓子を作ってくるから。」
「まぁ、そうですのね。」
「このお菓子とっても美味しいよ。知り合いの作ってくれたものよりずっと。」
そりゃそうでしょうね、たかが私のレシピを真似ただけのお菓子作り素人と数年間お菓子作りしてオリジナルレシピ作ってる私の腕前ですからね!
「喜んで頂けて嬉しいです。いつも1人で作って1人で食べていましたから。」
悲しそうに微笑むアリスは儚げで守ってあげたいと言う加護欲をそそる。
「あの!良かったらまた食べたいな、リウォンダー様の作ったお菓子。」
「まぁほんとですか?では裏庭の花壇で待ち合わせなんてどうでしょう?時々作ったらお持ちしますわ。」
裏庭の花壇って人は来ないし綺麗だし鍛錬場へはショートカットすれば直ぐだしリアンに差し入れして好感度上げて、そのままオスカーの所いってじゃれ合いつつ好感度上げてって一日でひと手間省けるんだよね。
「もちろん!嬉しいなぁこんなに美味しいお菓子が食べられるなんて。」
「それではまた作りましたら声をかけますね。リアン様…あっ間違えましたわ。失礼、ノルック様。」
顔を赤くしてチラリと恥ずかしそうにリアンを見てみるとリアンも少し赤くなっていた。
赤い顔同士目が合う。
「ううん。リアンで良いよ。その、僕もアリス様って呼んで良いかな?」
「そんな、よろしいんですの?」
「うん。」
「ではリアン様、わたくしのことはアリスと呼び捨てで構いませんわ。」
照れたように微笑みサッと視線をそらしチラリとリアンを見ると顔が真っ赤だった。
「うん、アリス。」
「はい。リアン様。」
真っ赤な顔で微笑みあった。
「そろそろ行かなくては遅れてしまいますわね、わっわたくし先に参りますわ!それではリアン様また!」
それほど遅い時間ではないが照れているのを誤魔化しているかのように小走りでアリスはリアンの元を去っていった。
リアンはその後ろ姿を赤い顔で見つめていた。
しゃっ!試しに名前呼びしてみたらOK貰えましよ!
これ好感度的にかなり上がってるだろ?
頼りになりましたアピールに今までのレシピは私のモノよ作戦。
そして恥じらいながらの微笑み。
見事!守ってあげたい女子になりきったわ!
好感度が目に見えたらかなり数値上がってるでしょ?名前呼びとか好感度かなり高めで入るルートよこの2日でリアンちょろすぎるワロタ。いや、私が凄すぎるのか!さすが私か?
それにしてもあの女ことごとく攻略対象以外見てないわね。
これで厨房も使えなくなるだろうし。
リアンはハーレムから離脱するだろうし。
ざまあ!
でもまだまだこれからだぞクソ女お前の脆いハーレム秒殺してやんよ!
読んで下さりありがとうございます!