灰鴉
朝の空気は、冷たかった。
携帯食料を分けてもらい、簡単な朝食をしながら彼らの名前を聞いた。
彼らはゴールド2の冒険者パーティー《灰鴉》
グレーのマントを全員が身につけており、年齢はだいたい30代から40代といった所で、ベテランの風格がある。
・ロランは剣士でパーティーのリーダー。大柄で寡黙。
•ヴァンサンは魔術師で副リーダー的な印象だ。
•マルセルはスカウトで、ニヒルな感じの男だ。
•ピエールはプリーストで、落ち着いた雰囲気と丁寧な言葉遣いだ。
俺はロランの背中に揺られながら、北へ向かっていた。
足はまだ重いが、歩けなくはない。
「もう歩けそうか。」
「……はい。」
答えると、ロランは俺を降ろし、皆が少しだけ歩調を落とした。
やがて、石壁に囲まれた関所が見えてくる。
人が多い。多すぎる。
荷車、背負い袋、泣く子ども。皆、同じ方向を向いて並んでいた。
「難民です。」
ピエールが、静かに言った。
「南の戦線が動きました。祝福持ちが前に出始めています。」
「この国の祝福持ちはな。」
ヴァンサンが続ける。
「最前線か、王宮の守護だ。街まで回す余裕はない。」
関所の内側も、混沌としていた。炊き出し、簡易テント、祈りの列。
創造神教の神殿が、中央に見える。
「……創造神様でも、全部は守れないんだな。」
思わず、口をついた。
ピエールが、こちらを見る。
「……神は万能ではありません。少なくとも、人の営みすべてを救う存在ではないでしょう。」
穏やかな声だった。
それが、余計に重い。
マルセルが、関所を眺めながら言った。
「ガキ。あそこに行けば、安全だ。」
皮肉っぽい口調。だが、声は柔らかい。
「腹は減るが、殺されはしねぇ。少なくとも、外に居るよりはな。」
門番が、ロランたちに気づいた。
「冒険者か?」
「《灰鴉》だ」
ロランが名を告げると、門番の表情が僅かに変わる。
「……ゴールドか。入れ。」
簡単な確認だけで、通された。
門の内側は、外よりも、さらに混沌としていた。
臨時の炊き出し。簡易テント。泣き声と怒号。
「国も、余裕がねぇ」
ヴァンサンが小さく言う。
俺は、無意識に人の顔を探していた。
母を。村の女を。子どもたちを。
——見つからない。
「……行きます。」
その後も辺りを見渡しながら歩いていると、
ロランが短く言った。
「街だ。」




