初めて
片桐君は、机から顔を上げてこっちにきた。
「あっ、あのね!片桐君一人だったし一緒に話そーかなー、と思って。」
誰かを通してじゃなくて、間接的じゃなくて、
初めて二人で話してる。
「あー、咲々月さんだよね?」
「う、うん。」
ショックだった。二人で話したことが無いとはいえ、名前すらも半覚え、、普通に悲しい。
「咲々月さんさー、マネジャーやってて大丈夫?」
「えっ?どういう事?」
私は、片桐君に遠回しに部活辞めたら?と言われている気がして泣きそうになった。そんな悲しい顔を思いっきりしてたから片桐君が珍しく焦って
「あっ、いや、その、、咲々月さん小さいし。」
「え?」
「いや、だから、、、マネジャーの仕事してて時々重たい物持ってたりするだろ?咲々月さん細くて華奢だし、、重たそうに運んでるから、、、、大丈夫かなって、」
嬉しかったし驚いた。部員の誰一人そんなこと言ってこなかったし、私が無理して運んでいる事自体気付いて無かったと思うから。
「あ、ありがとう!心配してくれて。結構重たくて、、でも大丈夫!しっかりマネジャーとして片桐君逹を支えるから!」
「なら良かった。ありがとう。宜しく」
「でも、良く気づいたね。」
「あーー、よく見てるから。」
「、、えっっ!!!」
片桐君の答えに思わず驚きを隠せない。
「あっ、変な意味はないよ。ストーカーとかじゃなくて、、その俺もよく分かって無いんだけど、」
「咲々月さんの事がほっとけないって言うか、、、心配なんだ。」
一瞬何が何だか分からなくなった。ただ頭の中で自分の鼓動が凄く速く鳴っていて、、、、うるさい。体も熱っぽくなってくるし、片桐君もほんのり赤くなってる。恥ずかしい。私は、出来るだけ明るく笑って言った。
「お、俺もよく分かってないって、、なによそれーー」
「だっ、だから俺もわかんねーんだよ!」
さっきよりも赤くなって言い返してくる片桐君。
「片桐君。顔赤いよ~」
ニヤニヤしながら言った。
「うっせー」
片桐君は、そっぽを向いて自分の席に戻って行く。
その後ろ姿を見ながら私は、思ったの。今日は、初めて見た片桐君がいっぱいある。
私を心配していた片桐君。
焦っている片桐君。
赤くなった片桐君。
怒った片桐君。
片桐君に一歩近づけた気がする。
もっと近づきたい。もっと知りたい。
もっと、、、、片桐君に近い存在になりたいな。