王国の野望
イリース王国では、着々とグリーゼ皇国侵攻の準備が進められていた。
「陛下!わが王国軍はいつでも攻撃可能です。」
「とうとう亜人共も滅びゆく時が来たか。」
「今すぐに攻撃命令を。さすれば、忌まわしき亜人共を殲滅して御覧に入れましょう。」
「まあ待て。いくら亜人と言えど余は寛大な心を持っておる。奴らが、こちらの条件を呑めば、新たな敵に鉄槌を下すことができる。」
「さすが陛下!!それで、新たな敵とは?」
「わが王国騎兵隊がグリーゼ皇国領に侵入したときに愚かにもわが軍の将軍を討ち取った者達だ。確か・・エルスランド帝国とか言ったな。」
「それが、新たなる敵ですか・・。」
「そうだ!!奴らはこともあろうにグリーゼ皇国と仲が良いと聞く。エルスランド帝国自体も亜人共が人間と同じように暮らしているそうだ。」
「なんと!!そのような国は即刻滅ぼさねば。」
「もし、グリーゼ皇国がわが王国の寛大な案を断った時は速攻で皇国を潰せ。その後、皇国領を前線基地にしてエルスランド帝国へ侵攻するのだ。できるなメイビル将軍!!」
「はっ!その命、この命に代えても成し遂げてみせましょう。」
「頼んだぞ!」
そう言うとアルフレッド2世は部屋を後にした。
グリーゼ皇国に記念すべき大使館が設置された。グリーゼ皇国側もエルスランド帝国に大使館を設置した。これにより、両国間の情報の共有がしやすくなった。
王国からの提案と言う名の要求が来たのは大使館ができた2日後だった。
「こ・こんな提案とても受け入れることはできません!!!」
イリース王国の大使に向かってグリーゼ皇国の大臣であるバドルスが答える。
「わが王国はこれ以上ない寛大な提案をしているのですよ?それが、なぜわからないんですか?」
「皇国の人間以外の種族をすべて奴隷化のどこが寛大な提案ですか!!!」
「この世の頂点に立つのは人間です。人間もどきである亜人共は人間様に使っていただけるだけ幸せなことではないですか?」
「そんなことはありません!!お引き取り願います。」
「おやおや。戦争になってもよろしいのですか?」
「構いません。それが、皇国の未来のためですから。」
「そうですか残念です。おっと、忘れていました。これをあなた方の新しく仲良くなったエルスランド帝国に渡してください。」
そう言って王国の大使はバドルスに書状を渡すと早々に帰った。
このことはすぐに皇国内部に知れ渡った。
王国側は皇国に対して
人間以外の種族の奴隷化
今後グリーゼ皇国は王国から派遣されてきた王族がすべてを取り仕切る。
皇国は国家予算の半分を王国に献上すること。
フロンス皇王家の廃絶。
現皇帝の公開処刑
の4つを求めてきた。
そればかりか、エルスランド帝国にも
人間以外の種族を奴隷として王国に献上すること。
今後、エルスランド帝国は王国の法律・税収に合わせること。
王国が戦争をする際は戦争に使う費用を全額帝国が負担する。
現皇帝は王国に移り住むこと。
警察・軍事には王国の者を雇うこと。
国家予算の3分の1を王国に献上すること。
今回発生したグリーゼ皇国領内での事件の非を全面的に認め王国に謝罪すること及び賠償金として200億エルス(王国のお金)を支払うこと。
今後一切王国以外の国と交流を行わないこと。
を求めた。
この提案と言う名の要求に対してグリーゼ皇国は提案を拒否し、徹底抗戦の構えを見せた。
それは、帝国でも同じであり、今回の戦いのために臨時で兵士に志願する人を募集したところ、各志願兵募集所にあふれかえるくらいの人々が殺到した。中には帝国では普段姿を見ることすら珍しい竜人族の志願者も多数いた。
皇国と帝国の両国は緊急の会談を行った。
その結果、両国間で軍事同盟が成立した。