11話 女王様のおなーりー
桜やジン達は力を合わせて、シュレインを救いに公爵領、もとい神聖スメラギ王国に侵入しようとしたが……やはり、ノリだけで上手く行く筈がなく早々に囚われの身となった。
「離せっ! 俺を誰だと思ってるんだっ!? この国の王子だぞっ!!?」
「我が領は神聖スメラギ王国ですので、王子など知りません」
取り押さえられたジンが喚くが、背中を押す兵士は知らん顔だ。
兵士達は雑に桜やジン達を、なかば引きずりながら玉座のある部屋へと進んだ。
スタンガルト公爵家の屋敷も、この数ヶ月で様変わりしていた。
ジン達の暮らしていた城より、何千倍もの防御力、そして絢爛さを誇っていた。
「女王様がお前達の顔を見たいそうだ。光栄に思え。お前達のような卑しき者が、至高たる女王様をお目にする事が出来るのだ」
「……女王? 女?」
桜達の頭に、燃えるような赤い髪を持った傍若無人なあの女の姿が過った。
「ほら、女王様の御前だ。頭を下げろ!」
桜達が何か問う前に、兵士達に広い部屋へと通され無理矢理頭を押さえ付けられた。
「くくっ、相変わらず無様な姿だな。似非聖女よ。シュレーヴァ、実に笑えると思わんか?」
「えぇ、天音様。すかすか頭の彼等には、地べたがお似合いでしょう」
玉座にあるのは、桜と供に召喚された皇 天音であった。
天音は桜達を嗤い、シュレーヴァもそれに倣った。
「くっ、お前っ! シュレーヴァっ!! 俺はお前の婚約者だぞっ!! 何を呆けているっ! 早く、俺を助けろっ!!」
ジンはシュレーヴァの声に顔を僅かに上げて、喚き散らして助けを命じた。
「ふふ、おかしな事を仰いますのね。そこな聖女様と婚姻がしたいからと、先月婚約破棄を使者に伝えられたのですが?」
地べたを這いずり回る虫のごときジンに、シュレーヴァは何時も通りの微笑みを浮かべた。
「それは、……だがお前は俺達を助けるべきだろうっ!? そんな女に騙されていないで、さっさとしろっ!!」
ジンは自分の身勝手さを棚に上げて、シュレーヴァに叫んだ。
「……あの、女?」
しかしその一言は、シュレーヴァの地雷を踏みぬいた。
「がぁっあああっ!!?」
「お前ごとき家畜風情が、あのお方をあの女よわばり? ……有り得ませんわ!!」
シュレーヴァは、ジンの頭を靴で踏みつけた。
「以前から、馬鹿だ馬鹿だとは思っていましたが、こんなことも理解出来ないなんて……いいですか? 天音様は、天上にして至高の存在なのです。お前ごときがその名を、姿を見ることも不敬なのです。身の程を知りなさい」
シュレーヴァは、変わってしまった。
以前は、ジンに従うだけのつまらぬ女であったのに。
ジンはただ頬を赤く染め恍惚と語るシュレーヴァを、呆然と見詰める事しか出来なかった。
王子もドン引きですね。




