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12話 コマンド:諦めない!

 

「貴方達なんかに、私達は負けない!」


「……はい?」


シュレーヴァがジンの頭に足を置いた状態で、桜は急に叫びだした。

負けないもなにも、桜達は既に敗北しているといっても差し支えがない。

ここまで来ると、一周回って笑えてくるレベルだ。


「状況、見えていますか? 目、見えていますか?」


桜はもしや自分達とは見えているものが違うのかと、シュレーヴァは思わず桜に確認してしまった。


「貴方達のような悪い人達にに、私達は屈しない! シュレインだって、必ず助け出してみせる!」


まるで周囲の動揺をものともせずに、桜は自分の世界で酔いしれていた。

状況を飲み込めているジン達は、桜の自殺行為に顔を青くしている。


私はヒロイン。

この物語の主人公は、私なの!

だから、私が諦めない限り勝機は巡ってくるわっ!


「クッ! クククッ!」


一連の茶番を見ていた天音は、唐突に声を上げて笑い出す。

その笑みは心の底からのもので、実に珍しいものであった。


「天音様?」


シュレーヴァもそんな天音を訝しげに思い、声をかけた。


「お前程度が妾を負かすつもりであるか……ククッ、実に笑える。お前程度が、妾を害するなど……だが、いいだろう。妾は寛容だ。妾を笑わせた褒美に、お前のその無礼、此度は赦してやろう」


ほっ、と、天音の言葉に先程から震え続けていたジンや他の取り巻き達が息をついた。

ジン達は自分達が危機的立場にあり、天音の采配で自らの首が飛ぶことを理解していた。

何とか命だけはと考えていたところに、桜が突然よく分からない事を叫びだしたのだ。

もしや、このまま首を跳ねられるのでは?、と不安にかられていても不思議ではない。


ほら、これはテンプレ通りのお決まりの展開。

せいぜい、悪役らしく今は嘲笑っていればいいわ!

最後にはそのムカつく顔を、地べたに擦り付けてあげる!!


「────だから、一月だけ待ってやる」


「……え?」


天音の唐突な言葉の意味が理解出来ずに、ジン達は首をかしげる。

桜だけは、訳知り顔で1人ほくそえんでいた。


「そのままの意味だ。一月だけ待ってやる。一月後、妾はお前達の国を滅ぼす」


天音の勝利は揺らがない。

けれど、簡単に滅ぼしてしまうのではつまらない。

だから、桜達に天音は猶予を与えた。

暇潰し位には、なると考えたからだ。


「せいぜい、妾を愉しませよ」


それはジン達にとっては、死刑宣告。

けれど、桜にとってはゲームのシナリオとしか考えていなかった。

ラスボスと最終決戦の前だと、主人公達は一度敵に敗れる。

これは、勝利の為のフラグだと。


最後に勝つのは、私よ!


だから、桜の破滅は避けられない運命であった。

この世界は、ゲームや漫画の世界ではない。

諦めなければ主人公が最後には勝つなんていう、ご都合主義は通じない。

その事を理解できていれば、すぐに国を捨てて他国へと逃げ出していた事だろう。

けれど、桜は最も愚かな選択肢、闘う事を選んだ。

もうカウントダウンは、始まっている。

勘違いを正せない桜は、処刑台に自分が上がっている事にまるで気付いていなかった。




諦めない系の選択肢を選び続ければ、ハッピーエンドに行き着くだろうというゲーム脳……

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