5話 怠惰の魔王
ちょい前作とリンク?したかも?
一応、前作読まなくても分かるようにしてます。
「どうぞ、お召し上がりください。聖女様」
スタンダルト兄妹に連れられてきたのは、王都にある公爵家の別邸。
そこで出される料理は、現状で精一杯の贅を尽くした品であった。
「妾は聖女などではない。アヤツと一緒にしてくれるな」
「これは、失礼致しましたわ。確かに先程の彼女のような者と同列視するなど、失礼でありましたわね」
通常なら苛立ちを覚えるような彼女の対応にも、シュレーヴァは淑女の微笑みを崩さずに謝罪を口にした。
シュレーヴァはその高貴な身分から王子の婚約者であったが、その身分を振りかざす事はなかった。
シュレーヴァは賢い女だ。
もし、仮に一歩でも彼女を見下すような態度をとっていたら、その首は今頃飛んでいたかもしれない。
寧ろ先程の王子達が、例外であったのだ。
王子達は、彼女の気紛れによって現在も生きているに過ぎない。
「アレの事ではない。あの程度が聖女を名乗るなどと、笑わせる」
馬鹿馬鹿しいと鼻で嗤う彼女。
先程の女に対して、彼女は嘲りしか抱いていない。
あの女は、彼女とは比べるまでもない位に格下だった。
他の有象無象と何ら変わらない。
「まぁ! では、貴女様は本物の聖女様にお会いした事が?」
「うむ、色欲の聖女……恐らく、アヤツもこの世界へと何らかの形でおるであろうな」
それは彼女にとって、決定事項であった。
何らかの根拠が、あるわけではない。
けれど、彼女は必ずあの6人もこの世界に、何らかの形で来ていると確信していた。
「異世界からですか? 我が国以外でも、召喚儀式が行われたと?」
聞き流せない内容に、今迄2人を見守っていたシュレインが口を挟んだ。
「さぁな。召喚かどうかは、分からぬ。妾も別にお前達の儀式とやらとは関係ないしな」
「……先程もそう仰っていましたわね。では、貴女様は何故この世界へ?」
シュレーヴァの疑問は当然であろう。
異世界からこの世界へ渡ってくるなど、そう簡単に出来る事ではない。
それこそこの国であったって、莫大な金を此度の召喚に注ぎ込んでいる。
「恐らくは……怠惰の魔王が、原因であろうな。どうせ、アレが世界を滅ぼしでもしたのであろう。そして世界が妾を生かす為に、異世界へと渡らせたのであろうな」
「滅ぼす? ……もしや、その方もこの世界に」
「まず、間違いなくいるであろうな」
何て事はないように答えた彼女。
世界を滅ぼすような存在がいるというのに、いたって平生だ。
シュレインは重大な事実に、顔を少し青ざめさせているというのに。
「ふっ、心配する必要はあるまい。怠惰は自分からは動きはせん。それに、妾が死ぬことはないからな……それよりも他の5人の方が問題であろうな」
そんなシュレインの恐怖を鼻で笑う彼女だが、大概にして彼女も常軌を逸している。
自分が最上と考えているので、自分さえ良ければそれが正しいと思っている。
「他の5人、でございますか……因みにどのような方達なのですか?」
「ふむ……そうだな、皆が皆、世界を滅ぼす力を持っているな。先程の色欲の聖女は一言で言うと、愛を語る拷問愛好家だな。今頃は、有象無象のうちの幾らかが被害にあっているかもな」
きっとあの王宮にいる王子達なら、笑い飛ばすだろう。
たかだか、個人が世界を滅ぼす力を持っているなど信じる方がおかしい。
けれど、シュレーヴァやシュレインは、彼女の言うことが本当であると本能で理解していた。
だからこそ、あの時自称聖女ではなく彼女を選んだのだ。
「だが、妾こそが頂点であるのだから、他の者達は気にする必要はない。妾は女王、全てを統べる王なのだから」
そう妖艶に笑う彼女は確かに美しく、人を従えるに充分な力を持っていた。
兄妹達はまさかここまでの力を持っているとは、知りませんでした。
ガクブルです((( ;゜Д゜)))