10話 いざ、スメラギ王国へ!
「スメラギ、王国……、だと?」
「そのような報告は、上がってませんが……いえ、それよりスタンガルトは謀反をおこしたと言うことですか?」
ジン含め馬車の中に居たものは皆、同様に衝撃を受けていた。
「はい、事実のようです……如何しましょう?」
「如何って……公爵自身が、そう宣言したのですか? 公爵は、保守的な考えだった筈ですが……?」
動揺しながらも、取り巻き達は冷静に状況を整理していった。
──何故、このタイミングなのか?
──首謀者は本当にあの保守的な公爵なのか?
「そうだぞ、今の状況で公爵が聖女の恩恵を捨ててまで、独立を選ぶなんて……あの糞ブ、保守的な公爵がするなんて考えられない」
糞豚と言いかけるも、相手の爵位を思い出し言い直したジンもその意見に同意した。
桜という聖女がいる中での独立宣言は、自らの首を締める事に繋がる。
それとも、公爵には聖女以上の切り札を手に入れたとでもいうのだろうか?
「……1度、王都へと戻るぞ。俺達だけでは対処出来ない」
「そう、ですね……それが最善でしょう」
「え? 折角、ここまで来たのに戻っちゃうの?」
王都へ帰還する事で話がまとまりかけたが、そこに状況を理解出来てない桜が水を差した。
「桜……独立を宣言された以上、ここにこれ以上居るのは危険だ。桜をそんな危険に晒すわけにはいかない」
「そんな、折角何時間もかけてここまで来たのに……大丈夫だよ、ジン。だって、ここにはシュレインも居る筈でしょう? シュレインを助けてあげないとっ!」
諭すように桜にジンは言い聞かせるが、桜は聞く耳を持たない。
シュレインが敵に回っている可能性は高いのに、まるでその可能性を視野に入れていないあたり桜の思考は自分中心であった。
「桜、……俺達だけでは、お前を守りきれないんだ。分かってくれ」
「ジン達ばかりに戦わせないよっ! 私達で、悪の公爵を倒してシュレインを助け出すのっ! 私は聖女なんだから何とかなるよ!」
桜は自信たっぷりに、ジン達へ向けて手を差し出した。
「桜……そうだな。俺達には、お前が居る」
「そうですよ、女神に愛されし桜が居るのだから、何とかなりますよ!」
ある意味、彼等も冷静ではなかったのだろう。
桜にここまで言われて引き下がるのは、優秀と持て囃された彼等のプライドが許さなかった。
「……これはイベントね。シュレイン攻略の為のシナリオなんだわっ!!」
そう1人、桜が呟く声は彼等には聞こえることはなかった。
確かに乙ゲーとかだと、イベントのフラグですよね…
何故か応援をよばず、主人公達だけで突き進むっていう。




