戦闘準備
第15偵察分隊は、煙の見える方向に向かって進んでいた。
「隊長。村が見えてきました。」
「よし、住人にあまり警戒されないように気を付けろ。」
「了解」
指揮官の方針で車で行くより兵士を行かせた方が警戒が緩むと考えた。そのため、兵士5名が村に向かうことになった。
「止まれ!!貴様らは何者だ。」
村に向かうと槍を持った村人に止められた。
「我々は、エルスランド帝国と言う国のものだ。村長にお会いしたい。」
「エルスランド帝国?聞いたことない名前だな。お前は聞いたことはあるか?」
「聞いたことはないな。そうだ!!エルフの騎士様なら知っているかもしれない。」
「そうか!!俺が騎士様を呼んでくるよ。」
そう言うと1人の男が走って行った。
「どうしますか前嶋曹長。」
「どうもこうもその騎士を待つしかないだろう。エルフだと言っていたからいざとなったらララノア伍長が話をしろ。」
「了解しました。」
エルスランド帝国は異世界転生してきた初代皇帝が作った帝国で、初代皇帝陛下は戦争や婚約で続々と領土を広げていったため複数の種族がひしめく国家となっていた。複数の種族は初代皇帝の下共存の道を選んだ。初代皇帝が亡くなられた時も遺言でこれからの種族問題についてもしっかり言及されており、現在も各種族は差別などの問題もなく共存できている。
ララノアもその1人で、彼女はエルフなのだ。
女性の軍人はエルスランド帝国では珍しくない。国の考えとして男女差別を無くす、その先駆けとして2代目皇帝のころから女性が軍隊に入隊することを許可している。
最初は男性に見下されたくない女性や貧しさ・前科もちの女性が多く入隊していたが女性軍人が戦果を挙げるごとに女性の志願者数が増えた結果、エルスランド帝国軍の半数の将兵は女性であり、第15偵察分隊の兵士15名中8名は女性だ。
少し待っていると鎧を身に纏ったエルフ独特の耳をした女性が現れた。
「貴様らがエルスランド帝国と言う国の人間か。」
「そうですが。」
「初対面で失礼だとは思うが人間は信用できない。」
「そうですか。伍長、ちょっとこっちに来い。」
「あ、はい。」
前嶋曹長はララノア伍長を呼んだ。
「だから、さっきも言っただろ、私は人間を信用・・・・・・」
私が見た人物は間違いなくエルフだった。
「貴様、エルフか!?」
「はい、私は正真正銘本物のエルフですよ。」
「そうか!まさかとは思うが、王国の奴らではないよな。」
「王国?が何なのかは知りませんが、私たちは王国とは一切関係ありませんよ。」
「ならばよい。それで、何用だ。」
「ここで一番偉い人に合わせてほしいのですが・・・」
「生憎だがいまは出来ん。」
「戦闘が行われるのですか?」
先ほどの人間が声をかけてきた。
「!!そうだが・・・・・。なぜわかった。」
「これでも、軍人なのでね、気配を感じ取ったと言ったところでしょうか。」
「そうか。軍人か・・・・・・・。不躾ですまないが一つ頼まれてくれないか?」
「あなたの言いたいことは解ります。一緒に戦ってほしいと言うことですね。」
「そうだ。もし、頼みを聞いてくれたら村で一番偉い人に会わせてやる。どうだろうか?」
「少し待ってください。」
そう言うと奴らの中でも一際大きなものを背負った奴が先ほどの人間に近よって何かをしていた。
「・・・・と言うわけでして、どうすればよいでしょうか少尉。」
「私では判断しかねる。司令部に私が聞いてみる。少し待っていろ。」
「了解しました。」
数分後少尉から連絡が来た。
「司令部は交戦を許可した。我々もすぐそちらに向かう。車両のことはそちらに伝えておけ。あと、援軍として1敵軍後方から1個中隊が送られてくるようだ。そのことも伝えておけ。」
「了解」
どうやら話が終ったらしい。
「で、どうするんだ。」
「そちらの提案に乗らせていただくことにしました。」
「ありがたい。これで、少しはマシに戦える。」
「ただ、こちらも兵器を使うので住人のみなさんたちには注意するよう伝えてほしいのですが。」
「ああ、構わん。私達から伝えておこう。では、ついてきてくれ。」
「ララノア伍長はここに残って少尉たちの誘導をしろ。」
「了解です。」
ララノア伍長を残し、騎士の誘導に従った。
「そう言えば自己紹介がまだだったな。私はイリース王国元騎士のミーリエルだ。」
「私は前嶋俊之曹長だ、よろしく。」
「ああ、よろしく。さて、ここで我々は防壁を使い防衛をする。貴殿らにはここを防衛してほしい。」
「了解したよ、任せて。」
我々が防衛するところは防壁が途切れている場所だ。ここから攻撃をくらえば間違いなく敗北する。それだけ、責任は重大だ。
ミーリエルがその場を離れた後、少尉たちが到着した。
敵軍が来る前に兵士全員で土嚢を積み上げ、即席の防衛陣地を築いた。
先ほどの奇妙な黒い鉄の帽子をかぶった、木と鉄でできたこれまた奇妙な棒を持つ連中はせっせと陣地を築いていた。
我々が、お前たちを捨て駒扱いしていることも知らずに。
「見えたぞ!!王国軍だ!!」
まあ、せいぜい頑張って頂戴。