北イリース共和国軍の策略
前回のあらすじ
共和国「銃の使い方わからない(涙)」
帝国「軍事顧問団送るわ。」
共和国「おかげで訓練できたよ。」
王国「南部軍として、初めて帝国と戦争だ。」
共和国「うちの領土だから守らないと。」
帝国「援軍出すぞ!!」
王国「女と非正規軍が主力。これは勝った(笑)
こんな感じかな・・・
王国軍はアルフレッド2世が戦場に視察に来たこともあり、士気が高い。
王国軍は町が入り組んでいることなどから、正面の大通りを重装歩兵が進み入り組んだ道から軽装の歩兵が進軍する。
対する防衛部隊は装甲兵力を有する第28保安師団が正面で王国軍重装歩兵を迎え撃ち、第1警察師団が2つに別れ第28保安師団の援護と共和国軍第1歩兵師団の援護を行うことになった。
第1歩兵師団は町の建物内にうまく隠れながら王国兵を待った。
大通りでは既に戦闘が始まっているようで先ほどから砲声や銃声が聞こえてくる。
実戦を経験していない乙女たちは王国兵が来る瞬間まで、緊張で震えていた。
「王国兵だ!!身を隠せ。」
警察師団の警官から声が相手に聞こえない大きさで届く。
共和国軍兵士は慌てて身を隠す。
王国兵は土嚢が積まれていることを不審に感じたが、全く警戒をしていなかった。
王国兵は警察師団が設置した地雷を気づかずに踏んだ。
「なんだ!!!!!」
「地雷に引っかかったぞ。撃て、攻撃開始!!!」
建物の中から王国兵に向けて銃を撃つ。
警察師団は1式半自動小銃だが、北イリース共和国軍はエルスランド帝国軍の旧式小銃である、ボルトアクション式の88式歩兵銃(Gew88)を使用しているため撃つ速度が遅い。
「敵襲だ。物陰に隠れろ!!!]
王国軍士官が大声で叫ぶ。
それを待っていたかのように、数名の警官と共和国軍兵士が建物から飛び出し、土嚢の内側に隠れた。
共和国軍兵士は王国兵に向け、新たにエルスランド帝国から支給された12式重機関銃(ヴィッカース重機関銃)を撃った。
それに負けじと警官達も42式汎用機関銃(グロスフスMG42機関銃)を撃ちまくる。
「助けてくれ!!迂闊に攻撃出来ない。」
指揮官は魔法通信を使い、重装歩兵側の指揮官に応援を求めた。
「こちらも重装歩兵の損害が大きく、現在再編中だ。申し訳ないが援軍は出せない。」
「わかった。こちらもどうにかしてみよう。」
指揮官は、どうやって攻撃をするか悩んでいた。
すると、銃声が止んだので部下に確認させると、先ほどまで攻撃してきた兵器は攻撃する様子もなく、布を先の方に当てているとの報告が来た。
「これは、好機だ!!突撃させろ。」
「はっ!」
銃声が止んだのは王国兵たちも確認しており、突撃命令が出ると一斉に突撃を開始してきた。
「かかったぞ!!まんまと騙されやがって、これでもくらえ!!!!」
再び重機関銃の引き金を引く。
王国兵は突然の銃撃に対応できず、蜂の巣にされる。
建物からも銃撃を浴びてしまい、王国兵は次々と倒れ始めた。
指揮官は慌てて増援を要請した。
後方に待機していた王国兵が現場に駆け付けると、そこには肉片となった自軍の兵士たちが倒れていた。
王国軍南部方面軍陣地では、アルフレッド2世が今か今かと勝利報告を待っていたが、聞こえてくるのは、聞いたこともないような大きな音や雷鳴だった。
「町ではな・何が、お・起こってるんだ!!?」
「陛下、落ち着いて下され。」
「報告します!!」
兵士が陣地に入ってきたが、その兵士は王国軍南部方面軍の兵士ではなかった。
「貴様は南部方面軍の者ではないな?」
「はっ、その通りでございます。」
「どこの所属だ!!」
「私は、王国白百合騎士団の兵士でございます。」
「白百合騎士団?」
「それは、世の娘のわがままで作った騎士団じゃ。」
「そうでしたか。それで、何用だ。」
「白百合騎士団が北イリース共和国側に裏切りました!!!」
「なんだと!!」
「世の娘が、ミルティが裏切るわけがなかろう!!!」
「しかし、私はこの目で見たのです。ミルティ王女と話すアミルダ将軍を!!」
「あの裏切り者め!!世の娘までたぶらかすか!!!」
「白百合騎士団は今どこに!!」
「南部方面軍の後方に回り込もうとしております。」
「このままでは、前後から挟み撃ちにあうぞ!!」
「いかがいたしましょう。」
「撤退だ。全部隊に通達。我々は南東の迂回路を使い撤退すると。」
「はっ、了解しました。」
「陛下、撤退します。陛下も急ぎ準備を。」
「わ・・・分かった。」
アルフレッド2世は最愛の娘が裏切ったことで放心状態になっていた。
王国軍南部方面軍は3万の犠牲を出し、撤退。
町の大通りには王国軍重装歩兵が破棄した鎧があちこちにあった。
~王国軍が撤退する数時間前~
アミルダは、わずかな兵士を連れ白百合騎士団のもとに向かった。
「止まれ!!何者だ!!!」
「私だ。アミルダだ。」
「アミルダ将軍、死んだのでは!?」
「見ての通り生きている。ミルティ王女と話がしたい。」
「少々お待ちください。」
女騎士は天幕の中に入っていく。
少しすると先ほどの女騎士が出てきた。
「王女様のお許しが出た。」
「そうか、では行ってくる。」
アミルダは護衛の兵士を残し、エルスランド帝国製のライフルケースを持って天幕の中に入った。
入ると天幕の奥には磨き挙げられた鎧を着た金髪の少女がいた。
「ご無沙汰しておりますミルティ王女。」
「アミルダ!?本当にアミルダですの!!」
「間違いなく本物のアミルダでございます。」
そう言うとミルティはアミルダに抱き付いた。
「ほ・・本当に・・心配したんですから!!」
「申し訳ございません。」
「ところでアミルダ?その服は、どうしたのかしら?」
ミルティはアミルダの服装に疑問を抱く。それもそのはず、アミルダは北イリース共和国陸軍の軍服を着用しているのだから。
「ミルティ様、北イリース共和国についてはご存知ですか。」
「もちろんです。エルスランド帝国と言う国の人間が、わが王国の人間をたぶらかせて作り上げた国家ですわね。パパがとても怒っていました。『恩を仇で返すとは、何事だ!!』と。」
「私は、北イリース共和国の国家元首なのです。」
「え・・・・・・。」
ミルティは思考が停止する。
最愛の親友が、敵国家のトップだなんて思わなかったから。
「それは、本当なのアミルダ!?」
「ええ、そうですよ。」
「それなら、私たちは敵同士と言うことになりますわね。」
「そうなります。」
「ならば、敵である私に何用ですの。」
「ミルティ王女には北イリース共和国に降伏してほしいのです。」
「どうしてそのようなことを。」
「これを見てください。」
アミルダは持ってきたライフルケースから1丁の88式歩兵銃を取り出した。
「これは、何ですの?」
「これは、銃と言う物です。この銃は北イリース共和国陸軍の主装備となっています。」
「その銃と言うのがどうしたのですか?」
「この銃は剣や槍・弓なんかとは比べものにならないくらい強いわ。」
「そんなはずないわ。こんな棒で何ができるっていうの!!」
「では、実際に試してみましょう。」
「いいですわ。この目で見て差し上げますわ。」
アミルダはミルティを連れて外に出た。
「すまないが、予備の鎧はないか?」
「それでしたら、2着ほどありますのでとってきましょうか??」
「ああ、そうしてくれると助かる。」
「わかりました。」
女騎士が鎧を取りに向かった。
その間にアミルダは88式歩兵銃に弾を詰め込んでいた。
少しすると、鎧を持って女騎士が戻ってきた。
「ここに置いてくれ。」
「わかりました。」
言われた場所に鎧を置いた。アミルダは、その鎧に向かって88式歩兵銃を向け、引き金を引いた。
突然の銃声にミルティは腰を抜かした。
「鎧の方を御覧下さい。」
「王女様!!」
側近に抱え起こされたミルティは、鎧の方を見た。
銃弾は鎧を見事に貫通していた。
しかも、この鎧はドワーフの巨匠が使った、魔法攻撃をも弾く鎧だった。
「そ・・そんな。ありえませんわ。」
「これが、銃の威力です。お分かりになりましたか?」
「ええ、十分わかったわ。」
「エルスランド帝国では、この銃は旧式です。エルスランド帝国はこれより強大な兵器を多数所持しています。このままでは、王国は完全に敗北するでしょう。」
「そ・そんな!!」
「私はあなたが傷つくのは見たくない。今すぐにでも我々に降伏してください。」
ミルティは少しの間考えた。
「わかったわ。あなたの提案に乗るわ。白百合騎士団は北イリース共和国に降伏する。」
「では、・・・」
「だけど、パパとのけじめはつけておきたい。パパは前線の視察に出ているから、そこに攻撃する素振りを見せるわ。」
「でも、そうなったら攻撃してくる可能性も!!」
「いいのよ。その程度であたしは死なない。必ず、生きてあなたのもとに向かうわ。」
「ミルティ!!」
「マリー、皆に出撃準備を。」
「わかりました姫。」
「あなたも戻るといいわ。そろそろ、怪しまれると思うから。」
「わかったわ。必ず生きて帰るのよ、ミルティ。」
「もちろんよ!!」
そう言ってミルティと別れた。
結果的に白百合騎士団と王国軍は戦闘を起こさなかった。
ミルティは無事にアミルダと再会することができた。
その後、白百合騎士団は白百合戦闘団に改名。
ミルティ指揮する白百合戦闘団はエルスランド帝国より売却された、旧式の17式特型中戦車(マーク A ホイペット中戦車)5両と14式特型装甲車(ロールス・ロイス装甲車)10両を配備した、北イリース共和国陸軍初の機甲戦力としてイリース王国戦で縦横無尽の活躍をすることになる。