第十三玩 ドキドキエ〇チな始まりゲーム
※注意。サブタイトルを読んだ方、これは十八禁のお話ではありません。雪女と地蔵がゲームをする健全なお話です。雪紀はまた昔の柚子乃との思い出を花咲かせます。
「よし、寝てるな・・・」
「スピー・・・」
現在丑三つ時の午前二時頃。【雪紀】にとって今日という日は、睡眠を摂るための大切な日なのです。雪紀は待ちに待った新作ゲームのため、朝六時から七日後の深夜三時までやり込むのですが、水曜日のこの日にずっと溜め込んでいた睡眠時間を昨日の十時から丸々一日使うのです。
雪紀が布団の中で眠っているのを確認した【エロオタ】は、物音立てずに自分の布団を畳んで奥に押し込むと、その場所がちょうど雪紀と二人でゲームをしているスペースの二分の一を確保しました。
「差し足、抜き足、忍び足・・・っと」
エロオタは雪紀を慎重になって跨いで、ゲームソフト専用の六段棚まで移動しました。雪紀はその棚を『良ゲー』・『クソゲー』・『良エロゲー』・『クソエロゲー』・『期待作ゲー』・『貸してるゲー』の六段に分けて置いていました。『貸してるゲー』というのは、雪紀をゲーム好きに導いた、唯一人の友達・【朝倉柚子乃】に貸しているゲームの事です。
エロオタは真っ先に三段目の『良エロゲー』の方に食い入ると、頭の中に残っているあるあのゲームを探しました。そして見つけました。最初雪紀に見せられた時からずっと気になっていたゲームは、確かにその棚にあったのです。
「『異性の免疫なし!大ハーレム計画始動!~あなたの○○○に乗せて~』・・・これだ!」
エロオタは心の中で歓喜しながら、ソーっとそのゲームの方へ手を伸ばそうとしました。
すると。
「んん・・」
―ドキン!
エロオタは恐ろしい形相でバッと後ろを振り返ると、雪紀はウトウトと起き上がりました。そして「ん~」と力いっぱい背伸びをすると、再び睡魔に導かれるようにゆっくりと眠りに就いたのでした。この間エロオタはただじっと息を止めていました。
「・・・はあ・・よかった」
エロオタは言葉と共に、顔からドッと汗が湧き上がりました。ですがエロオタは「ボーっとしている暇などない!」と心の中で自分を叱ると、再びゲームの方に向き直りました。
このゲームは何としても雪紀が寝ている間にやりたい!エロゲーを女の子とやるのはどうしても気が引けるので、今この時間から一時間から二時間くらいの間でいっぱい楽しみたい!今のエロオタの心はその気持ちでいっぱいでありました。
「・・・大丈夫だな」
エロオタはもう一度眠り姫・雪紀を確認すると、早速イヤホンをゲームに取り付け、ゲームの電源を入れ、ゲームソフト『異性の免疫なし!大ハーレム計画始動!~あなたの○○○に乗せて~』を慎重に挿入し、部屋の電灯ではなく人一人が入る程度の懐中電灯を自分に向け、イヤホンを両耳に付け、いよいよ準備万端です。
「よぉし!始めるぞ!(小声)」
そしてエロオタは無事ゲームを始めることが出来たのでした。
・・・
このゲームはハーレム作りから始まり、十人の女性と結ばれ終了かと思いきや、まさかの最後の方でその中の一人を選んで、その一人と結ばれて終わるのです。エロオタはポニーテールで眼鏡の文学系ヒロインを選び、漸く攻略対象と結ばれエッチな画像が来るかと思いました。
ですが・・・
「何で・・全部モザイクなんだ?・・・これエロゲーだよな・・・バグったか?」
エロオタは突然の非常事態に困惑する中、後ろからニョッと左肩に乗るようにツインテールの顔が飛び出してきたのです。そしてツインテールガールこと雪紀は初めにこう言いました。
「これ、劣化ゲー」
「YUKICHAN(思わず英語で)!?・・・れっか・・・て、ええ!!!!???」
絶叫するエロオタに対し、雪紀は全くのノーリアクションのまま解説を始めたのでした。
「本来F・リバー絵師が担当するはずだったけど、給料の未払いが理由で逃亡。このゲームは、エロ画像以外ではとても評価が高かった。このゲームを作った『トロットロッコ・ムーブメント(略してトロムー)』という会社は、長い間エロゲー界の頂点に立っていた。そして十作目であるエロゲー『異性の免疫なし!大ハーレム計画始動!~あなたの○○○に乗せて~』を企画し、無事完成するだろうと思って高を括ってからの絵師の逃亡。焦ったトロムーはすぐさま素人に絵を描かせ、モザイクを掛けることで、プロの絵と見分けがつかないように誤魔化した。そしてそのまま売り出した。人気会社のゲームは多くのファンが買った後、一日も立たず評価がガタ落ち。結果、エロゲー界の頂点であるにもかかわらず、良ゲーになり損ねたゲームとして歴史に名を遺した・・少なくとも雪紀の歴史に・・・」
「トロムーの会社は?」
「その後、社員が逃げるように会社を去っていき、一年後に倒産した」
淡々(たんたん)と話し終えた雪紀は、無言でゲーム画面を見つめて息を飲みました。エロオタは初めて見る哀切の顔に、恐る恐るこう訊きました。
「・・・終わった?」
「うん。解説終了」
雪紀はこのゲームを眺めていく内に、ある昔話を思い出しました。
・・・・・・
・・・
・・
昔々ある時。雪紀が鎌倉に住み始めて随分経った頃、ツインテールを教えてもらった少し後のお話。
「お姉ちゃん」
朝倉柚子乃。その頃、知り合ったばっかりだった少女はニコニコ笑って雪紀の所に時々やってきました。柚子乃の服は色んな着物を継ぎ接ぎして作ったような、色が暗い朱色で、柚子乃がいつも着てくる服です。
「?・・何しに来た?」
まだ少し柚子乃に馴染めない雪紀は、怪訝な目で柚子乃の方に振り返りました。柚子乃は服に隠してあったゲームソフトを取り出してこう言いました。
「お兄ちゃんが夜やってるゲームやろ?私、一緒に遊びたかったのにお兄ちゃん遊んでくれないだもん。だ・か・ら・遊ぼ?」
そのゲームはタイトルの『ド〇〇っと〇○て?』から察するに勿論エロゲー。雪紀は目をまん丸くして驚くと、指差して言いました。
「・・・それ・・・エロゲー・・・」
「エロゲえ?・・何それ?」
ですが無知の柚子乃にとって、『エロ』を知る年ではないと雪紀はすぐに察しました。とりあえず雪紀はその危ないゲームを柚子乃から取り上げようとしたのですが、柚子乃は瞬時にゲームを元の懐へ隠しました。
「・・・えっと」
「いいから遊ぼう!」
「ちょっと」
もちろん六歳くらいの柚子乃には、そのゲームの内容はさっぱり理解できないでしょう。ですが頑なにゲームをやりたがる柚子乃に、遂に雪紀は折れました。そしてゲームをやることになったのですが・・
「あれ?テレビは?」
「てれび?」
雪紀はまだ人間の世界を知らなかったのです。柚子乃は頑張って木の棒を使って、地面の雪で書いて教えてみたのですが、雪紀は「???・・・?」という反応。雪紀は腕組みのポーズのまま暫く考えると、ふと何かを思いついたように森の方に消えて行きました。
「お姉ちゃん?」
・・・
それから雪紀は五分程度経って戻ってくると、ボロボロの黒い何かを引きづってやって来ました。柚子乃はそれを見て「はっ」と驚いて叫びました。
「テレビだ!・・ボロボロの!」
「これか・・・直してみる」
それはブラウン管の大きな箱のような物体。それこそ人間が森の方に捨てていったテレビだったのです。雪紀はしゃがんでボロボロのテレビをこつこつ叩いて言いました。
「え?直せるの!?」
「これの作り方の本拾った」
雪紀の棲む『雪降る(ふる)降る(ふる)山』では、人間の不法投棄の産物と成り果てていました。ですがそのお蔭かどうか、テレビがタダで付いてきたことに変わりはありません。
※でも不法投棄は断固ダメなので、投棄するなら原料にまで分解してから、その原料に適した場所に戻そう。じゃないと雪紀の怒りで凄いことになるよ?
雪紀が器用に道具を使ってテレビを直し始めてから五分経つと、無事テレビは復活しました。
「おー、凄い凄い!」
「ちょっと待って」
雪紀はテレビの電源を入れ、道端に落ちてあったリモコンに電池を付けてボタンを押すと、無事テレビ画面が映ったのでした。呆気にとられた柚子乃は思わず言葉を零しました。
「お姉ちゃんっていったい何者?」
「・・・通りすがりの雪女だ。覚えておけ」
雪紀は某仮面ラ〇ダーのポーズを取って言いました。雪紀は本で読んだことをしっかりと頭に吸収し、更には少しやり続ければしっかりと体が覚えることが出来る才能があるのです。雪紀の才能に希望を感じた柚子乃は、矢継ぎ早にこう言いました。
「そうだ!ゲームを入れる箱は?」
そう。柚子乃の言う通り、このゲームは『PS999』であり、教科書三冊分の大きさのゲーム本体が必要なのです。雪紀はそれを聞くや否や、すぐさま冷蔵庫を往復し、その中にあるものを取り出し持ってきました。
「それならこれ」
「・・・あ!」
「もう直してある」
雪紀の手には、まさに新品同様のPS999がそこにありました。雪紀は少しだけ勝ち誇ったように言った時、柚子乃は嬉しさのあまり雪紀に抱き着いたのです。
「!!」
「やった!これで遊べるね!」
「・・うん」
雪紀は真っ赤になりました。ここまで人間と触れ合うことになるなんて、生まれて初めての経験でした。そして初めてのハグに雪紀の心臓のドキドキが止まりません。雪紀の心は嬉しさと恥ずかしさでいっぱいになりました。暫くすると、柚子乃は笑顔で言いました。
「よし!遊ぼ?」
「・・・え、あ、うん」
男の子のエロゲーを女子二人でやる。その行為がセーフなのかアウトなのかは解りません。ですがここまで来たら引けないと覚悟を決めた雪紀は、頑張ってエロから柚子乃を守ろうと決意したのでした。
・・・
それから一時間たった時、あのモザイクが現れた頃・・・
「何してる絵?」
「・・・ナンダロウネ(助かった・・・)」
ある意味クソゲーに助けられた雪紀なのでした。漢字もまだ習っていない柚子乃に変わって、雪紀は上手く誤魔化しながらどんどん進んでいき、柚子乃を純粋のままゲームを無事クリアすることが出来たのでした。
そう。それこそ雪紀がゲームを集めることになったきっかけ。エロオタは優しい顔に変わった雪紀を不思議そうに眺めて言いました。
「雪紀ちゃん・・・何しんみりしちゃってるの?」
「・・・いや・・・改めて思い出して、自分があんなに必死になってあの子を嘘ついてたんだなあって・・・・」
「・・・そう・・・(何のは話だろ。あの子って誰だろ)」
エロオタにとってはまだ謎が多い柚子乃と雪紀の思い出。楽しかったり、悲しかったり、いろんなことが入り混じったりして、雪紀は今も元気にゲームしています。
でも少しだけ違うことがありました。
「・・・よし、今度こそ」
今傍にいるのが、
「・・・あれ、やっぱりモザイクか・・・」
彼であること。
「・・・」
柚子乃と比べれば、もちろん柚子乃と一緒の方が断然楽しい。
「・・このゲームは一つだけちゃんとしたエロ画像がある」
否・・それは・・・・
「え、まじ?」
比べるものではありません。
「ゲーム本体に氷三つ淹れたコップを置いて、○ボタンと△ボタンを交互に押して?」
これはこれで、
「おお!これが・・・・凄い・・綺麗なエロ画像・・・」
「フフ・・」
楽しいのだから・・・
今度はエロオタに昔のお話を話しませんでした。その思い出は雪紀と柚子乃だけの秘密の思い出なのです。そして今の雪紀はエロゲーを難なくこなし、どんなエロい画像やシーンも雪紀にとってはなんてことはありません・・・少しはあります。エロオタはエロゲーから一体何を学ぶのか。そして柚子乃はどうなったのか。謎はまだまだありそうです。次回に続く。後絵も後程描くかもしれません。




