22章 新兵器
蒼藍王国は、魔法学と、科学が同時進行で発展してきた。そのため、魔力がなければ化学エネルギーで補い、科学でできないことは魔法で。ということが平気で行われてきた。
軍事技術でもこれは同じであり、早くから、火薬を用いない火器が開発されてきた。その集大成と今までされてきたのが高度術式魔導砲である。
その威力の割に必要とするエネルギーが圧倒的に少なく、魔法を解さない者にはとうていまねできない。そんな平気である。
だが、このたび遥夢と正規によって、それを超える威力と省エネを両立させた兵器が開発された。
その前に、この世界のエネルギーの流れについて話をする。
創造界は神々の住む世界とされる魔導界と、惑星マーライヤーナの属する恒星系の主星でもって、エネルギー面で接続している。
そのエネルギーはまず、創造界世界の絶対座標における原点となる、超巨大恒星アントキリオンへ流れる。次に、第五第六惑星連星系の共有恒星周回軌道へ流れる。
そこから、まず東へ流れ、絶対宙緯と、絶対宙経+側を満たす。そのご、北回廊星間物流航路に沿い西側に流れ、西側を満たし、最後はルーラ都市遺跡群から魔導界へ帰っていく。
この宇宙空間をまるで一周するかのようなエネルギーの流れを王国では天龍脈と呼称する。
これに対して、各惑星、恒星上の地磁気や、偏西風、海流などに沿って流れるエネルギーの流れを地龍脈と呼称している。
天龍脈と地龍脈は相互にエネルギーをやりとりしており、地から天への流れを小龍昇群逆の流れを小龍降群と呼称する。
これらを総称して龍脈と呼ぶ。
王国では初王朝時代からこの龍脈の研究が盛んであり、一時的に王統が地下に潜り異民族の支配下となった後王朝時代の技術衰退期を除き、全ての時期において、龍脈からエネルギーを取り出し、利用する研究が行われていた。
終王朝時代に入り第3世代航宙理論、第4世代航宙理論といった、半永久機関理論が開発され少し下火になったが、それでも国王主導で開発が続けられた。
その結果が今回の兵器開発につながった。
星軍の673-28-9932-65式21-648型20口径15.5cm龍脈砲と38口径45cm三連装龍脈砲。
基/宙軍の、7892-3325-668916式15口径3cm機上龍脈砲、32-45型艦載龍脈砲機群
総称して、龍脈砲技術を採用した火砲機という。
龍脈からエネルギーを取り出し、砲撃エネルギーに変換して、打ち出すという簡潔な流れなのだが、取り出す龍脈が星軍と宙軍とで異なっている。
星軍が、地龍と小龍昇群から。
多大な出力を要する宙軍は天龍と小龍降群からエネルギーを取り出している。
まあ宙軍の場合、さらに、1から兆を生成する力を持つ、4GCDエンジン(第4世代航宙理論採用推進機関)がアルので、さらに大出力になる傾向がある。また、この龍脈砲は神流砲と相性がよく、集王朝時代に入って、国王主導で開発が行われたのも、国王自身の遠距離攻撃法が神流砲に依存しているかrというのもある。彼女の遠距離攻撃武器である、GLBDは、龍脈砲を扱うことができる。
「これ、どうにかして、龍脈砲に組み込めないかなあ。」
蒼天宮の一室。
遥夢と正規の共有プライベートルームにて。
[なんで、砲身に国章刻むと威力と省エネ性上がるんですかねえ。]
「は?」
[だから、なんで龍脈砲は砲身に国章を刻むと威力と省エネ性が跳ね上がるんですかねえ。正規さんは何かご存じ…その顔からすると何も知りませんね。]
話題を振られる前にすごいいやそうな顔をする正規。
「とりあえず、明日は発射試験だから寝ないか?」
[神子に投げました。]
すごいいい笑顔ですごいことを言う遥夢。
数日後
[ではコーウェリア級以下大型艦への主砲、副砲としての採用は見送りですね。]
「大口径砲での威力が大幅に落ちるか。まあ水上艦艇用ではいけるかな。」
報告書では砲身内径120cmを1mmでも超えると、とたんに威力が落ちると書かれていた。
つまり、王国軍が運用する戦艦の主砲、副砲には使えないというわけ。
「これ、大和会議に押しつけよう。」
こうして、龍脈砲の技術があの大日本及びムー大陸連合帝国に引き渡されたのである。
ただし、製造は当面の間LSN-LMTが全て行う。
このLMTという企業、創造界世界最大の軍需企業である。もっと言うと、王国軍、星間連合軍、藍蒼条約連盟加盟各国軍の使用する、艦艇、兵器、弾薬は完成品から部品に至るまでここの製品である。まあ、艦艇は砲火器以外はLSN-LIT-LHTが、建造しているが。
また、龍脈砲や高度術式魔導砲の砲身への刻呪加工はLSN-FOTが行う。
もっと言うと、交通系のLSN-LTS系各企業(LTR,LTA,LTSS)と教育部門のLSN-LASが運営する学校法人北浜学園をのぞき、LSNグループの全企業が何かしら関わっている。
今回王国が連邦経由で大和会議に押しつけた試作龍脈砲は大和会議議長国である、瑞穂皇国に全て押しつけられた。
瑞穂の首相崎原病的という言葉が似合う遥夢ファンであり、遥夢がお願いと言えば、何でも引き受けかねない。まあ、龍脈砲は条件下(砲身内径120cm以下での製造)なら、絶大な威力を誇るので、今回は忠でいい物が手に入ったとほくほくだったが。