新たな問題
我々が村に入ると村の住人たちが歓喜の声を上げていた。
エルスランド帝国軍は規律正しく、村の広いスペースに鉄の馬を止めたかと思うと中から人が降りてきた。
「前嶋殿!あれは、なんだ!?」
「あれは、装甲車と言う兵器です。」
「あれは、馬なのか?」
「馬?まさか、馬なんかじゃないですよ。」
「そ・そうなのか。」
私はつくづく技術力の差を実感する。王国や皇国がこのような兵器を作れるまでには一体どれだけの年月が必要だろう。
装甲車と言う物からエルスランド帝国軍の兵士たちが降りてきている。その中でも一際目立つ人物がいた。
「正武少将閣下!!ご無沙汰しております。」
「おお!!第15偵察分隊の指揮官は三島君だったのか。」
「はい!!ですが、なぜこちらに皇族である正武閣下がいらっしゃるのですか?」
「それは、いろいろとね。」
「前嶋殿、準備ができた。村長が会ってくれるそうだ。」
「そうですか。では、報告してきます。」
そう言うと前嶋は先ほどの人物のもとに向かっていった。
「少尉・閣下!村長との面会の準備が完了しました。」
「そうか。それじゃあ、面会に行くとしようかな。」
ミーリエルについて行った先には立派な館があった。
「村長はどういった人物なんだ?」
「村長は、元元老院議員なんだ。今でも、元老院とはつながりがあるそうだ。」
「元老院とつながりがあると言うことは仲介役をお願いできるかもしれませんね。」
「そうすんなりと仲介役を買ってくれるとは思えんがな。」
「少し待っていてくれ。」
ミーリエルは館の衛兵と話をしていた。話はすぐに終わりミーリエルが戻ってきた。
「村長は応接室でお待ちだそうだ。急ごう。」
館に入ると衛兵は早足で応接室に案内した。
応接室には1人の女性がいた。
「その方がエルスランド帝国とやらの者達か?」
「そうでございます。左から三島殿・松村将軍・ララノア殿です。」
「妾は、ミリー・フロンス。昔は元老院議員じゃったが今は、ここエリッシュ村の村長じゃ。」
「ご丁寧なご紹介ありがとうございます。私はエルスランド帝国陸軍第5機械化親衛軍司令官の松村正武です。」
「小官は第15偵察分隊指揮官の三島弘敏少尉です。」
「私は同分隊偵察兵のララノア伍長です。」
「ふむ、その方らは軍人か?」
「そうなりますね。私は一応皇族と言う理由でここにいるだけですし。」
「皇族!?それは、失礼した。妾も態度を新たねばならんの。」
「ミリー様、そろそろ本題に入りませんと。」
衛兵がそう声をかけた。
「そうじゃの。貴殿らの話は既にミーリエル殿から聞いている。確か、国交の樹立が目的じゃったな。」
「そうなります。転移したばかりでどこかの国家と国交を結びたいのが本国の思惑です。」
「そう言うことなら我が国は国交を結んでくれるだろう。それにしても転移してきた国家が新たに増えるとはな。」
「増える?いったいどういうことですか!?」
「この世界はもともと3つの国しかなかったようなんじゃが、ある日を境に多数の国家が転移してきているようじゃ。」
「もしかして、グリーゼ皇国も転移してきた国家なのですか?」
「我が国はもともとあった3つの国の1つじゃ。だが、気を付けるが良いぞ。皇国のような人間ではない種族が皇帝や王の国は珍しい。転移してきた国家の半数以上は我々が国内にいるだけと言う理由で宣戦布告してきたりする。貴国もエルフがいると言うことはその他の種族もおると言うことだろう?」
「その通りです。エルフ族以外にも多数の種族がわが帝国にはいます。」
「ならば気を付けることだ。イリース王国の新王は血気盛んな人間と聞く。この報告が耳に入れば宣戦布告されるだろう。もちろん我が国もな。」
「・・・・・・・・・・・」
松村少将は黙り込む。
「まあ、それは置いておくとしよう。国交樹立の話じゃが、近くの町に元老院議員が視察に来ることになっている。その時に妾から話をしようではないか。」
「ありがとうございます。」
「視察に来るのは3日後じゃ。それまでに本国に連絡できるか?」
「それは、問題ありません。3日の内に本国より外交官を派遣してもらいます。」
「そうか。3日間はこの村にいるとよい。歓迎するぞ。」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます。」
「宿舎の方じゃが妾が最近建てた寄宿舎がある。そちらを使うが良いぞ。あとで手配しておく。」
「そこまでしていただき感謝します。」
「村を救ってくれた英雄たちじゃからの、このくらいはさせてもらわんとな。」
それからミリーと少しばかり雑談をした後、少将たちは手配してもらった寄宿舎で連絡を取っていた。
「・・・・と言うわけでして外交官の派遣をお願いします。」
「確か、正武少将は外務省に一時期務めていたな。」
「そうですが・・・まさか!?」
「そのまさかだ。少将を全権大使とする。」
「わ・わかりました。」
「では、よろしく頼むぞ、正武大使。」
「将軍は何をやっている!!」
「おそらく、エルフを追ってグリーゼ皇国に向かったものかと。」
「あの無能め!!」
「今は、その時ではないと言うのに。グリーゼ皇国側はなんと言ってきている。」
「国境での戦闘はただの小競り合いであるということで皇国側も納得してくれました。」
「フフフ、その判断が愚かであったことを後々思い知るだろう。」
そう言うイリース王国新王のアルフレッド2世は目の前に広がる重装歩兵を見ながら側近と話すのだった。