第三玩 菩薩変化
そして再会した雪女とスケベ地蔵。だが前の時とは違い、重苦しい雰囲気の中、第三話の始まり始まり・・・
――今までのあらすじ
雪女はゲーム好きで、寂しがり屋の白い服、白い髪の女の子。ついこの前、スケベな顔をしたお地蔵様を発見し、そのお地蔵様の傘帽子や体中に落書きを見て、雪女は可哀想に思い直してあげました。それから約一か月が経った朝。雪女はいつものように外に出て、周りがいないことを確認→それから朝日の下でラジオ体操をする。それが雪女の毎朝の日課でした。
ですが雪女が暖簾を潜って外を出てみれば、足元に何か硬い感触を感じました。下を見て見ると、そこにはしっかりと凍ったおにぎりが足の下に埋まっていました。雪女はそれを拾って空高くぶん投げると、おにぎりが飛んだ方向から大きな叫び声が聞こえました。雪女はびっくりしてその方向に目をやると、つい最近直したお地蔵様がおりましたとさ。
「恩返し・・・これが?」
雪女はジーっと睨みを利かせて、残った最後のおにぎりを指差して言いました。お地蔵様は微動だにせず言いました。確実にお地蔵様の方から発せられる声です。
―いや・・思いついたのがそれだったので・・・
雪女はようやくお地蔵様から目を離し、大きな溜め息を付いて言いました。
「・・・恩返しは別にいい。けどもっと違うのがいい・・・」
―例えば?
雪女はお地蔵様が言った傍から、その場から鎌倉に走って戻ると、一分も経たずに帰ってきました。そして雪女は大きな紙のチラシをお地蔵様に見せて、心躍らせながらこう言いました。
「新作のエロゲ、『私の巨胸に恋してる?』が欲しい。ちなみに明日発売だから」
―金は・・・ないです。
「それじゃあ家政婦」
―この姿だから動けもしません
「・・・・・・それじゃあ・・私とゲーム・・」
お地蔵様は矢継ぎ早に質問してくる雪女に戸惑っていましたが、最後の質問を聞いた途端、嬉しそうな声で答えました。
―それいいね、そうしよう
雪女の目はお地蔵様の答えに、一瞬朝日の光よりも輝きました。ですが妙です。動けもしないのに、どうして自分とゲームが出来るのでしょうか。雪女は喜んだらいいか、疑ったらいいか、首を傾げて困惑している内に、お地蔵様が唐突にこう言いました。
―ちょっと僕から離れて。
「?」
―そんなに時間掛かんないから大丈夫。
「・・うん」
雪女はこれ以上考えても仕方がないので、一先ずお地蔵様から離れることにしました。雪女はどこまでは離れたらいいのか少しだけ考え、とりあえず鎌倉の入り口まで離れて、ひょっこり顔を出すように、お地蔵様を眺めることにしました。お地蔵様は雪女、または他の生き物が十分に離れたことを確認すると、張り切った声で叫びました。
―では参ります。『菩薩変化』!
―ボン
と、お地蔵様が叫んだ途端、お地蔵様の下から煙のような灰色の蒸気が一気に吹き荒れたかと思えば、お地蔵様から半径一メートル付近が全く見えなくなりました。雪女は今の状況に「お」と小さく驚き、自分の目を守るように瞼を閉じました。
「こほっこほっ」
雪女は自分の方までやってきた煙に中てられ、口を押さえて咽びました。それから三十秒くらいでしょうか。煙はすっかり霧散して、元の景色に戻っていました。雪女の咳も自然と治まり、お地蔵様の方に向き直すと、お地蔵様の方向から声が聴こえました。
―これがお地蔵様の本当の姿!
「・・・本当の・・すがた?」
雪女は目を凝らしてよく見ると、目の前に真っ白な地面の上を仁王立ちしている人間が現れました。全裸で傘帽子を頭に被り、赤いマフラーを首に巻きつけた姿。その風貌はまさしく変態そのものでした。雪女は思わず言葉を失いました。
ツインテールの雪女が見れるのは外出する時ですので、しばしお待ちを・・・もし自分の家の地蔵が喋ったらどう思うでしょう。私だったら何を話すでしょうか・・・やっぱり「おい、デュエルしろよ」ですかね・・・次回、雪女と地蔵(変態)の不思議な生活が始まる・・・・