クマと科学とエトセトラ(2)
前回の話の続きです。これでクマのことはよくわかってもらえるはず!
3話
スクリーンの砂嵐が晴れると、そこに写っていたのは核戦争が起こる前の、文明が栄えていた頃のきれいな地球だった。
「君たちもよく知ってると思うけど君達の時代からおさらいしていくよ。」
クマが3人に呼び掛ける。3人も異論はなかった様で、黙ってクマを見守った。
「ここからは動画で再生するから質問は後でまとめてよろしくね♪じゃあいくよ~」
「やぁ、コールドスリーパーの諸君。気分はどうだい?」
クマから発せられる声質が急に大人びたものへと変わる。それは50代前半の男性のもに近かった。
それと同時に画面も切り替わり、画面に壮年の男が映った。白衣を纏いフレームレスの眼鏡をかけた男は、出来る大人を体現したような姿だった。
「500年という長い時を越えるという重要な任務を、君達のような子供達に与えてしまったことに科学者一同を代表して謝らせてもらう。申し訳なかった。」
男はひとつ息をつくほどの時間頭を下げ続ける。
顔を上げた男は引き締めていた顔を少し緩め語りかけるように話し出した。
「では、本題に入っていきたいと思う。まず自己紹介をしておく。私は青山 知典。君たちが目覚めたときのサポートを担当しているものだ。」
男改め青山はそこで、はぁー、とため息を溢す。
「役職持ちで偉い人っぽく聞こえると思うが、本当はただの厄介者だよ。人を傷つける技術を生むことが耐えらなくてここに飛ばされたんだ。しかしここに来たからには科学の粋を結集して君たちを手助けしていこうと思う。改めてよろしく。」
そこで映像が一旦切れる。
再び映像が映ったとき少し老けた青山の横にいたのは、あのくまだった。青山は一仕事をやりきった漢の顔をしていた。
「君達の生活を支えるお手伝いロボットが完成したことを報告しておこう。このロボットは
『MHー157』
戦争において使われていたハイテクな技術を平和活用した私の人生の最高傑作だ。」
青山はくまの頭に手を置くと、愛おしそうに撫でる。
「このロボットの中には高度なAIが埋め込まれている。きみたちの時代では夢とされていた、自動学習型のAIだ。
君達の支援をしやすいように擬似的な感情を持たせている。」
青山はこちらに目を向けると、少しだけ目を剃らし話を続ける。
「まぁ、これも自動学習が行うからどんな人格になるか保証はできないが・・・。
君達の手助けに全力を尽くすようにインプットされているから問題はないだろう。」
まるで自分に言い聞かせるかのように力強く言い切る。
「MHー157の見た目は、娘が大好きだった『くまさん』を参考にしてある。気に入ってくれると嬉しい。」
そこで一息ほど間を開けて顔を引き締め直す。
「これで報告を終わる。私の命が尽きるギリギリまで、君たちに必要になるであろう道具を創り続けていこうと思う。使い方はMHー157に聞いてくれ。では、君たちに幸せが訪れること祈っているよ。」
男が写っていたホログラムは再び砂嵐に代わり、くまの首輪に吸い込まれるように消えていった。
「ボクを作ってくれた博士のお話でした~」
クマがぽふぽふと拍手をする。伽凛と晃樹が吊られて拍手を送ろうとすると、スッとシャルルが前にたつ。
「クマ。お前の生い立ちはよくわかった。次は地球がどうなったのか教えてくれ。」
クマは腕を広げ、オドオドしだした。
「えっとね、うんとね、」
クネクネと動くクマに3人の視線が刺さる・・・
「実はね、僕も知らないんだ!」
ドヤッっとばかりの胸を張る。
「「「はぁーー!?」」」
3人の声がシンクロする。
「そんなに大声出さないでおくれよ、僕だってさっき目覚めたんだから解るわけ無いじゃないか~」
クマが可愛らしく項垂れる。
しかし情けは無用とばかりに晃樹が攻め立てる。
「さっきまであんなに調子よく喋ってたのになんにも知らないのかよ!使えないな!」
クマがむすーとして晃樹を睨む。
「使えないとは失礼な!たしかにボクは知らないけど、このコロニーにあるメインコンピューターにはあるんだよ!これからデータを吸い出すんだから!」
クマが心外だとばかりに晃樹に捲し立てる。その様子をみていたシャルルがクマを冷ややかに見下しながら命令する。
「クマ。さっさとそのメインコンピューターとやらに案内しろ。情報を持ってないうちはお前はまだ使えない奴として扱われるぞ?」
「もー、せっかちだな~人生にゆとりがないと剥げるよ~」
愚痴をこぼしながらクマが扉の方に歩いていく
3人は顔を見合わせると、一つ頷き、クマの後をついていく。
クマの大きさに調節されたキーボードのような機械を動かすと、扉が左右に開き、新たな部屋が現れた。
博士にしゃべらせ過ぎて伽凛が空気になってる・・・次こそはしゃべらせたい(;゜∇゜)