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1.召喚と鬼

どんな結末になるかは作者自身も不明。

ただし、夢オチ、アンハッピーエンドだけはしないつもりです。

つたない文章ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

1.召喚と鬼


俺はもてない。


少し異常なほどだ。


おそらく見た目は普通なのだが。


多分、逆にブ男だったり、なんか特徴があれば、特殊な嗜好の女性に好かれたかも知れないが、俺にはそんな特徴は無かった。


普通であるが故に、最低ランクのもてっぷり。


女には縁が無いものとあきらめ、学生時代を過ごしたが、就職しても、それは変わらなかった。


女友達はできても、それ以上には進まない。


要は、「いい友達」だけど、そこまで。


美人なんかにも縁がなかった。


それが当たり前の、俺の人生だったし、あまり傷つくことも無かった。


さて、それはともかくとして、今気付いたら、変な場所に横たわっていた。


石の祭壇・・・みたいなものの上。



たしか、出張で飛行機に乗って、ビールを飲みながら寝てしまい、すごい爆発音と衝撃で目を覚ましたかと思ったら・・・。


それから覚えていない。



とりあえずは、周りを見渡す。


と、3人分のシルエットがこちらに向いていることに気付いた。


皆、薄汚いフードをかぶっている。



右と左には、とてつもなく濃い顔の男。


そして真ん中で、こちらを見ているのは、、、、


びっくりするような美女だった。


大きく目に、細く長い睫毛。


柔らかな曲線で構成された唇。


その唇が開き、声があがった。


「KKUSITAK!!」


聞いたこともない変な発音にも関わらず、その言葉をすぐに


「なんてこと!!」


と言っていることを、なぜか理解している俺。


だが、その不思議な現象なんか問題では無かった。


何しろ、フードを脱いだ3人の顔がそれぞれ、青色、赤色、緑色。


髪の中から出ている角が、それぞれ、1本、3本、1本。


「なんてこった・・・」


とつぶやく自分の声が、


「TSSKEKKU・・・」


となっていることも、このときは気付かなかった。





なんか知れないが、俺は助けられたようだった。


筋肉が強張り、ほとんど動きがとれなくなった俺を、赤い女の怪人が抱きかかえ、その迷宮から連れ出したのだ。


俺は、かなり深い迷宮の奥に隠された祭壇に、「出現」したらしい。




お姫様だっこのような形で抱きかかえられていることから分かるように、赤い女は、びっくりするほど大柄だった。


おそらく身長190センチ以上。


さらに、従者らしい「青」と「緑」は、その1.5倍はありそうな巨体だった。



俺は動けず、そしてしゃべらずにいた。


ひょっとして動く努力をすればなんとかなったかも知れませんが、この怪人達にかなう訳はないし、そもそも、この女はとても大事に俺を抱えているように感じられる。


ときたま、顔が「ぶにゅっ」となる、巨大な胸の感触も楽しみたかったくなかったかと言えば、ウソになるが。。。


迷宮を出て、暗い森のようなところを抜け、巨大な草原の中に岩山が点在するような、おそろしく広い場所に出る。


所々に、鈍重そうな獣、、、のようなヤツが歩いているが、見たこともない種類だ。



ここで俺は確信した。


どっきりとかじゃない。


こんな光景は地球上で見られない。


そう。


俺は別の世界に居た。





「まさか、秘宝がヒトだったとは」


「がっかりというか、、、呪文を間違えたんじゃないか」


「そんな筈はない。あれほど苦労したんだし、そもそも、、、」


「だまりなさい。レルは文句が無い」


「へ、へい。」


「わかりやした。」


岩山にある洞窟住居みたなところで、3人の怪人が話していた。


俺は部屋奥のテーブルのような台の上に座らせて、その様子を見ていた。


どうも、赤い女が一番偉いらしい。


やはり、すごい美人だ。


フードとマントを取ると、適度に筋肉質でありながら、女性らしい起伏に富んだスタイルをしている。


というより、ダイナマイトバディと言っていい。


ただ、深紅の肌、肌より暗い紅色の髪と瞳、頭から伸びる黒い3本の角、そして2m近い巨体は、どう見ても人間ではない。


そのダイナマイト赤女が、


「満足した。ご苦労だった。これは礼だ」


と、重たげな袋を、2体の怪人に渡す。


「これは、ありがとうごぜえます。」


「多すぎですが、いただきやす。」


さらに続けて言った。


「今まで世話になったな。これからはレル一人で動く。お前達ともお別れだ」


「そ、そんな急に・・・」


「姉さん、もう少し一緒に旅しましょうぜ・」


女は、名残惜しげな、巨体の2人を扉の外に送り出すと、しばらくは外の気配に耳を澄ましているようだったが、立ち去ったことを確認したのか、こちらに向き直った。


「さて・・・」


「まて、まってくれ」


「戸惑っているな。それが当然だ」


「俺はどうして、、、いやここはどこなんだ」


「説明してやるから、怯えるな」



色々と説明をされて、少し事情がわかってきた。



・この女の名前は「レル」。この世界で「鬼」と呼ばれる種族。先ほど去った2人も少し違うが「鬼」らしい。


・俺は、彼らの行った「秘宝召喚」という秘儀で、ここに降臨(おおげさだな・・・)した。


・そんなことをしたのは、レルが「血契」のための「契主」を探していたため、他の2人は「都市」で雇った冒険者とのこと。


「なんです、「血契」って。何か俺に危害でも、、、」


「ちがう!!」


鼓膜が破れそうな声でレルが叫んだ。


大きな牙が見える。


「す、すまん。分かってもらいたくて。。。」


「そ、そうですか。では説明を続けて下さい」



かなりの知識が得られてきた。


どうも、俺は、なんかすごい事故に巻き込まれ、その時にこの世界に呼び出されたらしい。



「レルは永い間、レルが望む契主どのを探してきたのだ。そして、召喚の言霊を調べ、星の位置を読み切り、降臨の台座を探し出してお前様を呼び出したのだ」


どのような事情かは分からないが、その探索が楽なもので無かったのは確かなようだ。


なんというか、このレルという鬼女には、単純な程の真摯さが感じとれたからだ。


「ははは、でも、こんな風采の上がらない者が呼び出されちゃって、なんか申し訳なかったですね」


俺は、今までの冴えない人生、冴えない外見を自覚しながら、情けない思いで頭を下げた。


「そんなことない!!」


と、ドアまでビリビリ震えるような声で、レルが叫んだ。


「お前様は、レルが願ったより、両手倍の両手倍よりもいい!。とてもとても綺麗で、宝石みたいだ!。漆黒の瞳に、漆黒の髪。星色の肌に、、、、、」


大声が少しづつ小さくなって、モゴモゴという聞き取りづらいものに変わっていった。


どうも照れているようだった。


どういうことかは分からないが、俺はレルさんから見ると、とてもステキらしい。


こんなことを言われたら、相手が、例え鬼だろうと、嬉しいものは嬉しい。


「そ、そうかな。そんなこと言われたの初めてだ。えへへへ・・・」


俺も思わず、頭を掻いてしまった。


まあ、元の世界に未練は無いし、俺のことを褒めてくれる人?が居るだけでもこっちの世界はマシだ。


「で、これから俺は何をしたらいいんですか?」


「だ、だから、、、レルと血契けっけいしてほしい・・・」


「その血契とかって、何か痛いこととか、あるんでしょうか?」


「レルの血契では、お前様は痛くない!。それに儀式は簡単。」


「血契をすると、どうなるんですか?。俺がペットみないなヒモみたいな感じになるとか?」


「お前様は、自由だし、不利益も無い。むしろ良いことばかり。レルを信じて欲しい」


どうせ、この世界で生きていくなら、レルの助けも必要だろう。


怖いけど、今頼れるのはこの人?だけなんだし、、、、。


「わかりました。ホントはよくわからないけど、その血契、俺はOKです」


「ホント!?。ホントに?」


うん、と俺は頷く。


もう後戻りは出来ない。


後戻りしたくても、帰り道も無いしね。


「じゃあ、すぐしよう!。すぐ!!」


そう言うと、レルさんは俺の前に来ると、両膝をつき、胸の前で手を組み合わせて、眼を閉じる。


何かを祈るようなポーズだ。


「さあ、レルの前に来てくれ」


眼をつむったまま、レルが俺をうながした。


膝立ちとはいえ、レルの顔は俺の胸のあたりの高さにある。


スタイルがいいだけあって、顔は思いのほか小さかった。


「はい、立ちました・・・・。えーっと、どうすればいいですか?」


俺は、レルさんの指示通り、声を上げる。


「人間ケンゴは契主けいしゅとなり、火鬼かきレルと血契する」


「火鬼レルは契僕けいぼくとなり、人間ケンゴと血契する」


「・・・・・・えっと、これからどうすれば」


「ぶて!」


「はい?」


「レルの顔をぶて!」


「へ?」


「早く!、もうレルは我慢できない!!」


「えーっと。。。。では。」


俺は、平手でペチン、と彼女の頬を張った。


「だめ!、もっと強く。ゲンコで!!」


「えーっ!!」


「早く!、やってくれなければ、お前様を殺す!!」


「じゃあ、ごめんなさい!」


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