第十五玩 猛渤草(もうほつそう)をさがして
雪女に罹った病、『冬風邪XX』。舞はそれを知っていて、しかもその特効薬である『猛渤草』まで知っているのです。エロオタは雪女を助けるため立ち上がるのでした。
雪紀は苦しそうに、舞の膝の上に包まっています。そんな中【無意加舞】は【エロオタ】に解るように、簡潔に話し始めました。
「雪女さん体にはある変化が訪れています」
「変化・・?」
エロオタも息を飲んで舞の話に聞き入っています。
「成長です。妖怪はまず形を変えることはありません。己の気に入った形に保ったまま、ずっと生き続けるのです。ですが、ある少数の妖怪は「イメチェンしたい!」ということで、己の体に「変われ!変われ!変われー!」という執念を送り続けることにより、ある周期が来ると、気に入った形へと変わることができるのです」
エロオタは舞の話を聞いた後、少し考えて言いました。
「・・それじゃあ、雪紀ちゃんも変わりたいっていう気持ちがあったっていうこと?」
「はい。そうでなければ【冬風邪XX】は起きないはずです」
「ゴホッゴホッ!」
「雪紀ちゃん!」
二人が話している間にも、雪紀の症状は少しずつ大きくなっていきます。焦るエロオタに対して、舞は冷静さを保ったまま話を進めました。
「冬風邪XXは三日目が一番痛くて、苦しいと聞きます。猛渤草は痛みや幻覚を抑える効果があり、冬風邪XXの特効薬として、よく煎じて飲まれるのだそうです」
「舞さん。そのなんとか草って、どこに生えてるか知ってる?」
エロオタは早速赤いマフラーを首にかけて、いつでも外に出ることができる服(ノースリーブ&(アンド)ジーパン)で待機しました。舞も前もって下調べしていたので、すぐにエロオタにそのことを伝えました。
「案内役は外で待機しています。カラスの【ジョイー様】です。彼が全てを教えてくれるでしょう」
舞の話を聞いたエロオタは、玄関の前でピタリと止まりました。カラス。鳥類の烏なのか?ってことは、言葉が通じるのだろうか?エロオタの思考は一直線に進んでいき、最終的に舞にこう尋ねました。
「カラスって喋れるの?言葉」
舞はにっこりと微笑んで言いました。
「はい、バリバリと。ささっ、急いで急いで!」
「・・・はあ・・」
―ザァ・・・
エロオタは舞の言葉を半信半疑の気持ちで受け取ると、出入り口の暖簾に手をかけました。そしてエロオタは勢いよく外に飛び出して行きました。外に出れば極寒の雪山。凍てつく寒さの中、エロオタはその寒さをものともせず、一歩また一歩進んで行きました。
舞はエロオタの足音が消えて行くのを確かめると、ホッと胸を撫でおろしました。そしてふと雪紀を覗くと、雪紀は今も尚大きな咳を何度も繰り返して苦しんでいます。そんな雪紀を見た舞の体は、スゥっと液体が空気へ『昇華』されるように消えていき、そこに残ったのは雪紀を抱える一人の少女でした。雪紀と同じ大きさの少女。少女は雪紀を見て不敵に笑ってこう言いました。
「百年ぶりに会えたね・・・雪紀ちゃん」
【朝倉柚子乃】。死んだはずの少女は老いることもなく、こうして雪紀の元に現れたのでした。
その頃、エロオタは・・・
「案内役って誰だよ!」
約一キロ歩いた道は今も変わることなく、足が半分埋もれるくらいの雪の深さを保ったまま、その先も右も左も変わることない白面の雪景色を見せつけていました。これが雪山。『雪降る降る山』の凄さであり、一キロ歩いた程度では全く景色が変わりません。エロオタは一向に現れない案内役に苛立ちを覚えながら、止まることなく前進するのでした。
その時・・・
―おーい!
「・・・?」
エロオタの背後からとても小さな声が聴こえました。エロオタはまさかと思い、前進するのを一旦止めて、声がこちらに近づいてくるのを待つことにしました。
―おいいいーー!!!
「あ、カラスだ」
声は猛スピードでエロオタのすぐ後ろまで追いつきました。荒い息を漏らしながら、エロオタの目の前で羽をばたつかせて飛ぶ鳥。声の主はまさに全身真っ黒で、嘴や足まで真っ黒の『カラス』でした。エロオタは舞が言った通り、人の言葉を話せるカラスだったので、ホッとひと安心しました。
―早すぎなんだよ!歩くの!もっとゆっくり歩いてれば、俺様に気づくだろうがあー!
ぎゃあぎゃあーとカラスは、エロオタに向かって怒号を飛ばしました。そして少し落ち着くと、自己紹介を始めました。
―俺様はジョイー様だ。敬意を払えよ。
ジョイーは自信満々(じしんまんまん)な顔で、エロオタに言いました。が、エロオタはそんなジョイーの話を聞くことなく、踵を返して前進を始めました。
―って聞けよ!
「どこだ?なんとか草」
ジョイーは自分の話を聞かない相手が一番嫌いです。そしてその相手が漸く自分に質問してきたので、ジョイーは笑いながら答えました。
―残念だったな。お前が目指すその方角には草はねえよ。ここから南西だ。
笑いながら言い終えたジョイーを見たエロオタは、ジョイーの首根っこを掴むと、怒りの形相で言いました。
「早く言ってよぉお!」
―ぎゃああ(涙)!?!?
ジョイーはエロオタの顔に涙目で絶叫しました。エロオタはムスッとした顔のまま、ジョイーの言った南西の方角に向き直って、歩を進めるのでした。
そして雪紀の鎌倉では、柚子乃は苦しむ雪紀の頭を撫でていました。愛らしいものを見るような目で言いました。
「よしよーし。あのお兄さんが助けてくれるよぉ。・・・だ・か・ら・安心して柚子乃と一緒に遊ぼうね?」
柚子乃の顔は笑っているようで、笑ってはいません。雪紀は咳に苦しみながらも、今自分が膝枕している相手が柚子乃だということは知る由もありません。
絵はまだ描けてません。すみません。書きたいのが多くて多くて、怠けてます。とりあえず『舞』と『柚子乃』と『ジョイー』の絵は描きたいです。この話はまだまだ続きます。でも次の次には終わるかもしれません。少し長くて、とても濃厚な雪女と地蔵のお話。ここから話は新たなステージへ向かいます。では次回。




