第一玩 雪降る降る山
雪女とお地蔵様のゲーム三昧の幕開け・・・
昔々、年がら年中雪が降り続けている山がありました。名は『邪蟇塗山』。何時から降り続けたのか、もう覚えている人はいません。雪は止むことなく降り続け、気づいた時にはもう、どこまでが地面でどこまでが雪なのかも解らなくなっていました。そんな邪蟇塗山の麓にある洞穴のすぐ傍に、ちょこんと小さな『鎌倉』と呼ばれる、雪で作られたまあるいお家がありました。その鎌倉の中には雪女が住んでおりました。彼女はいつ生まれ、何時自我が生まれたのか。雪のように白いガサガサとした髪を二つに分け、白くビリビリに破れたワンピースを着た、不機嫌そうな二重の八才くらいの女の子。彼女がこの物語のヒロイン。名は村人から【雪女】と呼ばれています。
「もぐもぐもぐ」
雪女は数百年も前から、村人達に忌み嫌われており、洞穴付近には誰一人通る者はおりませんでした。雪女は蕎麦汁せんべいをバリバリと食べながら、今日発売の新作『野良猫クエスト』というゲームを、テレビに繋いで遊んでおりました。どうやってゲームを買ったかというと、雪女は顔を見えないようにマスク、髪がバレないように雨合羽を着用して買いに行ったのです。店はここから十キロ歩いた山の麓付近にある、小さなゲーム屋『神ノメ組』です。
――今から一時間前の朝一番。雪女は朝六時に起きて、朝ご飯も食べずに家を出発しました。大好きなゲームを買うために・・・
そして念願叶って買うことが出来たゲームを片手に、ウキウキ気分で自宅目指して歩いていました。雪女は感情を表に出すことはなく、いつも不機嫌な顔で喜んでいるのか、それとも怒っているのか、他人から見てもよく分かりません。
帰路の途中のことでした。邪蟇塗山の山頂が見えるくらいの距離で、お地蔵様の団体が道の左右にズラリと並んでおりました。横十体に並べられたお地蔵様は、一人一人少しだけ顔の表情が違っていました。
「・・・」
普通なら『地蔵道』と呼ばれるその道を通り過ぎる筈でした。ですが、雪女はある一体のお地蔵様を見つけました。そのお地蔵様の顔は、どこかスケベな顔に見えたのです。そして雪女はスケベな顔をしたお地蔵様に気が付きました。
その地蔵の顔には落書きされた跡や、他のお地蔵様の頭に掛けてあったと思われる傘帽子が、スケベの方にはビリビリに引き裂かれた状態で地面に転がっていました。そんな状態のお地蔵様を見た雪女は、心底可哀想に想い、スケベなお地蔵様を拾うと、自分のお家に持って帰ることにしました。
「・・・」
そして今。ゲームに没頭している雪女ですが、時折地蔵を見ては落書きの部分を消し、またゲームをしては、今度はスケベ地蔵のために傘帽子を作りました。帽子を作るのは初めてでしたが、偶然道端に落ちていたゲーム雑誌にあった『傘帽子の作り方』を見ながら、なんとか作り上げることが出来ました。
――地蔵を直し始めて三週間後。ようやく傘帽子が出来上がり、落書きは全て消し終わっていました。スケベ地蔵を直すために頑張った結果、雪女の手の指は絆創膏だらけになっていました。一週間はまともに連打系のゲームも出来なくなってしまいましたが、雪女の顔はどことなく、やりきったような顔に見えました。
そしてスケベ地蔵様は、他の地蔵様よりもピカピカになりました。雪女はそんなお地蔵様の頭上に不格好な傘帽子を被せて、元の地蔵道に返しました。その後雪女は鎌倉でゆっくり休んで、一週間後にようやく大好きなゲームに没頭することができるようになりました。
その後、一週間で新作ゲームを攻略しました。雪女は攻略祝いに、三キロ先のコンビニで買った色んなお菓子やジュースを飲んで、そのまま夜九時にぐっすり眠りました。
そして深夜零時を過ぎた頃、鎌倉の前に何者かが立っていました。身長百八十は超えるでしょうか。その者は低い声でこう言いました。
「こんばんは・・・寝ていますか?・・・・・寝ていますねえ・・」
男のような低い声。声はそれ以上言うこともなく、鎌倉の入り口に葉っぱ包まれたおにぎり弁当を置いて、そのままどこかに去っていきました。
雪女は基本無口。名前は後々・・・地蔵様は一体?