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9.迷宮探索へ

迷宮探索の準備が始まります。登場人物の背景が見えてきます。


※20pt到達しました。応援ありがとうございます。記念として間話を作成中です。10話後に公開しますので、お楽しみに。

「迷宮・・・ですか」


「はい、迷宮探索ですわ」


俺は、冒険者といいつつ、依頼は魔獣狩りしか請け負ったことが無い。


はっきり言って狩人と言っていいだろう。


迷宮探索とはどのようなものかさっぱり分からなかった。


「それがどのような依頼かはまた後にして・・・、ランテさんに支払う授業料って」


「はい、私が攻略途中だった迷宮を、一緒に探索していただきたいんですの。私とレル、ケンゴ様の3P(3人パーティ)ですわね」


胸がざわめく表現だが、何がしたいかは良くわかった。


「でも、ランテさんが攻略途中ということは、難易度が高いんですよね」


「ええ。かなり歯ごたえのあって・・・単独行動シングルでの探索に限界を感じていたところです」


ふむ。一級冒険者で難しい場所か。


それにプラス1名の一級冒険者レルと、プラス1名の二級冒険者オレが増えることで、どこまで進めるか、だな。


出来れば、魔法教師から焼肉屋の店員まで、実質無償で手伝ってくれたランテさんの力になりたい。


「どう思う?。レルの意見が聞きたい」


身近な先輩冒険者に意見を伺うとしよう。


「賛成する。迷宮は冒険者として、総合的な力量をアップするのに恰好の場所。きっと主様のためになる。レルは迷宮が専門ではないけど、随分と強くなったし、きっと主様の助けになる」


いや、ランテさんにどれだけ貢献するかっつー話だよ。


でもそうか。俺のためにもなるか。


「わかりました。どこまで出来るかは分かりませんが、協力させていただきます」


「ありがとうございます。ケンゴ様なら、そう言っていただけると思ってましたわ!。実は、その迷宮の入り口は、年に一度しか空かないので・・・」


なるほど。授業を切り上げたのはそういう事か。


「その日が迫ってるということなんですね」


「はい」


出発は10日後となった。




一度迷宮に潜ると、帰還がいつになるかは流動的なので、俺が居ない間のマルケンについて手配する。


留守の間の責任者はグランさん。


仕入れや給仕は、バイトを雇い、3日間で促成栽培する。


味自体は、料理長であるグランさんが仕切ってくれるので心配していないが、サービスの質は落ちることを覚悟しておく必要があるだろう。


俺はできるだけ店に顔を出して、しばらく留守にしてしまうことを、馴染みの客に詫びておく。


「いやーん、ケンゴさんお留守になるのー?。じゃー、私もう食べにこなーい!」


「あたいはさ、食べにくるよぉ。だからケンゴっち、無事に帰ってきたら、お酌してくれよ。2人っきりでさぁ」


「いや、帰ってきたらあたしが癒やしてあげるわよ。しっぽりとね。だから安心して行っておいでな」


なんか、色んな声がかかるが、みんな、基本的に応援してくれてるようだった。




冒険の準備は、これまでとまったく違っていた。


日帰り、手弁当という訳にはいかない。


水は供給元が3人居るので問題ないが、食料や、生活道具、武具、薬類などなどの準備。


それに野営装備。


今回は地下迷宮の探索なので、天候変化を心配する必要は無いが、毒蟲などを防ぐため、野営装備は重要とのことだった。


それから連日のミーティング。


少なくとも、ランテさんが途中まで踏破しているところまでは、罠の位置や敵の傾向が分かっているのだから、把握しておく必要がある。


問題の分かっている試験に臨むのに、解答を準備しておかない程、愚かな事はない。


とは言っても、学生時代の俺は、そういう時でも当日になってアセってたりしたものだが。


今回は、自分の命がかかっているし、何よりもランテさんの足手まといになるのだけは避けたかったので、真剣に予習した。




出発が差し迫ったある夜、グランさんに呼び出され、2人で酒を飲んでいた。


「いよいよだな、旦那」


「はい」


「準備は大丈夫か?」


「装備とか、食料とかは問題ないと思います」


「俺が言ってんのは、そういうことじゃなく、気持ちの問題さ。心構えっていうか、死なない覚悟だな」


「死なない覚悟?」


「本当に苦しいときは、死んだ方が楽だと思えたりするんだよ。死ぬより苦しい思いをして生き抜く覚悟があるかっ感じかな」


「・・・」


「いいか、旦那。本当に危ないとき、うまいことが頭に閃くなんてことは無い。どれだけ、予期して対策を練っておくかが勝負だ。・・・例えば、レルとランテが瀕死の時どうやってリカバリーするか。両手両足がもがれた状態からいかにして生還するか。・・・そういうことを、繰り返し繰り返し考えて、準備するんだ」


「そういう事、全然考えていませんでした」


・・・俺は甘いな。


グランさんの言う通りだ。


ランテさんだって、今回の迷宮探索は、自分だけでは無理だと考えて、俺やレルを教育し、攻略に向けて準備していたに違いない。


「・・・でも、今更色々考えても、遅すぎましたね・・・」


グランさんは、黙ったまま酒をチビチビ飲んでいたが、思いついたように話し始めた。


「昔は普通に刀一本で戦ってたんだよ、俺は。・・・それなりに強くて調子に乗ってたんだが、ある時、手強い手配者おたずねものと決闘することになっちまってな。騎士あがりで、身の丈程もある大剣を軽々と扱う使う凄腕だったんだ」


「でも・・・勝ったんでしょう?」


「刀を叩き折られ、死ぬ間際まで行ったけどな」


「どうやって勝ったんですか?」


「ふふ・・・、前の晩に、もしも自分の刀が折られたら、どうしようか・・・と、ふと思ったんだよ。・・・それで、折れた刀で戦う方法を思いついた」


「・・・」


「ひょっとしたら、奴は俺より強かったかも知れん。だがな、まさか折れた刀を両手に持って、近接戦へ転じるとは想定していなかったんだろうな、きっと」


「相手は、想定していなかった・・・」


「つまらん思いつきだったが、そこが生死を分けた気がする」


俺も、ギリギリまで色々と考えてみよう。


死ぬ寸前に後悔しないように。


「ま、ランテもレルの居るんだから、そんなことにはならないと思うけどな!」


急に、元気よく言うと、グランさんは豪快に酒を飲み干した。




その日。


いよいよ、迷宮の入り口に俺たちは立っていた。


大型のリュックを俺とレルが背負い、ランテさんは年季の入った肩掛けバッグを着けている。


出ることはいつでも出来るが、入るには1年に1度しかない、この迷宮。


クトー迷宮。


再奥部に秘宝があるとだけ古文書に記されているのが、発見されたのが50年程前で、何人、何組もの冒険者が探査を行ったが、辿り着いた者は無く、最近では挑戦する者も居なくなっていた。


例外は、ランテさんで、3年連続で挑戦を続けて、知られている中で最奥部まで達していた。


この世界の常識で言えば、単独行動シングルで迷宮探索することはあり得ない話なのだが、ランテさんはそれを続けた。


前の晩、気になったので聞いてみた。


「そもそも、なんで単独行動シングルで迷宮探索なんてしてたんですか?」


「レルも不思議だと思っていた。ひょっとして修練者か?」


冒険の依頼を受ける目的は人それぞれだ。金目的を筆頭に、お宝目的、仇捜し、秘境踏破、記録更新、などなど。


その中で、自己修練を主目的にしているのが修練者というタイプだ。


「いえ、私は最後の間にあるといわれる、秘宝が目的ですわ」


と、ランテさんは、まずレルの疑問に答えから、続けた


単独シングルだったのは・・・、昔組んでたパーティで、内輪もめがおきてしまいましたの」


「そんなの普通。それをうまく乗り越えるのがパーティというもの」


「そうなんですけどね。乗り越えられなくなってしまったのですわよ。・・・つまり、殺し合いになってしまいました」


「・・・」


「・・・」


「パーティはもうこりごり。それで独りでやってきたのですが・・・」


「クトーの迷宮で躓いたという訳ですか」


「はい」


「で、レル達をパーティメンバーにするため、魔法を教えたり、謝礼を先延ばしにしたりしてたか?」


「その通りですわ」




そして今、俺たちの前には、荘厳で巨大な大迷宮が、その偉容を見せていた。


・・・と、実際は、そんな感じでは無かった。


一軒家ほどの大きさの、石組みの立方体。


俺たちの前の部分だけ、2m四方ほど、穴が空いている。


ここは、地下迷宮の入り口なのだ。


俺たちは、まずランテさんが、去年までに踏破済みのルートマップを見ながら、出現する敵は、設置されたトラップ、安全な場所について再確認した。


そして、命令系統の確認。リーダーはランテさんだ。ただし戦闘時はレルがリーダーとなる。


そうして、俺たちは、迷宮の中へ足を踏み入れた。


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