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20.火種


計4人となった契僕は、みんな俺と行動を共にしたがるのだが、これが目立つこと、この上無かった。


特にカルミラ。


彼女が歩くだけで、街は、大騒ぎになるのだ。


「カルミラ様だ!、カルミラ様が降臨されたぞ!」


「マルケンの若旦那と一緒よ!。絵になるわねぇ・・・」


「ご機嫌麗しゅう、カルミラ様」


「ケンゴさん、カルミラ様とお知り合い?。駄目よ、王族なんて堅苦しくて。あら、何でもありませんわ、カルミラ様。おほほほほ・・・」


と、人だかりが出来る。


そりゃあ、王の妹だし、有名人だからね。


なので、俺の契僕になったことは、固く口止めしておいた。


「私はマスターの契僕よ。羞じることなんてしてないわ。お姉様からも口止めされてないし」


と、当人は不満顔だったが、レルやランテさんも説得に加わったことで、どうにか納得させることができた。


何しろ、王族が契僕になることなど、前代未聞らしいし、ある意味、大スキャンダルに近い状況のようだ。




複数の契僕が居ること自体、この世界では、非常識なことらしかった。


そこに気付いたランテさんが、アドバイスをくれた。


「おそらく、これまでの血契により、ケンゴ様は、桁違いの力を身につけていると思いますの。そういうものは、時に、妬みや諍いの種になります。ですから、戦闘訓練の時だけでなく、普段から変動能力の倍率を落とした方が良いですわ」


「なるほどね。確かに、そうかも知れない」


やけに優秀な人間に対しての、そういう負の感情はわかりますよ。


俺も、元の世界では、そういうネガティブなサイドに居たしね。


「変動能力は・・・『回復』、『頑健』、『怪力』、『加速』だな。とりあえず2倍程度にしておくよ。・・・そういえば、能力制御(スキルコントロール)というのを、『能力継承』で獲得したみたいなんだけど・・・」


「それは素晴らしいですわ!!。それならば、能力をキャンセルすることが可能です」


「キャンセル?」


「はい。例えば、私には『魔才』がありますわよね」


「うん。見えるよ」


指輪の機能で、確かに『魔才』が確認できる。


「では、、、これでは?」


「!?」


突然、ランテさんから、『魔才』が消え失せていた。


「これが、能力制御(スキルコントロール)です」


「・・・能力が消えちゃったの?」


「正確には、潜在化させただけで、消え失せた訳ではありません。いつでも戻せますわ」


と、『魔才』が復活した。


「へー、便利なもんだね」


「ただし、潜在化させている間は、本当にその能力が使えなくなるので、注意なさってください」


そこまで聞いていたディアナが、声を上げた。


「でも、何でそこまで、力をセーブするのでしょうか?。普通にしていれば、他の方には、ご主人様の力は、分からないのでは?」


「それは違う、ディアナ」


ランテさんの代わりに、レルが答えた。


「対人を専門とする冒険者や、暗殺者、無法者は、相手の力量を知る術を、色々と持っている。ランテが言ってるのは、そういう相手に対しての警戒。・・・まあ、本当の達人は、潜在化した能力まで察知するらしいけど、出会う機会もまず無いので、心配する程ではない」


「こわいお話ですね」


「世俗のことは良く知らないけど、私も理解したわ。マスターの力が、尋常で無いことは、分かるもの。そうでなくても、アレがあるんだし」


と、カルミラが少し謎めいた事を言ってるが・・・。


とりあえず俺は、能力の幾つかを、潜在化させることとした。




さて、マルケンの2階に、俺と、4人の美女が住んでいることは、街で知れ渡るようになってきて、どうもプライバシー上よろしくない気がしてきた。


メンバーも増えたことで、居室も増やしたいし、そろそろ、きちんとした拠点が必要なのかも知れない。


カルミラの事もあって、俺たちは少し有名になりすぎているのだ。


新パーティを結成し、3日後、それを確信させることが起きてしまった。




食材を探すために、朝市にでかけた時のことだった。


その日は、レルとディアナが、一緒に付いてきていたのだが、混雑の中、ディアナがはぐれてしまったのだ。


レルと違って、大柄でも無いので、『空間認識』でも、すぐに見つけられない。


と、通りの奥から


「や、やめてください!」


と、声が聞こえた。


ディアナのものだ。


すぐに駆けつけてみると、ゴロツキと思われる奴らにからまれている。


まあ、ディアナは、無防備なムチプリ美少女だし、なにより、上品さのオーラが半端無い。


そりゃ、その手の下卑た男共からしたら、涎モノだろう。


「ヒャッハー!、すげえオッパイだぜ」


鬼族らしい巨漢が、ディアナの胸を、揉みしだいている。


他に、半獣族らしいのが3人ほど。


ムカつくが、まあ、丸く収めた方がいいだろう。


こっちは商売やってる身だしね。


「あー、キミキミ、それは俺のモノだから、勝手に触れ」


言葉が終わる前に、その鬼族が凄い勢いで地面に叩きつけられていた。


半ば地面にめり込んだ状態で、痙攣している。


無言のまま、レルが張り倒したのだ。


「ンだ、ゴらぁぁあ!!!」


と、吠える、残りの奴ら。


巨大だし、牙は長いし、元の世界のヤクザなんか、こいつらの迫力に比べたら、チワワだね。


ただし、次の瞬間には、レルの張り手で、全員、壁にめり込んでいた。


「馬鹿め」


「おいおい、レル、やり過ぎなんじゃないか」


「いや、主様。こういう輩は、痛みを知らないと、止めない」


身をすくめていたディアナが、俺に飛びついてきた。


「こ、こわかったです・・・。でも、この方達に、穢される前に、天使族の秘術で自爆しようとしていました」


アブねー。


「だから、レルが止めたのか」


レルは軽くうなずいた。


男前な態度だが、


「そうだったか、偉いぞレル」


と、言って頭を撫でてやると、


「むふふぅ・・・。褒められた」


と、鼻の下を伸ばして喜ぶところは、実に可愛い。


まったりとした雰囲気が流れたが、すぐに背後に重い足音が響き、怪獣のような声が響く。


「どういうことだ、これは」




その日の夜、俺は久々に、テクトールのマルケン本店に戻っていた。


グランさんに会うためだ。


相変わらず、というか、以前以上に繁盛していたので、閉店を待って、グランさんに声をかける。


グランさんは、見慣れない少年を伴っていた。


「グランさん、ひさびさです」


「おおっ、旦那。ひさしぶり。元気でやってるようだなぁ。・・・っと凄いことになってるな、おい」


「はい。もめ事が起きてしまいまして」


「そっちじゃない。旦那のパワーだよ」


『能力制御』していたが、やなりグランさんには、潜在化した能力まで見破られていたようだ。


「まあ、最近、吸血鬼の王族に、天使の皇族と、血契を交わしたって話だし、当然といえば当然だが・・・」


「えーっと、グランさん。その話どこで?」


カルミラとディアナの話は、俺たち5人と、女王様しか知らないはずだが。


「こっちも、特別な情報収集方法をこさえたんだよ。・・・そうそう、紹介し忘れてたんだが、こいつ、新人のダンゾー」


と、横に居た小柄な少年が、ピョコン、と頭を下げた。


くりっとした目をした、小柄な美少年だ。


人間で言うと16才くらいだろうか。


種族は混合種(キメラ)・・・だが、種別名は不明だ。こんな事は初めてだが・・・。


性別は男。


能力は・・・無い。


「おはつっす。おいら、ダンゾーっす。・・・あの、ケンゴ先輩、こちらが・・・」


「アホ、こちらが、お前の大ボス。マルケン社長、ケンゴの旦那だ」


「し、失礼しました!。よろしくお願いします!!」


何度も頭を下げるダンゾー。


かわいいな、この子。


「じゃあ、ちょっと話を聞こうか、旦那。酒につまみも用意してあるよ」


と、グランさんは、酒と干し肉を持ってくると、腰を下ろした。


横に、ダンゾーもちょこんと座る。


「ああ、こいつなら、信用していいぜ。でも、気になるなら、引っ込めさせるが」


「いや、グランさんが信用してるというのなら、問題ありません。俺も信用します」


「ありがとうっす!」




「なるほどな。で、身内・・・というか子分を痛めつけられ、親分が出張ってきた訳か」


「なんか、地回りの若親分という立場らしいけどね」


あの後、地面と壁にめり込んだゴロツキの親玉が現れ、俺たちに凄み・・・それで、喧嘩をすることになってしまった。


喧嘩と言っても、3日後、アルミラ郊外の草原にて、ということなので、決闘という形らしい。


というか、それがこの世界の流儀だという話だ。


もめ事は喧嘩で解決。


「どう思う、ダンゾー?」


ミルクのようにチビチビと酒を飲んでいたダンゾーが、グランさんに答えた。


「旦那様は、ハメられたっすね。おそらくその若親分に、前から目をつけられてたに、違いないっす」


「どこの組織のものか分かるか?」


「アルミラ新興組織の『獣鬼会』っす。首領は、金鬼族のガドラ。若親分っていのは、その息子のギンドっす」


・・・驚いた。


このダンゾーという少年は、なかなかの情報通らしい。


「上玉を見つけては、人身売買しているらしいので、きっと旦那様の契僕さん達が、目当てっす」


「そういうことだな」


グランさんは、酒杯を持つ手を止め、俺を見た。


「で、旦那はどうする気かな」


「対人戦は初めてですが・・・、受けない訳には行かないと思ってます」


「そう。旦那が戦う。・・・ただし、そこが問題なんだ」


しばらくの間、グランさんは思案し、ダンゾーに言葉をかけた。


「なあ、あの噂、すぐにまいてくれ」


「はいっす!」


「行け」


と、次の瞬間、ダンゾーの姿が消えた。


・・・ダンゾーに特別の能力は無いはずなのだが。


種族特性に、瞬間移動でもあるのだろうか。


「ダンゾーの事が気になるようだが・・・。で、旦那」


「はい」


「喧嘩で大事なことは何だと思う?」


この世界においては、実力が全てだろう。


「手加減しないことですか?」


「半分正解だ。正確には、手加減する相手と、手加減しなくていい相手を、見極めることだ」


酒を、ちびりとと飲んで、グランさんは続けた。


「クズと戦士は手加減しなくていい。クズは踏みつぶす以外の価値は無い。戦士に屈辱を与えるのは、仁義にもとる。ただし、あとの奴らは、手加減してやった方がいい。特にこっちが圧倒的に強かったた場合には」


「はい」


俺は、素直にうなずく。


対人戦のプロの言うことを信じることにしたのだ。


「とは言うものの、自分のやりたいようにやるのが喧嘩ってもんだし、旦那の流儀でいけばいいさ。どんな事になったって、まあ、死ぬことは無いだろう」


「そうですか」


俺たちは、しばらく無言で酒を飲んだ。


「ああ、それよりも、旦那の近況を話してくれないか。おおよそは把握してるつもりだが」


そうして、俺はアルミラに行ってからの事を、包み隠さず話した。


「・・・なーるほどなぁ。そうして血契に至った訳か。・・・しかしディアナの話は、裏があるな」


「当人は気にしてないようでしたが・・・、俺も、何かの陰謀に巻き込まれたと思ってます」


「だが、動きようも無いしな。むしろ、ディアナが契僕になってくれたんだし、旦那はツイてたな」


「そうかも知れないですね。・・・ところで、こちらでも色々あったんじゃないですか?。・・・あのダンゾーって子は?」


「昔知り合った部族の、長の子供でな。俺がスカウトした」


「スカウト・・・ですか」


「ああ。ああ見えて、天才だしな」


「・・・へーっ」


何の天才かはわからないが、確かに、目の前から消えたしな。


「・・・なあ、旦那。旦那は強くなった。単に能力がアップしただけじゃなく、地道に修行しているのも良くわかる。・・・だけどな、今、殺し合いをしたら、ダンゾーの方が上だぜ」


・・・そうか。


俺はまた、外見で人を判断してしまった。


グランさんは嘘を言わない。


本当に、俺よりダンゾーの方が強いのだろう。


それを、無意識に見下していたのだ。


「・・・俺は、まだまだですね」


「じきに慣れるさ。少なくとも、自分の力に溺れてない。そこが旦那の強さだ」





俺は、グランさんのアドバイスに従い、次の2日間、ひとりで戦いの準備を進めた。


レル、ランテさん、ディアナ、カルミラには、店の経営だけに集中させる。


そして、その日がおとずれた。


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